明治安田J1百年構想リーグ開幕まであと1日。開幕特集として、今回はクラブ史上最年少キャプテンに就任した宇野禅斗選手のロングインタビューをお届けします。
取材日:2月3日/取材・文=平柳麻衣
威厳と信頼感。そして……
――クラブ史上最年少キャプテンに就任しました。今の心境を聞かせてください。
「チームを鼓舞することなどは、もともと声を出すプレースタイルなので意識せずとも問題ないと思っています。プラスアルファ自分の中でどういうキャプテンシーを発揮しながらプレーできるかはこれからに懸かっていると思います。一番悩むのはやっぱり試合前の円陣の言葉ですね。パッと言えてしまうタイプの選手にとっては何てことないことなんだろうけど、僕はきっと前日から悩んでメモするんだろうなって。なぜなら、試合前の言葉ってすごく大事にしたいと思ってしまう人間だから。その週の練習であった出来事などを思い返したりしながら、自分なりの言葉で伝えていきたいですね」
――宇野選手はまさにキャプテンという肩書きがなくてもリーダーシップを発揮できるタイプかと思いますが、サッカーというスポーツにキャプテンが必要な理由は何だと思いますか。
「基本的にサッカーに限らずプロとしてスポーツをやっている選手に、『誰かに引っ張っていってほしい』なんて思いながらやっている人っていないとは思います。でも、サッカーはチームスポーツであって、試合中に何かチームとして不具合が起こることって絶対にあるんですよ。そういう時、こうしようってチームの方向性を定めるのがキャプテンの役割の大きな一つだと思っていて、チームの指針となってみんなのパワーを前向きにまとめる人は必要だと思います」
――では、チームの先頭に立つ人が備えているべきものは何だと思いますか。
「威厳。信頼感。……あとは何でしょう……ちょっとした隙とか? とにかく真面目で針のように尖っている人よりは、イジられたり、可愛げがあったり、親しみやすさを持っていたほうがいい気がします。というのも、今まで自分が出会ってきた人たちを見ても、厳しさや怖さより、フレンドリーで何かあった時に話しかけやすい雰囲気を持っていることって大事だなと思っていて。真面目で尊敬できるけど、どこか可愛らしい一面もある、みたいな人ってすごく魅力的だなと。『アイツを助けたい』と周りが思うような人間性のほうが、みんなついてきてくれるんじゃないかなとも思います」
――宇野選手はキャプテンの重責を一人で抱え込みすぎてしまうかもしれない、と気遣う声も先輩たちから聞こえてきます。まだキャプテンが発表されて数日ですが、意識していることは?
「それこそキックオフカンファレンスも緊張しましたけど、やっぱり清水エスパルスの代表として行っているので、恥ずかしい姿を見せたくないという思いもありましたし、選手一人を見ただけで『強いな』と思わせられるような風格を出せるよう意識はしました。例えば昨季の鹿島アントラーズで言えば植田直通くんであったり、やっぱり強いチームを代表する選手ってそうですよね。もしかしたら僕は抱え込むタイプかもしれないし、責任を負いたがるような性格かもしれないですけど、そればかりは勝てない時期になってみないと分からないですし、現状、今は負ける時のことなんて考えてないので。勝ち続けることしか考えてないし、僕は今すごく燃えています。そうなった時のことは、そうなった時に考えます」
――キャプテン就任発表の日、「今までの自分は試合結果や自分のパフォーマンスによってナーバスになりやすいところがあったので、今後は気をつけなければならない」といった発言をしていました。ただ、それだけ勝負にこだわるところも宇野選手の魅力の一つかと思います。
「そういう一面をなくすのではなく、人前では見せないということですね。なぜそう思ったかと言うと、他のチームの話になってしまいますが、印象的な動画をたまたま見たんです。昨季、横浜FMの喜田(拓也)選手がミスをして負けてしまった試合があって、その時の立ち居振る舞いがすごいなと。素直にみんなに謝って、でも前を向いて話している姿とか、みんなを奮い立たせようとしている言葉とか。自分がミスをした後でもキャプテンとしてそういう振る舞いができるって本当にすごいなと思ったし、今の僕にできるかなと考えた時、今すぐには難しいなと思ったんですけど、だからこそチャレンジする価値があるなと思いました。どんな時でもチームの前では前向きな言葉を発信し続ける選手でありたいですし、今回キャプテンという役職を与えていただいたことは、サッカーに限らず僕の人生においてプラスに働いていくと思います。とくに人間力の部分はまだまだ成長の余地しかないと思っているので、感謝したいですね」
