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【イベントレポート】『Orange Heart Project オレンジの鼓動をつなげよう』特別インタビュー

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エスパルスは、世界最大のトータルヘルスケアカンパニー、ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門であるヤンセンファーマ株式会社とSDGsパートナー契約を締結し、クラブ主催のもと、『Orange Heart Project オレンジの鼓動をつなげよう』(協賛:ヤンセンファーマ株式会社、協力:静岡市)を実施しています。


このプロジェクトは、こころの病と向き合っている方の社会参画に繋がる次の一歩を就労体験やスポーツを通じてサポートし、統合失調症をはじめとするこころの病に対する社会の理解を促進するとともに、誰もが活躍できる社会『ノーマライゼーション』の実現を目指す取り組みです。


5月15日(土)名古屋戦にて、本プロジェクト第1回目のイベントが行われました。今回はプロジェクト実施に至った背景や、懸ける想い、今後目指す未来について、プロジェクトを支える皆さんにお話を伺いました。

インタビュー参加者(記事内 敬称略)

・ヤンセンファーマ株式会社 コミュニケーション&パブリックアフェアーズ部

・セラピューティックエリア コミュニケーションリード 岸和田 直美 様(ヤンセン 岸和田)

・静岡市 観光交流文化局 スポーツ交流課 栗田 智香 様(静岡市 栗田)

・株式会社エスパルス 事業本部 ホームタウン営業部 社会連携担当 小池 拓也(エスパルス 小池)

・株式会社エスパルス 事業本部 教育事業部 ヘッドオブコーチング 今泉 幸広(エスパルス 今泉)

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Orange Heart Projectは、ヤンセンファーマ様が展開するHeart Projectの一環としてスタートしました。ではまず、サポーターの皆さんへのご紹介という意味も込めて、ヤンセンファーマ様の会社紹介をお願いします。

ヤンセン 岸和田

ヤンセンファーマ株式会社はジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門です。世界150か国以上で医学的な課題に向き合い、日本では5つの治療領域(がん、免疫疾患、精神・神経疾患、感染症・ワクチン、肺高血圧症)に注力しています。

精神・神経疾患やこころの病に対しては、どんな取り組みをされているのでしょうか?

ヤンセン 岸和田

医薬品のご提供はもちろんですが、ヤンセンファーマではBeyond Medicine(医薬品を超えて)という考えを大切にしています。医薬品で患者さんが抱える全ての課題が解決できるとは限らないので、病を癒すことを突き詰めるという観点から、患者さんの悩みに共に向き合う姿勢を貫いています。

その1つとしてHeart Project(ハート プロジェクト)という活動があり、このOrange Heart Projectもその活動に含まれます。

Heart Projectは、統合失調症をはじめとするこころの病を抱えた方々に芸術、スポーツ、就労体験を通じて社会参画を後押しするプロジェクトです。2002年より実施している趣味や治療を通じて制作された絵画作品のコンテスト「Heartアートコンテスト」に加え、昨年からはスポーツ教室への参加や就労体験と活動の幅を広げて取り組んでいます。この活動を通じこころの病を抱えた方々の社会参画を後押しし、年齢、性別、障がいの有無に関わらず、皆が一緒に活躍できる社会、ノーマライゼーションの実現を目指しています。

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エスパルスがこのOrange Heart Projectの実施に至った背景を教えてください。

エスパルス 小池

クラブでは2019年にクラブが取り組む7つのSDGs優先目標を設定し、SDGsへの取り組みを強化しています。SDGs項目の中で教育分野にはこれまで多く取り組んできましたが、福祉分野にも今後力をいれていきたいと考えていました。そんな中、今回大変ありがたいお話をいただき、クラブが目指す姿とも一致するこのプロジェクトにスクール部門と連携し実施することを決めました。


-スクール部門では、障がい者サッカー教室などもこれまでに開催しています。-

エスパルス 今泉

近年クラブでもノーマライゼーションへの活動を加速させている最中だったので、お話をいただいたときはとても嬉しかったです。サッカーは健常者だけのものではなく、サッカーを愛するすべての人のものです。健常者も障がい者も一緒に楽しめるインクルーシブフットボールのメニュー作りもちょうど今、推進しているところです。

