飛躍へ第一歩を踏み出した年になった。
1月1日付けで久米一正氏がGMに就任。エスパルスには11年ぶりの復帰となり、昨季最終節残留争いに苦しんだチームからの再建を託されることになった。チームは昨季まで広島を率いていたヤン ヨンソン氏が新監督に、新コーチとしてFC東京などの監督として手腕を発揮していた篠田善之氏が就任した。選手では兵働昭弘が8年ぶりに復帰し、また犬飼智也が鹿島への完全移籍してしまうも、天津泰達足球倶楽部からファン ソッコという新たな守備の柱の獲得に成功する。さらに前年まで仙台でプレーしていたクリスラン、豪州ウエスタンシドニーから楠神順平が加入。新卒選手として流通経済大から新井栄聡、興国高校から西村恭史、神村学園高校から髙橋大悟が加入し、ユースから平墳迅、滝裕太、伊藤研太が昇格した。
鹿児島キャンプでは思うような結果を残せず周囲に不安が広がったが、迎えた開幕戦。それは不安を払拭するどころか、サポーターに今季への大きな期待を与える出来だった。相手は常勝軍団の鹿島。プレシーズンとは打って変わって動きの良さを見せるクリスランがいきなり魅せる。ゴール前の混戦から強引にシュートに持ち込むと、これはポストに直撃。しかしここから攻撃陣に自信を与えることになった。クリスランのPK失敗などもあったが、前半のシュートが鹿島の1本に対して、エスパルスは7本と圧倒。後半、盛り返してきた鹿島にチャンスを作られるが無失点に抑えるなど、前半、後半を通して攻守全員の頑張りが見られた試合だった。
開幕から4戦負けなし、順位も3位まで上げるというスタートダッシュを決めることになった。ところが、何が起こるかわからないのが今季のJリーグだった。それはエスパルスも例外ではなく、そこから3連敗を含む5戦勝ちなし、その後2連勝2連敗。成績は安定しなかった。
そんな夏、ようやくラストピースが揃った。15年に広島で21得点を挙げたドウグラスが加入。デビュー戦でゴールを決めるなど、早速助っ人としての力を存分に発揮する。中でも10月7日の第29節に行われたダービーでは圧巻の出来だった。まだ開始数十秒、ドウグラスが相手選手からボールを奪うと、ラストパス。これを北川航也が決めて先制する。さらに、38分、61分にはドウグラス自らがゴールを決めて勝利をほぼ手中に収める活躍を見せた。その後もチームは得点を量産して、終わってみれば5‐1の大勝。昨季3連敗の屈辱を晴らした。ドウグラスの加入から、より輝きが増した北川は、この試合の後に初のフル代表に選出されるなど、一気に日本を代表する選手へと駆け上がった。
第32節名古屋戦に勝利して早々と残留を確定させると、翌節はホーム最終戦。ここで悲しい知らせが届く。これまでの躍進に尽力されていた久米GMが試合前日の11月23日に急逝された。選手たちは哀悼の意を込めて喪章を巻き試合に臨んだ。試合は一進一退の攻防。1点のビハインドを負った中で迎えたアディショナルタイム。石毛秀樹のコーナーキックにGKの六反勇治が頭で合わせるという執念のゴールで、土壇場で追いついた。試合後は兵働の引退セレモニーが行われ、久米GMへのお別れの言葉、そして家族、サポーター、選手、スタッフに対しての感謝などを述べ、最後は勝ちロコで締めた。
最終節の長崎戦では勝利を収めることができなかったが、この試合で金子翔太がゴールを決めて、ドウグラス、北川航也とともに、二桁得点に到達。エスパルスでふた桁得点者が3人生まれるのは20年ぶりの快挙だった。チームとしても最終的に川崎Fにあと1点に迫る56得点で2位タイの得点力でシーズンを締めくくった。
15年シーズン17位でJ2に降格し、そこから1年でJ1に復帰、17年は残留、そして今季は一桁順位となる8位でフィニッシュ。着実に歩を進めて、来季へつないだ。