6年間に渡りチームを率いた長谷川健太監督の退任後、新生エスパルスの指揮官に招へいされたのはアフシン ゴトビ氏。かつて、アメリカ、韓国、イランなどの代表チームで監督、コーチを務めた経歴を持つ、国際色豊かな指導者だ。多くの主力選手が去ったエスパルスにおいて、新指揮官の下、次なるレギュラーの座を射止めようと熾烈な争いがキャンプから繰り広げられた。
迎えたシーズン開幕戦、敵地・柏で0-3の惨敗。暗雲漂う立ち上がりとなったが、その6日後、3月11日に発生した東日本大震災により、リーグ戦は1カ月半におよぶ中断を余儀なくされた。リーグ中断中もゴトビ監督は日本に残り、選手とともにトレーニングを続けた。そして、リーグ戦再開後の初戦となったホームでの福岡戦、先発起用された大前元紀が決勝点をあげ、ゴトビ監督にエスパルスでの初勝利をプレゼント。大前自身、このゴールを皮きりに、2011シーズンを通じて大きな飛躍を遂げていく。
前半戦は、勢いに乗る大前元紀とともに、この年から加入したベテラン高原直泰がチームを引っ張った。5・6月は6試合で5得点をたたき出すなど、全盛期を彷彿させる切れ味鋭いゴールに、サポーターは酔いしれた。チームも連敗を喫することなくシーズン前半を折り返した。だが、後半戦のスタートは最悪だった。C大阪、広島、新潟とのアウェイ3連戦は、いずれも0-4での魔の3連敗を喫す。この連敗を機に、神がかり的なファインセーブで前半戦のチームを救ってきたGK碓井健平に代わり、山本海人がゴールマウスに立った。すると続く大宮戦、小野、高原の初のアベック弾も飛び出し、3-0で快勝。チームは再び上昇気流に乗っていく。
さらに8月、オランダからカルフィン ヨン ア ピン、そしてスウェーデンからフレドリック ユングベリが立て続けに加入。ワールドクラスのプレーにスタンドのサポーターのみならず、ピッチの選手たちも心躍るようなプレーを見せた。極めつけは第28節・名古屋戦。小野伸二とユングベリが初めて共演すると、ドリブルとパスワークで中盤を操るプレーは、まさに世界基準だった。首位争いをしていた名古屋を2-0で破る快勝。これぞ、ゴトビサッカーの真骨頂と言えた。
シーズン終盤の3戦は、いずれも上位に立つ柏、鹿島、G大阪に敗れ、エスパルスの2011シーズンは10位に終わった。3月の東日本大震災、そして9月には、守護神としてエスパルスの一時代を支えた眞田雅則GKコーチの急逝と、悲しいニュースがエスパルスを襲った。そんな中でもチームは確実に成長し、ゴトビ戦術は浸透し始めた。目標としていたACL出場権獲得はならなかったものの、2012シーズンに向けて、飛躍への一筋の光を見出した一年だった。