ヤンセンファーマ様としてサッカークラブとSDGsに取り組む意義はどのようにお考えでしょうか。

ヤンセン 岸和田

先程のBeyond Medicineにもつながりますが、「病を癒す」ことが私たちのミッションです。そのための1つのソリューションは医薬品ですが、パートナーシップはまた別のソリューションとして大きな意味を持ちます。

製薬会社とサッカークラブは一見全く接点がありません。しかし、ノーマライゼーションという考え方で共通する部分はあり、その共通部分でのパートナーシップが新しい活動や価値を生みだします。このような共通接点をもとに、当事者の方と一緒に活動できることは私たちにとっても貴重な機会となっています。


-クラブがSDGsを推進するきっかけの1つに、ホームタウン静岡市のSDGsへの積極的な活動展開があります。-

静岡市 栗田

静岡市は2018年に「SDGs未来都市」「SDGsハブ都市」に選定されました。当初、SDGsの市民認知度は2%と低く、まずは認知度向上のための取り組みを3年間展開してきました。今年の3月に認知度調査を行い、市民認知度が50%を超える見込みとなりました。今後は市民の皆さんが実際に行動してくれるための取り組みを強化していきます。

市内の事業所や団体から募集する静岡市SDGs宣言事業では、現在250件以上の団体等が宣言をしています。今後、様々な団体等と連携し、より一層SDGsを推進していきたいと考えています。

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では、Orange Heart Projectが先日始まりましたが、開催に向けどのような準備を進められたのでしょうか。

ヤンセン 岸和田

このイベントは、参加者の方がスポーツや就労体験を通じ、新しい‘きっかけ’を得ていただくことが1つの目的ですが、もう1つ重要な目的は、統合失調症をはじめとするこころの病を周囲に正しく知ってもらうことにあります。社会の中で未だに精神疾患への偏見は大きいため、今回のパートナーシップで少しでも理解を深め、仲間の輪を広げられる取り組みを考えました。

エスパルス 小池

静岡市の精神保健福祉課さんにもご協力いただき、準備を進めました。まずはこころの病について私自身も勉強し、就労体験を一緒にしていただくパルちゃんクラブのボランティアさんにも今シーズンの初めからイベントについて告知をしました。


-ボランティアさんへの説明はどのように行ったのでしょうか。-

エスパルス 小池

当日、精神保健福祉課さんより資料を配布し、こころの病についてご説明をしていただきました。ボランティアの皆さんはとても真剣に説明を聞いていただき、少なくとも当日参加された40-50名の方は理解を深めていただけたのではないかと感じています。

静岡市 栗田

精神保健福祉課には、精神保健福祉士という専門職の職員がいます。この精神保健福祉士の職員から、現状、こころの病と向き合う方を対象に行うイベントはまだ多くなく、このような機会は大変貴重でありがたいことと聞いています。今後も静岡市の各課と連携し、このプロジェクトを広めていきたいと思っています。

実際にイベントを実施してみた感想をお聞かせください。

エスパルス 今泉

ソーシャルのスポーツ教室は私自身も初めての取り組みでしたが、専門分野の方や病院の先生方にアドバイスをいただきながら準備を進め、無事に行うことができました。少し暑かったですが、スポーツ教室が進むにつれ笑顔が増え、参加者とコーチの親近感が高まり、皆が一体となれたように感じます。

指導面では、休みたいときに休める状況を作ることや、「誰一人取り残さない」といったメッセージを込めたメニュー作りを心掛けました。また、教室後にコーチ陣と話しましたが、本当に学ぶことが多かったと言っていました。普段のスクールだけでなく、このような活動に自発的に意欲を持って取り組んでくれたことも嬉しかったです。


