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【STORY】 #小塚和季 「戦える表現者。努力を惜しまぬ“天才”」

日々の競争、陰での努力、悩み、葛藤……選手一人ひとりの物語を追ったコンテンツ【STORY】。今回は小塚和季選手編です。

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2月19日配信/取材・文=平柳麻衣


1本の大きなサイドチェンジのボールで、アイスタのスタンドからドッと歓声が上がる――。小塚和季がピッチにいる意義が、その1プレーに凝縮されていた。


2月14日に行われたリーグ第2節京都戦。今季初スタメンを飾った小塚は、攻守に躍動した。46分の先制点のシーンでは、相手のオウンゴールを誘発するクロスを供給。相手選手の後ろに走り込んでいた千葉寛汰は、「和季くんらしい、めっちゃ“いやらしい”ボールだった」と賛辞を送った。小塚自身も「ノーバウンドだったら相手にヘディングでクリアされていたと思うし、強すぎず、少し緩めのボールをスペースに落とすよう意識した」とイメージどおりのプレーだったことを明かした。


64分にはFKのチャンスで住吉ジェラニレショーンの頭にピタリと合う精度の高いキックを披露。惜しくもオフサイド判定となりノーゴールとなったが、「実質、1ゴール1アシスト」(千葉)と周囲も認めるハイパフォーマンスでアイスタに詰めかけた観客を魅了した。


しかし、約3週間半前の時点では想像できない光景だった。


まずは理解して、忠実にやり続けようと思った

鹿児島キャンプ中の1月20日に行われた今季最初のトレーニングマッチ、北九州戦。40分×3本の形式で実施されたこの試合で、小塚は2本目にアンカーとして出場した。周囲となかなか連携がかみ合わず、思うようなパフォーマンスを発揮できないまま時間が過ぎていった。


試合後、小塚は「どうしたら試合に絡めるようになるのだろう……」と考えた。当時はまだ、主力組でハツラツとプレーする自分自身をイメージすることができなかったのだ。


だが、吉田孝行監督の評価は違った。


「キャンプの時にはまずアンカーをやってもらったんですけど、すごく賢くて、自分が求めていることを確実に実行してくれる選手だなという印象を受けました。そこから『中盤の3つのポジションは全部準備をしておいて』と伝えて、トレーニングの中でも何度か違うポジションをやってもらうことがありましたが、どこで出てもすごく良いし、たとえ短い出場時間だったとしても彼の賢さが出る。なので僕の中では『和季は中盤3つともできる』という感覚を持っています」(吉田監督)


吉田監督曰く、小塚のプレーの忠実度は、「振り返りの映像をみんなに見せる時に、良いプレーとしてお手本になる」レベルだという。小塚が指揮官の理想を体現できるのは、技術はもちろんのこと、彼自身のサッカーに対する向き合い方にある。


「なかなかスタメン組のほうに入れない日々が続いていた中で、まずはタカさんがやりたいサッカーを理解して、忠実にやり続けようと思いました。例えば自分のところで時間を使いすぎるよりは、どんどん前につけて、自分も前を追い越していくというのがチームのスタイルだと思うし、守備に関しては戻るところだったり、セカンドボールを拾うところなど求められているプレーがあります。そういったものをどうしたら体現できるのか。


また、自分としてはまずどこのポジションで使われるか分からなかったし、実際インサイドハーフをやり始めたのは開幕の1週間前からでした。ただ、どこで出てもやってやるぞという気持ちは強く持っていましたし、そういった取り組みの結果として『ここでも使ってみようかな』と思ってもらえたのかなと思います。それにチーム全体としても、自分のポジション以外にも、このポジションの選手はこういう役割をするというのが常にみんなに共有されているので、そんなにやりづらさは感じなかったですね」


貴士くんに勝ちきれなかった。ただそれだけ

真摯にサッカーと向き合い続ける姿勢は、今に始まったことではない。昨シーズンからエスパルスに加入して以降、小塚は悔しい時期があっても感情を内に秘め、真っ直ぐにサッカーに取り組み続けてきた。


