日々のトレーニングや試合での取材をとおして、見えてきた選手やチームの“今”の姿、エピソードなどをお届けするコンテンツです。
2月22日/取材・文=平柳麻衣
日が沈みかけたアイスタのベンチ前に、“あの男”がユニフォームを握りしめながら現れた。吉田豊もまた、オレンジのユニフォームを持っている。お互いにユニフォーム交換を果たすと、そのままベンチに腰掛け、少しの間、言葉を交わしあった。
21日に行われたJ1第3節神戸戦は、昨季までエスパルスに在籍していた乾貴士のアイスタ凱旋マッチ。乾にとって神戸での公式戦初出場が今試合になるという、運命めいたものを感じさせるシチュエーション。選手バス到着時から試合後の場内挨拶時まで、エスパルスサポーターから乾に対して温かい拍手や声掛けが何度も沸き起こり、彼がエスパルスに残した功績の大きさがうかがえた。
実は、吉田が乾にユニフォーム交換をお願いしたのは“2回目”だったという。
「最初は貴士くんがエスパルスを退団すると聞いた時。僕からお願いして、1着目をもらいました。その時に、『今後対戦する時が来たらまたお願いします』と言ってあったんですけど、今回の試合が近くなった時にもまた『もしアイスタに来るなら、ぜひ交換しましょう』と連絡して。貴士くんは『おぉ、ええよ』と言ってくれて、だから清水時代のユニフォームと神戸でのユニフォーム、2着をもらったんです」
どうしても乾のユニフォームが欲しかったのは、吉田自身だけでなく、子どもたちからのお願いでもあった。
「もちろん俺も貴士くんが大好きだし、息子たちもやっぱり貴士くんのプレーや存在が好きなので。それを貴士くんに伝えたらスパイクもくれて、全部家に飾ってありますよ」
神戸に退場者が出た影響により乾は前半22分で無念の途中交代となった。ピッチで相まみえた時間は短かったものの、それでも吉田は感じるものがあったという。
「同じチームだった時からずっと変わらないですけど、やっぱり僕にとっては『追いかける存在』だなと改めて感じましたね。プレーの質やサッカーに対する姿勢はもちろん、観ている人を魅了するようなプレーはずっと変わらない。それに今回、対戦相手として見たら、相手が嫌がるプレーをこんなに織り交ぜてくるんだというのも感じることができて、やっぱりすごいな、さすがだなと思いました」
吉田と乾は1学年差。エスパルスではそれぞれのベテラン像でチームを牽引してきた。
「すごく仲良くしてもらったから、俺にとっては兄貴みたいな存在だなと思う時もあるけど、でもやっぱり遠い存在で、一生追いつけないんだろうなと思わされるんですよね。よく『永遠のサッカー小僧』なんて言われたりもしていますけど、常に上手くなりたいという気持ちが人一倍強い人だから、今もまだあれだけ質の高いプレーができるんだろうなと思います。相手チームになってみて、より凄みを感じるようになりましたね」
今シーズン、神戸とはまだアウェイでの対戦が残っている。
「もちろん楽しみだし、その時はまた違う“乾貴士”を魅せてくれると俺は思っている。俺はプレーでは貴士くんの真似はできないけれど、次にまた会う時までに、自分も成長した姿を見せたいなと思います」
先日36歳になったばかりの吉田。大好きで兄のように慕う先輩から得た新たな刺激をモチベーションに、チーム最年長として邁進していく。
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