チームを支えるスタッフ陣のロングインタビュー。今回は、今季より神戸から加入した藤原寿徳GKコーチ編。数々のクラブでGKコーチとして名だたる選手たちの指導にあたってきた藤原コーチの信念とは。
取材・文=平柳麻衣
『協調』『尊重』『協力』という3つの柱
――今季からエスパルスに加入し、GK陣に対してどんな印象を抱きましたか。
「試合に出ている梅田(透吾)選手や沖(悠哉)選手はもともと対戦チームの選手として見たこともありましたけど、実際に練習を見てみて、一人ひとりにいろいろな特徴があって良いなと思いました。もちろん他の2人もそうで、石川(慧)選手はベテランとしていろいろな経験を積んできた落ち着きがありますし、GKグループとチーム全体を支えてくれています。佐々木(智太郎)選手はまだ若く、これからどんどん経験を積みながら技術的にも体力的にも伸ばしている最中で、より良くなっていくという期待感があります」
――石川選手が今季から加入したことで、GK陣の平均年齢が上がりました。グループ内の空気感などはいかがですか。
「お互いが協力して成長し合い、良い仲間でありながら、かつ競争をするというのが良い競争だと僕は考えています。なので、ただのライバルではなく普段はまずお互いに協力し、尊重し合うこと。その考えがベースにないとチームに良い影響を与えないですし、それがトッププロの競争の仕方だと思っています。その点においては慧がやはり年長者としてそういう空気感を出したり、練習に取り組む姿勢を背中で見せてくれたりして、非常に良い影響を与えてくれていますし、他のみんなもその考え方を持ちながら取り組んでくれていると思います」
――「競争」の前に「協力」という考え方が優先されるのですね。
「鹿児島キャンプの時に基本的な考え方として『協調』『尊重』『協力』という3つの柱を理解してもらってやっていきたいとGKミーティングの中で伝えました。なぜかと言うと、チームスポーツにもかかわらず、チーム云々関係なしに個人の競争だと言うのは全くレベルの低いことだと僕は考えています。やはりチームとして試合に勝つ、シーズンをとおして結果を出すなど同じ目標に向かっているわけで、その中で各個人が良いところを出し合っていけば自然と良い競争というものは生まれてきます。エスパルスにはもともとそういう空気感があったので、僕から新しく何かを伝えたと言うよりは、もう一度再確認したという感じでした」
――藤原コーチ自身がその考え方に出会ったのはいつ頃ですか。
「鹿島にいたときですね。チームとして『献身』『誠実』『尊重』を3本柱にしたフィロソフィーがしっかりしていて、“ジーコスピリット”と言われたりもします。そこが出発点で、それ以降いろいろなチームに行くごとに常に再確認していました。実際、強いチームであってもそれがまだ足りないところもありましたし、個人が力を発揮するだけでは優勝には届かない。GKはチームの最後尾でありながら、攻撃の最初の一人にもなり得るポジションです。その緊張感の中で責任と誇りを持ってプレーすること。そのためにはメンタル的なタフさや情熱が必要になります。一つのミスが失点に直結しかけることもあるポジションであることを、難しい仕事だと思いながらやるのか、その緊張感に誇りを持つのかでも全然違うと思います。やはり凛としてゴール前に立ってプレーするのがプロの仕事だと思いますし、選手たちがそこに到達できるようにと思いながら指導しています」
――育てたいGKの理想像は明確にありますか。
「一番は『チームを勝たせられる選手』を育てたいです。僕がこの仕事を始めた頃は、日本代表でも『GKは弱いよね』と言われているような時代で、僕自身もそう思っていましたし、実際、ヨーロッパのクラブに行けるGKもなかなかいませんでした。そんな中で本当に世界で通用するGKを育てたいと思ったのが、この仕事を始めたきっかけです。最初の頃は例えば守備範囲が広くて、攻撃時にはビルドアップにも参加でき、長短のキックで攻撃参加もできるような選手像を理想として持っていたんですけど、長く指導者を続けていく中で、自分の理想だけと言うよりは、その選手が持っている個を大きくしていくことが一番良い形であり、本当の意味で『チームを勝たせられる選手』に近づいていくと思うようになりました」
――今まで指導にあたってきた中で、とくにアプローチが上手くいったと印象に残っている選手はいますか。
「それは僕だけでなくいろいろな要因があって変化が生まれるものだと思っていますけど、例えば京都にいた守田達弥(現町田)は若い頃に指導して、地道に成長して今もまだ現役でやっています。あとは野澤大志ブランドン(現ロイヤル・アントワープFC/ベルギー)はFC東京で2年間一緒にやりました。高いレベルで揉まれる中で本人の人間性もありますがグッと伸びて、J1でも十分に行けるというレベルまで成長し、そこから代表に入ったり、今ではヨーロッパでプレーしています。J3に育成型期限付き移籍していた頃からわずか4年ぐらいでヨーロッパまで行くというのは、もともとフィジカル面のキャパがあったことに加え、自分を律することができる彼の人間性あってのこと。選手によって様々な成長の仕方がありますし、たくさんの選手と一緒にやってこられたことは僕としても恵まれているなと感じています」
――GKコーチの仕事として、分析にも関わる部分は多いですか。
「そうですね。次の対戦相手にはこういうFWがいるからとか・・・
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