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【インタビュー】 #宇野禅斗 「清水エスパルスに来て良かった…皆の想いを背負い、目標のブンデスリーガへ」

ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・メンヒェングラートバッハ(以下:ボルシアMG)への完全移籍が発表された宇野禅斗選手。「ブンデスリーガでデュエル王になる」という目標への一歩を踏み出した。今季はクラブ史上最年少キャプテンを務めるなど、濃い2年間を過ごしたエスパルスでの思い出を振り返りながら、夢への決意を新たにした。

6月18日配信/取材・文=平柳麻衣


僕は常にチャレンジできる環境を選んできた

――ヨーロッパへの挑戦を具体的な目標として思い描くようになったのはいつ頃からですか。

「ヨーロッパというわけではないですけど、小さい頃からワールドカップを観て育ってきましたし、ブラジルのストリートサッカーのビデオを親に観せてもらっていたので、漠然と『海外でプレーしたい』とは小学生ぐらいの頃から考えていたと思います。それをもっと現実的に考えるようになったのは、遠藤航さんがブンデスリーガでデュエル王を獲った時。『自分もブンデスでやりたい』という目標がはっきりと決まった瞬間でした。あとは年代別代表に入り始めて、プロ1年目の時にモーリスレベロトーナメントで海外のチームと対戦した時に衝撃を受けたのも大きかったです」


――ブンデスリーガへの憧れを抱いていた中で今回、ボルシアMGからオファーが届いた時はどんな心境でしたか。

「昨年のオフもチャンピオンシップやベルギーリーグのクラブから話をいただいていたり、ブンデスのクラブからも気になっているという話をチラホラ聞いたりはしていたんですけど、ハーフシーズンはもうエスパルスで戦うと決めていましたし、タイミング的にもちょっと違うかなと感じていました。そうした中で今回、本当に初めてちゃんとしたオファーがブンデスから来たので、話をもらった時はすごく嬉しかったです」


――このハーフシーズンは、海外に向けてのアピールもモチベーションの一つになっていたのでしょうか。

「オファーをもらうつもりでという思考ではないですけど、僕が掲げている目標から逆算すると必然的に今年の夏に海外に出られなければ厳しくなると自覚していたので、そこに対する思いは持っていました。自分には自分の夢がある中で、海外に行くには若い選手のほうが価値が高いというのも感じていましたし、僕もいち早くとは思っていた中でのオファーだったので、本当に感謝しています」


――ボルシアMGではどんなプレーが求められるかなど、具体的にイメージしていますか。

「いや、正直ボルシアでというイメージは湧いていないですけど、ブンデスでプレーすることはイメージしながら生活してきましたし、ブンデスの試合もずっと観てきて、どのチームでプレーするにしても自分の色を出すだけだなと。ヨーロッパでサッカーをするにあたっては、まずはチームのためにというより最初は自分の個を確立して、チームに必要な選手だと思わせられるかというところが勝負になると思っています」


――それだけブンデスリーガに魅力を感じているのか、それとも自分の長所を考えた時にブンデスリーガが最適だと考えているのか、どちらの感覚のほうが近いですか。

「自分の特徴が合っているから選んだというわけではないですね。それだと特徴の合わないチーム、クラブ、国ではプレーできないみたいになってしまって嫌なので。でも正直、例えば僕がスペインリーグに行ったら何ができるかとか、そういった自己分析ができていないわけではないです。僕は遠藤航さんのようにデュエル王を獲りたい。まずはその目標だけです」


――海外へ渡るにあたって、今の心境としてはワクワクしていますか。

「正直、サッカー以外の部分では不安のほうが全然強いです(苦笑)。海外での生活って人から聞く情報でしか分からない部分もあるじゃないですか。だからこそ早く向こうで試合とか、練習とか、とにかくサッカーがしたいなという気持ちですね。サッカーに対しては本当に楽しみでしかないです。身体能力の高さで言ったら、向こうに行ったら僕はドべだと思うので、そういった環境でサッカーができるのが今はすごく楽しみ。今までのサッカー人生を振り返っても僕は常にチャレンジできる環境を選んできましたし、今回も僕自身がワクワクしてチャレンジできる場所を選んだつもりです」


――先ほど話に挙がった「僕が掲げている目標」の最終地点は何ですか。

「ワールドカップ優勝です。小さい頃の夢はワールドカップに出ることでしたけど、今の代表メンバーたちはワールドカップ優勝を目指して戦っていますし、僕もそれを口に出し続けてプレーしたい。それだけの覚悟を持った選手たちがあの舞台に立てると思っています」


