エスパルスとして初めて迎えるJ2。クラブは主力選手の引き止めに成功し、監督は3度のJ1昇格に導いた実績を持つ小林伸二監督を招聘。昨季の悔しさを晴らし、1年でのJ1復帰を合言葉に、新たなシーズンを迎える態勢が整った。
開幕の愛媛戦では想定外の守備的布陣に苦しめられてドロースタート。以降、アウェイでは着実に勝ち星を重ねるも、ホームは得点すら奪えない状況が続いた。ようやくそれを打ち破ったのは、第10節金沢戦。大前の2ゴール、鄭大世の2ゴールで快勝。ホームでの勝ちロコは、昨季J1 1st第14節川崎F戦の勝利から実に335日もの歳月を要した。
ホームという“鬼門”から解消され、恐れるものがなくなったと思った矢先、第13節東京V戦であえなく敗れてしまうと、翌節の徳島も力なく敗れ、今季初の連敗を喫してしまう。チームはどん底の状態にあった。
この状況を見かねたチーム最年長の西部洋平は非公開練習後、選手だけの青空ミーティングを主催し、チームの現状を把握させ、一体感を求めた。効果はすぐに現れた。第15節群馬戦は前半からゴールラッシュが続き、終わってみればJ2最多タイにならぶ8得点を挙げる記録的な勝利を見せた。
攻撃陣はもはやJ2では敵なし。その中心にいた大前元紀はJ2得点ランキングを独走していた。そんな中でアクシデントが起こる。第17節町田戦で相手選手と激突し、左第5・6・7・8肋骨骨折および肺挫傷という大怪我を負う。チームに暗雲が立ち込めた。
ここで32歳のベテランが気を吐いた。鄭大世は、金子翔太、石毛秀樹などと2トップを組んで得点を量産。間もなく得点ランキングでも大前を抜いてトップに躍り出る大活躍となった。
流れに乗ったチームは順調に成績を伸ばしていくが、首位札幌戦では2点ビハインドを追いつくも、最後に力尽き惜敗。それでも夏の補強で獲得した植草裕樹を守護神に据えると守備が安定、負けを引きずることなく成績も落ち着いてきた。そして、ついに2位松本へ勝ち点1差へと迫り、直接対決となった。しかし、荒れた芝、強風でエスパルスの良さを出すことができずに力負けしてしまう。
札幌、松本と上位2チームに敗れたことで自力での自動昇格はなくなり、残り9試合は勝利が絶対条件となってしまった。第34節C大阪戦は、1点ビハインドで迎えた終了間際に意地を見せた。交代で入った金子翔太のスルーパスに、同じく交代出場の北川航也が上手く抜け出して同点ゴール。さらに、後半アディショナルタイムには金子とのワンツーから白崎凌兵が豪快なミドルシュートを叩き込んで逆転勝利。のちにJ2最優秀ゴールにも選ばれたこのゴールから、奇跡が始まった。
順調に連勝街道をひた走っていたチームは、第39節で怪我から復帰した大前と、鄭大世の5試合連続“アベックゴール”のリーグ記録を達成するなど勢いが止まることはなかった。そして、ついに第41節岡山戦に勝利したことで念願の自動昇格圏の2位に浮上。最終節に勝てば自力で自動昇格を手にすることができるようになった。
迎えた最終節、鳴門大塚スポーツパークに駆けつけた約4000人のエスパルスサポーターがスタジアムの雰囲気を作り出すなか、犬飼智也のエスパルス初ゴールで先制。一時は同点に追いつかれたが、鄭大世のクロスに金子が押し込んで突き放した。あとはこのリードを守るだけ。最後の最後まで全員で耐え抜いた末、試合終了の笛。終盤の9連勝で昇格圏の2位をキープし、公約どおり1年でJ1復帰となった。