――吉田監督からキャプテンを打診された時、一切の迷いもなかったのですか。
「はい。僕はサッカーをする時も日頃生活をしている時も、どんな時も一人の“宇野禅斗”として正直に生きているつもりなので、その姿を見てキャプテンを任せたいと思っていただけたのなら嬉しいですし、それに応えたいと思いました。もちろん僕はそこまで自分に自信がある人ではないので、『僕でいいんですか』という気持ちはありつつも、任されたらやるという気持ちだけでしたね」
――「そこまで自分に自信がある人ではない」という言葉の真意を、もう少し聞かせていただけますか。
「最近感じているのは、『僕は大した人間ではない』と100%で思っている自分と、『僕ならできる』と100%で思っている自分の両面が存在するということです。自分のことを大層な人間だと思っていないから、周りの人の話をたくさん聞きたいし、年下からも学びたいし、誰からの言葉もすごくありがたいと思って受け取ることができます。でも、ずっと謙虚でいることを意識し続けているというよりは、自然体で過ごしている中で、ふとした時に『今の僕、謙虚でいられているかな?』って時々確認するぐらいですけどね。謙虚さを失った自分になってしまうのが嫌なので。本当に努力している人が、それを努力と自覚せず取り組んでいるのと同じような感覚です」
――自身がキャプテンに就いた今季のチームをどのような集団にしていきたいですか。
「『強かったね』とは言われたいですよね。やっぱり結果を出した年にしたいです。あともう一つあるとすれば、『まとまっていた』と思われたい。チームとして方向性がバラバラにならずシーズンをとおして戦っていたよね、というのが伝わったとしたらすごく嬉しいなと思います」
今季タカさんに出会えたことも巡り合わせ
――吉田監督のサッカーにはどんな印象を抱いていますか。
「タカさんは『こうすれば守れるよね』というアバウトな話ではなく、『この形にしてこうすることで失点するリスクが減るよね』といった確率論の話をよくします。サッカーはイレギュラーが起きるスポーツなので“絶対”はないですし、表現として『確率』という言葉を用いた伝え方をされるとスッと入って来やすく、勝ちが明確にイメージしやすいと思います。とくに僕の場合、青森山田での経験が生きていて、例えばCKで各選手が入る位置が決まっていて、一番大外の選手は絶対にファーポストのところに入り続ける。いくらボールが来なかったとしても、100回中100回そこに入る続けることで、いつかこぼれてきたボールに触れたら、それは確率論の話になって、点を取るってそういうことだよねってなるんですよ。守備に関しても相手のシュートを100本中100本ブロックできるかどうか。1本でも背中を向けてしまって失点したらダメで、それをやり続けられるかどうかは選手の質や性格も含めてのところになってくると思いますが、やり続けることで勝ちに近づくものだと思います」
――今このタイミングで吉田監督のサッカーに出会えたことについてはどう感じていますか。
「僕は本当に出会いに恵まれているなと思います。1年半前にエスパルスに呼んでいただいて、秋葉(忠宏)さんに出会えたことで、自分の可能性をどんどん広げられたし、すごく成長できた1年半だったと思っています。だからこそサッカーに対する喜びをもう一度思い出すことができましたし、すごく良いメンタル状況でサッカーに取り組むことができました。一方で、今季タカさんに出会えたことも巡り合わせだと思っていて、今また勝負強さという部分が自分自身に試されている時だと思っています。チームメイトとの競争に勝って試合に出続けられるかという部分もそうですし、試合に出た上で自分の力量を試すシーズンになると思います。タカさんのサッカーは本当に理にかなっていて、勝ちにこだわったスタイルであり、それを僕たち選手が体現していくことでチームとして強くなっていくと思います。そういったクラブの変革のタイミングでキャプテンを任せてもらったこともまた巡り合わせですし、いろいろな意味で僕は恵まれているなと感じますね」