――現在行われている北中米ワールドカップのメンバーに入れなかったことは、自身のキャリアにおいてどう捉えていますか。

「本音を言えば悔しいですし、本当はここで入りたかった。いつだったか忘れましたけど小さい頃、七夕の短冊に『2026年のワールドカップに出る』って書いたのも覚えているので、それを叶えられなかったのは悔しいです。叶えられる可能性は全選手に転がっていて、僕と同年代の選手も入っているわけなので、そこは本当にすごく悔しい思いしかないです」


――タイミング的にも、今回の移籍は4年後に向けたスタートということにもなりますか。

「そうですね。今、目の前にあるワールドカップに出られない以上、僕の中ではもう次のワールドカップに出るための準備が始まっています。今の日本代表は、とくにボランチに関しては選手層がすごく厚いですし、僕より下の代からも良い選手がどんどん出てきています。その中でずっとアベレージ高く良いパフォーマンスを出し続けている選手だったり、ケガで離脱しない選手、常に成長し続けている選手が最終的に残り続けていると思うので、僕も成長し続けられるように頑張りたいです」


サッカーを楽しむことを思い出させてくれたのがエスパルス

――2024年の夏にエスパルスに加入してからの2年間を振り返っていきたいと思います。加入して早速、サポーターズサンクスデーで団長を務め、サポーターの皆さんの前で挨拶もしましたね。

「あれはもう本当に大変でしたよ(笑)。ああいうの苦手なタイプだし、僕は世間的に見てそんな有名な選手じゃないので、当たり前だけど誰も僕のことを知らないだろうなと思いながら(団長を)引き受けて、本当に緊張したんですから(笑)。でも、“初めまして”がああいう場所ってなかなかないですよね。終わってみれば楽しかったし、その後にはスタッド・ランスとの親善試合もあったりして、Jリーグでプレーする前に僕のことを知ってもらう機会があったのは良かったなと思います」


――在籍した2年間の中でとくに印象深い試合はありますか。

「加入後初ゴールを決めたベガルタ仙台戦は、負けてしまいましたけど、点を取った時にみんながめっちゃ笑顔で寄ってきてくれた光景を鮮明に覚えていて、頭をめっちゃ叩いてくれたりして、すごく嬉しかったです。群馬戦のゴールもよく覚えていて、その時もみんな駆け寄ってきてくれたし、僕はあまり点を取るタイプではないので、自分のゴールをみんなと分かち合う経験をあまりしてこなかったというのもあって、すごく嬉しくて記憶に残っています。あとは悔しいほうの思い出で言えば、国立での名古屋戦は忘れないですね。プロとしてやっている以上、いつもと違うポジションだからというのは言い訳にならないと自分は思いたい人間なので、自分で『出れます』と言って監督に託されてピッチに立った以上、それなりの仕事をしなければいけなかった。あの試合は僕のせいで負けたと思っているし、このチームでプレーした試合の中で一番悔しかった試合です。ただ、サポーターからの愛情を一番感じた試合でもあって、あの日の試合後の光景も忘れられないです」


――その経験をのちに生かせたと感じられた時はありましたか。

「生かせたというよりは、やっぱり僕は何でもかんでもできる人間じゃないんだってもう一度気づけたので、自分ができることとできないことを自分の中でちゃんと認識して、自分ができることでチームを助けることが第一だなと思えた試合になりました」


――エスパルスに来たからこそ成長したと感じる部分はありますか。

「これはもうずっと僕は思っているんですけど、サッカーを楽しむことを思い出させてくれたのがエスパルス。そこは本当に感謝しています。僕が加入した2024年から昨季も含めて、温かいクラブで、温かい人たちの中でプレーすることを感じることができました。あとはチャレンジすること。秋葉(忠宏)さんの時も、タカさん(吉田孝行監督)に代わってからも、自分の可能性を信じてくれる人たちが周りにいて、それを思う存分出していいよと言ってくれたことが僕の成長にすごく繋がったと思っているし、のびのびサッカーをやらせてもらえました。細かいことを言えばもっといろいろありますけど、攻守両面において僕のやりたいことを前面に表現させてもらえたことにはすごく感謝しています」


――時には、責任感が強いがゆえに背負い込みすぎているように見えることもありました。

「考えすぎてしまった時もありましたけど、それも含めてエスパルスが“考えたくなるチーム”だったというところもあります。それに、考えすぎている時でもプレーに関しては変わらずのびのびやらせてもらえていたので、そこから自分なりに立ち直って何度もチャレンジできたという実感があるので、そこはすごく大きかったです」


――結果が出なかった時、ミックスゾーンを通る際に悔しさを抑えきれていなかった様子もよく印象に残っています。

「そうでしたね(苦笑)。僕はあまり感情を隠せるタイプではないし、チームが勝ったとしても僕自身のプレーが良くなければ笑えなかったので。そういう時にも気を使ってくれたり、上手く立ち回ってくれる先輩たちがたくさんいて、本当に感謝しています」