-岸和田さんは一緒に教室に参加されましたね。-

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ヤンセン 岸和田

一言で言うと「楽しかった!」です。快晴の中、まずピッチに入れたことが私を初め、参加者全員にとって貴重な体験となったのではないかと思います。皆さん最初は緊張気味の様子でしたが、段々と積極的になっていきました。控えめな方もいましたが、最後の試合ではシュートが決まった時に満面の笑顔で喜んでいて、その姿は今も忘れられません。こんなに変わるのだというギャップに驚いたとともに、スポーツは体を動かすと同時に、心も動かすものだと体感しました。日常と異なる機会を作れることは、すごく意義があると感じています。


-ゴールをはずしてしまっても、相手チームのメンバーが「大丈夫!もう1回!」と声をかける。最初は不自然だったグータッチも、最後は名前を呼びあって自然に行えるようになる。チームでスポーツを楽しむ非日常体験が、次の一歩につながるのかもしれません。-

静岡市 栗田

最初は私自身、参加者の方に対して気をつかっていた部分もありましたが、初めて会う人とスポーツ教室を行えば誰でも緊張すると思いますし、段々と打ち解け関係を築いていく様子を見て、みんな同じなのだと実感しました。参加者もスタッフも一緒になって、本当に純粋に楽しまれている様子を見て、私たちスタッフにとってもこころの病を理解する良いきっかけになったと思いました。


-このイベントがこころの病を理解するきっかけになったように、参加者の皆さんにとって、自身が変わるきっかけや、エスパルスとつながるきっかけになっていたら嬉しいですね。-

エスパルス 小池

ボランティアの就労体験も、皆さん本当に真面目に取り組んでくれていました。参加者の方から、「今後の仕事の選択の幅が広がったように感じます。」と感想をいただき、このイベントを開催してよかったと心から思いました。

また、サポートいただいたボランティアの皆さんからも「今回とても良い経験になりました。」とコメントが寄せられ、80代のボランティアさんからも「このような経験は80年生きてきて初めてで良かった。」と言っていただき、とても嬉しかったです。


-エスパルスファミリーの輪はクラブの大きな強みです。『Orange Heart Project オレンジの鼓動をつなげよう』というプロジェクト名には、S-PULSEのPULSE(鼓動、躍動)、そしてエスパルスファミリーのオレンジの魂、想いで仲間の輪を広げていきたいといった意味が込められています。-

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ヤンセン 岸和田

最初は控えめだった方も、段々と声を出し積極的になっていく様子が明らかでした。それができた要因の1つは、パルちゃんクラブのボランティアさんたちの存在だと思います。私は初めてボランティアさんたちの活動を見ましたが、皆さんエスパルス愛にあふれ、一体となりチームを支えていることがすごくよく分かりました。参加者が自然と溶け込める雰囲気を作ってくれたのが大きく、本当にエスパルスは地元に根付き、ファンに愛されているクラブなのだと実感しました。

そんなエスパルスがこのプロジェクトを一緒に取り組んでくれていることが心強く、改めてパートナーシップの価値の大きさを感じています。


-試合観戦では、参加者もスタッフも、一体となり応援してくれていました。試合が行われるピッチでサッカー教室を行い、就労体験でお客様をお迎えし、最後に試合観戦で、より一層エスパルスへの想いが高まり、応援に力が入ったのではないでしょうか。疲れていても「もう少し見たい!」と言ってくれていたことが嬉しかったです。-

ヤンセン 岸和田

サッカー観戦では、参加者の方がとても気持ちを込めて応援されていたのが印象的でした。今回のイベントは3部構成で盛り沢山でしたが、苦手だな、疲れたなと思うことがあっても、どれか1つでも心に響いてくれていたら嬉しいです。サッカー教室、就労体験、試合観戦と複数のプログラムがあることはとても良いことだと思いました。

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Jリーグクラブがこのような取り組みを行うことについて、今後の可能性はどのように感じていますか。