――ポジション的にはインサイドハーフとしての起用も増えることが予想されます。
「僕はインサイドハーフをやったことがないのでその難しさはありますけど、オーソドックスな2枚ではない分、今までとまた違うサッカーが自分の中に取り入れられるというワクワク感はすごくありますし、楽しみです。タカさんのサッカーはポジションごとにやることが決まっているので、そういう意味では今はあまり迷いなくプレーできていますし、より点を取るというところは求められていると思うので、数字で結果を出したいという気持ちは昨季以上に強くあります。ただ、自分の結果もほしいですけど、チームが勝つことがベストですし、それにおいてもインサイドハーフはすごく重要なポジションだと思っているので、いろいろなところに顔を出して、組み立てに参加したり、周りを助けたりして、最後に自分のところに転がってくればいいなと考えています」
感謝の気持ちを返したいからこそ6番を選んだ
――このハーフシーズンを戦い終えた時、どんな選手になっていたいですか。
「答えになっていないかもしれないですけど、“やりきった”と思いたいです。シーズンを戦い抜いたなと自信を持って終わっていたいという気持ちが一番ありますね。正直、昨シーズンも自分の中ではやりきれないところがあって、『×』まではつけたくないけど、『◯』はつけられないよねというシーズンだったので。代表に呼ばれるまでのパフォーマンスは、自分としてもプロになって以降の中では結構頑張ったシーズンではあったと思うのでそこは褒めてあげたかったですけど、その反面、シーズン後半は全然出られなくなってしまったので、まだまだ甘いというか、悔しさが残りました。同じ轍は踏みたくないですし、一戦一戦チームが出来上がっていくことに加えて、個人としても成長していく姿を表現できるハーフシーズンにしたい。もう一段階、二段階成長できればいいかなと思います」
――加入3シーズン目になり、すっかりオレンジに染まってきましたね。
「染まれていますかね? 20歳そこらで全然試合に出られていなかった選手をまさかエスパルスが呼んでくれるとは思っていなかったですし、サッカーに対してすごく悩んでいた僕に、やっぱりサッカーって楽しいなと改めて思わせてくれたのがエスパルスであり、感謝しています。応援もスタジアムの雰囲気も良くて、選手にとってすごくやり甲斐がありますし、それに対する感謝の気持ちを返したいからこそ、今シーズンは6番を選んで戦う覚悟を持ちました。そういった想いを自分のプレーで伝えていけたらと思います。そのためには勝利でしか恩は返せないと思っているので、そこを第一に考えています。あとはやっぱりサッカーはゴールが入って喜ぶ瞬間が一番ですよね。点が入った時のスタジアムの盛り上がりほど気持ちいいというか、嬉しいものはないので、その瞬間をいかに増やせるか。サポーターの皆さんと一緒に喜べる回数を増やせたらいいですね」
――サポーターの皆さんへ。
「今シーズンもアウェイ開幕となりますが、名古屋の地で僕たちがスタートダッシュを切るためには、ファン・サポーターの皆さんの応援なくしてはできないことだと思っています。また皆さんと勝って喜びを分かち合うために僕たちも最高の準備をして開幕を迎えて、皆さんにしっかり勝ちを届けられるように頑張るので、今シーズンもともに熱く戦ってください。開幕戦、一緒に戦いましょう。よろしくお願いします」
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新生エスパルスの若きキャプテンは、サッカーに対して純粋で、どんな努力も惜しまず、真っ直ぐに愛を注ぐことができる。その純真さが伝わってくるからこそ、ピッチに立つ彼を支えたいと思う人は数多くいるだろう。
変革のシーズンの象徴として、宇野禅斗は自分らしく、勝負強さに徹しながらチームを牽引していく。
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