「昨季は自分では調子が良いと感じていても試合に絡めないこともありましたし、満足できるシーズンではなかったですけど、そのなかでも日々くさらずに取り組むことはできていたと思うし、いざ出場機会をもらった時には全力でやろうという気持ちはありました。上手くいかないことがあった時、自分に矢印を向けるとよく言いますけど本当にそのとおりで、じゃあ何で僕は出られなかったのかと言ったら、監督のファーストチョイスになっていなかったから。選ばれない自分が悪いとずっと思っていたので、感情をどこかにぶつけたりとか、そういったことは考えていなかったです。もちろん、試合に出て見返してやろうという気持ちはずっと強く持っていましたけどね。


昨季に関して言えば、同じポジションに(乾)貴士くんがいて、貴士くんに勝ちきれなかった。ただそれだけ。もちろん貴士くんの良さと僕の良さが違うというのは分かっていますし、自分は自分なりの良いプレーをしようと心がけていましたけど、実際どっちが得点に絡んでいるか。それが監督の評価にもつながっていたのだと思います」


高卒から地元の新潟でプロキャリアをスタートさせ、JFLやJ3、韓国Kリーグの1部、2部など、様々な地で積み重ねてきた多くの経験が、今の“小塚和季”を形作っている。なかでも川崎F時代に経験したJ1優勝争いは、小塚のキャリアにおける大きなターニングポイントだ。「試合に出られる時も、出られない時も経験してきたし、優勝チームにいたことも自分の中ではすごく大きいです」。だから、矢印を向けるべきは常に自分自身と決めている。


吉田監督はそんな小塚の日々の取り組みを「本当に謙虚な姿勢を持っているし、日々向上心を持っているし、若い選手が見習うべき姿勢を毎回のトレーニングで見せてくれている」と高く評価している。


“上手い”選手が“戦う”こと

そして今季初先発のチャンスが巡ってきた京都戦。小塚は「練習通り、平常心で」自分のプレーに集中した。吉田監督は「京都が相手ということでアップダウンの激しいゲームになるだろうし、セカンドボールの回収も大事だけど、ゲームを落ち着かせる時間も必要ということで、それらを総合して考えて」と小塚の起用理由を明かした。そのうえで、「戦術面を理解しながら攻守に役割を果たしてくれたのはもちろん、粘り強く球際で戦ったり、ボールを回収したり、おそらく彼自身が今まで課題だと言われてきた部分でも十分にやってくれていた」と評価した。


その点に関しては小塚自身も自覚している。


「球際や強度の部分はフロンターレの頃からずっと言われてきたところで、当時のフロンターレでは田中碧や旗手怜央とか、“上手い”選手たちが“戦っている”のを目の前で見てきたし、それが当たり前の基準で、できなければ試合で使われない。タカさんも球際やセカンドボール、奪い切ることや奪ってすぐ前につけることはすごく大事だとよく言っているし、それがインサイドハーフで出る肝だと思ったので、そこの部分でやってやろうという気持ちは確かに強かったかもしれないです」


京都戦では高い評価を得たが、当然1試合のパフォーマンスだけで満足することはない。“天才”とも称される小塚の本来の強みであるテクニックやひらめき、アイデアの面は、吉田監督のサッカーにもアクセントをもたらす存在になるだろう。


「京都戦に関しては求められていることをやっただけなので、相手をかわしたりとか、逆を突くとか、本来の自分の持ち味であるプレーはまだあまり出せていません。今後は自分自身がよりゴールに迫っていくところも見せたいし、そのためにはあの時間帯に交代しているようではダメで、もっと強度を上げていかないといけない。より高い強度で90分間出続けるために、そしてケガもしないように、身体づくりをもっと頑張ろうと思います」


身体のケアのため小塚が毎日のように遅い時間までクラブハウスに残るのも、昨季からの三保の見慣れた日常の一部になっている。


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小塚が勝利を求めるのは自分自身のため、そして離れて暮らす家族のため。幼い息子たちは「勝ちロコがしたい」と言ってアイスタへ応援に来てくれる。一人の選手としてチームのために戦う姿を見せるのが、父親として魅せる背中でもある。


“上手い”選手たちが“戦う”集団こそ、より高い順位からの景色を見ることができる。その実体験を持つ小塚が、吉田サッカーの体現者としてフィールドに歓喜の絵を描く。


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