エスパルス 今泉

社会から注目される立場であるJクラブが行うことにより、活動に賛同し、サポートいただける仲間が増えていくと思います。私たちがこのような活動を広めていくことが重要です。エスパルスだけでなく、地域、メディアを巻き込み、活動を知ること、体験すること、携わること、伝えること、そして病と向き合う方と社会で一緒に過ごすことがノーマライゼーションにつながっていくのだと感じています。

エスパルス 小池

募集時に「エスパルスのイベントだから参加してみたいと思いました」とコメントをいただいたり、当日もエスパルスを好きな様子が参加者の方から伝わってきました。ヤンセンファーマさんのBeyond Medicineという意味でも、クラブがスポーツを通じて貢献できる部分は大きく、エスパルスがこのような活動を行う意義や責任の大きさを改めて感じました。今回の参加者がまた参加してくれること、そして新しい参加者が増えてくれれば嬉しいですし、この事業に関わる人を継続して増やしていくことが大切だと思っています。


-パルちゃんクラブのボランティアさんも参加者を温かく迎え入れてくれました。今後、クラブでは毎試合のボランティアへの参加受入も検討しています。-

エスパルス  小池

短時間での参加や業務内容も検討していきたいと思っています。パルちゃんクラブのメンバーは、「いつでも来てください。」といった温かい姿勢でいてくださっているので、クラブの受入体制を整えることを進めていきます。

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静岡市 栗田

障がい者のスポーツ大会などはこれまでも行われてきましたが、こころの病と向き合う方へのイベントは実例がまだ多くないと聞いており、今回実施できたことは静岡市にとっても大きなことだと感じています。特に、市民の皆さんに親しまれているエスパルスが実施することの影響力は大きく、行政が関わることで地域に広げていくことができます。またヤンセンファーマさんのパートナーシップで、さらに大きな力で静岡市を超えた地域にも広げていくことができると期待しています。

今回は18歳以上の方を対象に募集しましたが、18歳という年齢は生活が変わるタイミングでもあるので、これから社会に出ようとする方々にとってエスパルスが社会に出る準備やきっかけの1つになればいいなと思います。


-Orange Heart Projectをきっかけに仲間ができて、新たな活動につなげていってもらえたら嬉しいですね。-

エスパルス 今泉

今年5月に7つの障がい者サッカー団体が揃い、先日聴覚障害や脳性麻痺を抱える方への指導にも参加してきました。私たちの施設(エスパルスドリームフィールド)でハートフルカップというソーシャルフットボールの大会も毎年実施していただいていますし、これからもっとクラブとしてこのような分野に関わっていきたいと考えています。

ヤンセン 岸和田

こころの病は目に見えず、偏見や誤解が根強く残っている傾向があるため、このような活動を外に発信していく必要があります。

また、活動機会の創出はもちろん、周囲の理解を促していくことの両輪に力を入れていきたいです。この両輪があってこそのノーマライゼーション実現だと思います。そして長く無理なく続けること、活動の裾野を広げていくことが大切だと感じます。


-周囲の理解という部分は、私たち運営側も今回学ぶことが大きかったと思います。参加者、ボランティアさん、スタッフと、このOrange Heart Projectの中でたくさんの『次の一歩』が生まれたように感じます。スポーツが当たり前にある環境の中で忘れかけていたスポーツの力を改めて感じ、そしてパートナーシップにより新たなスポーツの可能性に気づかされました。-

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エスパルス 今泉

スポーツの力はとても大きく、人の心を動かすことができます。それは筋書きがなく、みんなが一緒に夢を見て戦うことができるからです。こころの病に対して偏見があるのは、やはり社会がそういう空気を作っているのだと思います。少しでもエスパルスがスポーツの力で社会を変えることに貢献ができればと考えています。

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~スポーツをする・みる・ささえる~

これからもスポーツを通じ皆さんとオレンジの鼓動をつなげ、パートナーシップでノーマライゼーション社会の実現へ、たくさんの『次の一歩』を広めていきたいと私たちは考えています。


インタビューにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。


エスパルスでは今後もJリーグ社会連携活動シャレン!をはじめとしたパートナーシップで地域の課題解決にチャレンジし、SDGsを推進してまいります。

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