――そういう意味では今季キャプテンを務めたことで精神面の成長にも繋がったと感じますか。

「自分の中でキャプテンシーみたいなものを持ちながらプレーすることは以前から癖づいていたとは思うんですけど、実際にちゃんとキャプテンをやるのは初めてだったので、ピッチ内外の全てにおいての行動を考えながらハーフシーズンをずっと戦ってきました。そういう責任を感じながら生活するのも楽しかったですし、それこそケガなどでプレーできない時の重みも変わってきて、キャプテンは常にピッチにいなければいけないと改めて強く感じられたし、だからこそピッチに立ち続けるためにはどうしなければいけないのかというのもより深く考えるきっかけになりました」


――在籍期間で、自分に大きな影響を与えてくれた出会いはありましたか。

「綺麗事ではなく本当にみんなにいろいろな影響を与えてもらったと思っています。その中でもと言うと、ゴンちゃん(権田修一)、(乾)貴士くん、(矢島)慎也くん、(松崎)快くん、(小塚)和季くん、(高橋)祐治くん、(北川)航也くんはとくに学ぶことの多かった選手たちだなと思います。ゴンちゃんと貴士くんに関してはもう分かりきっているとおり、日本代表で長年プレーしてきた選手たちと一緒のチームでプレーできる経験ってなかなかできないことですし、もちろん年齢や2人の性格もあると思いますけど、発言の意識の高さがすごくて、自分はこう思っているんだということをどんどん口に出していくところ。やっぱりそういう選手が海外で長くプレーできたり、代表にも残っていけるんだなというのを肌で感じられたのは大きかったです。


慎也くんと快くんは、サッカー観を勉強させてもらったというか、視点が違う選手たちだったので、2人のプレーを観ているだけでも面白かったし、サッカーの会話をするのもめちゃくちゃ楽しくて。まぁ僕が勝手に楽しんでただけかもしれないですけど(笑)、2人とも考え方は似てるんだけどアプローチの仕方は全然違うというところもまた面白くて、すごく楽しかったです。


和季くんは初っ端のプレーを観た時の衝撃がすごくて、川崎Fでやっていたのもあるし、韓国という強度の高いところでやっていたのもあると思いますけど、一個一個のパススピードや付ける足へのこだわり、意識の高さ、プレーの幅の広さはすごく勉強になったし、何より練習に対する向き合い方から『こういう人間ってカッコいいな』と思わせてくれた先輩です。


祐治くんは人間性のところで一番尊敬できる先輩の一人で、僕が去年ケガで離脱してしまった期間は本当に支えてもらいましたし、本当の意味で全選手と良い関係が築けていて、良いコミュニケーションが取れる先輩だなって。ちゃんとしたところはちゃんと言うし、でも普段は優しくて、ちょっとした隙も見せてくれたり。一緒にセンターバックを組んだ時もすごく優しくて、それこそ国立での名古屋戦ではめっちゃ慰めてもらったのも忘れられないです。


航也くんは僕が加入した時からキャプテンをやっていたけど、正直、キャプテンじゃない航也くんも見てみたいってずっと思っていたんですよ。FWってゴールを決めることだけを考えていてもいいぐらいのポジションだと思うから。でも、その中でもキャプテンをやっていて、航也くんはあまり他人のことを気にして喋るタイプの人ではないけど、要所要所ではやっぱりコミュニケーションを取ってくれるし、誰よりも熱いというか、締めなきゃいけない時を分かっている人だなって。


時には練習中から熱くなりすぎるところもあったりするけど、チームにはそういう人が必要だと思うし、航也くんはこのチームで唯一その熱さを持っている人で、クラブへの愛も、このクラブを強くするんだという覚悟も航也くんの姿から教えてもらったと思っています。僕はクラブユースで育っていないからそういうところが今まではあまり分かっていなかったけど、クラブへの愛ってこういうことなんだっていうのを一番感じさせてくれた先輩です。それで今年、キャプテンじゃなくなった航也くんを見て、やっぱりすごく能力が高いし、航也くん自身がどう思っているかは分からないですけど、のびのびやる航也くんってすごく魅力があって、後ろから観ていてめっちゃ楽しかったですね」


エスパルスへの愛情は僕の中にある

――エスパルスで過ごした2年間で、宇野選手が誇れる部分はありますか。

「周りの人がどう感じているかは分からないですけど、大事にしているというか僕の中での当たり前のこととして取り組んできたのは、ピッチの上ではどんな状況でも全力でやること。やりすぎなぐらい全力でやってきた自負は一応あるので、そこはやりきったかなと思います。例えば周りを鼓舞する声掛けとか、僕が加入した当初はそこがこのチームには足りていないなと感じていて、やっぱり練習の雰囲気には活気が絶対に必要だと思ったので、毎日の練習でやりきれたと思います」


――2024年の夏、エスパルスに来て良かったと思いますか。

「いやもう当たり前じゃないですか。何者でもなかった僕にエスパルスがオファーを出してくれて、日本代表にまで連れて行ってもらって、ここで成長させてもらいましたし、全ての出会いに感謝したいですね」


――宇野選手の個人チャントの歌詞にも入っているように、みんなが宇野選手の背中に夢を見ながら過ごしてきました。

「加入して2年しかいない僕のチャントを作ってくれたことだけでなく、あの歌詞も僕はすごく嬉しくて、歌詞に込められた想いというのはサポーター一人ひとり違うかもしれないけど、みんながいろいろな感情を込めて歌ってくれていると受け取っていました。だからこそ、ここからもっと“清水エスパルスの宇野禅斗”がどんどん成長して活躍していく姿を見てもらいたいし、それが自分にできる恩返しになると思っています。サッカーでなら返せると思うので、頑張りたいです」


――ホーム最終戦はケガでプレーはできなかったですが、キャプテンとして挨拶をしました。どんな気持ちでスタンドを見ていたのですか。

「すごく複雑でしたよ(苦笑)。移籍の話自体はほぼ決まっていたんですけど、メディカルチェックが終わらないと確定ではないし……でもアイスタの芝を踏める最後のタイミングだったので、最後だという雰囲気を滲み出さないようにしながら味わっていました」


――深々とお辞儀をする姿から、伝わるものはあったと思います。

「言葉ではまだ何も言えないタイミングだったけど、感謝は伝えたかったので。最後にあの景色を目に焼き付けることができて良かったです」


――宇野選手にとってアイスタはどんな場所ですか。

「どんな場所……難しいな。カッコつけて言うのであれば、エスパルスの魂が詰まった場所、ですかね。あそこに来ている人たちってもうみんな家族みたいな感じじゃないですか。家族ではあるけど、でも試合が始まると僕たちは戦士になって、サポーターのみんなもそうだと思っていました。オレンジのユニフォームを着ていようが着ていまいが、エスパルスを応援してくれている人たちみんなが一緒に戦ってくれていて……なんか上手くまとまらないですけど……熱くて、あったかくて、楽しくて……僕にとってはそんな場所です」


――エスパルスでやり残したことはありますか。

「2年間ですけどこれだけエスパルスでプレーして、エスパルスへの愛情というものも僕の中にはもうありますし、Jクラブの中で一番好きなクラブですし、やっぱりもっと勝ちたかったですね。J1でタイトルも獲りたかったのでそれは本当に悔しいですけど、これからの自分のプレーでしっかりと見せて、また帰ってきてほしいと思ってもらえるようなプレーヤーになりたいです」


――最後に、エスパルスサポーターの皆さんへ。

「言いたいことはたくさんあるんですけど、やっぱりまずは僕を清水エスパルスの一員として受け入れてくれて、本当に感謝しています。まだまだ未熟だった僕をここまで成長させてくれたのは間違いなくこのクラブですし、僕はこのクラブが本当に大好きです。このハーフシーズンでキャプテンとして、リーグトップというものをお見せできなかったのは悔しいですけど、このままみんながこのクラブのために努力し続けることができれば、必ずタイトルを獲れるクラブになると思っているので、心の底から応援していますし、僕自身、“清水エスパルスの宇野禅斗”としてまだまだ成長し続けて、夢を叶えていけるような存在になれるように頑張っていくので、少しでも心のどこかに留めておいてもらえれば嬉しいですし、応援していただけると嬉しいです。ありがとうございました。行ってきます!」


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2024年の夏、先輩たちに法被を着せられ、照れくさそうにサポーターズサンクスデーに参加していた青年は、わずか2年で腕章が似合う逞しいキャプテンへと成長を遂げた。「最後にもう一度、アイスタで点を取りたい」という願いはケガもあって叶わなかったが、その言葉だけでも、彼のエスパルス愛は十分だ。


J2優勝・J1昇格、日本代表初選出をはじめ「濃すぎた2年間」の中では、喜びも、悔しさも、たくさんの感情をエスパルスファミリーの皆と一緒に味わってきた。誰よりも負けず嫌いで、時に人懐っこい笑顔を見せ、皆の想いも背負い、心で戦うことができる選手。そんな宇野が夢に向かってひたむきに努力する姿に、多くの人が夢を重ねて見た。


世界への扉を叩いた“清水エスパルスの宇野禅斗”の新たな挑戦が今、始まる。


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