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【クローズアッププレーヤー】 #本多勇喜 「勝利への渇望。“勝つ集団”になるために」

2023、2024シーズンに吉田孝行監督体制下の神戸でJ1連覇を経験し、2026シーズンより同監督とともにエスパルスへ加入した本多勇喜選手。加入後初めてのロングインタビューで、内に秘めた勝利への渇望をじっくりと語った。


取材・構成=平柳麻衣


まだまだ突き詰めていかないといけない

――26/27シーズンは秋春制に移行して初めてのシーズンとなります。始動からここまでの感触はいかがでしょうか。

「冬に始動するよりは暖かい気候のほうが身体も動くし、より早くコンディションを上げやすくなりそうな良いイメージはあります。ただ、ここからどうしても暑すぎて動けなくなることも出てくるだろうし、夏の始動自体が初めてのことなので、とにかくケガをせず身体に気を使いながらコンディションを上げていければいいなと思います」


――2026シーズンからエスパルスに加入し、百年構想リーグを振り返って。

「タカさん(吉田孝行監督)がエスパルスに来て初めてのシーズンということで、選手たちもみんなタカさんのサッカーを理解しようと意識しながら取り組んでいて、ある程度の大枠の部分は浸透してきたかなと思います。ただ、細かい部分は自分自身も含めてまだまだチームとして突き詰めていかないといけないと感じましたし、何より結果を見ても勝てていないので、チーム全員でもっとやらなきゃいけないとすごく実感しました」


――逆に言えば、細かい部分を突き詰めていく必要はあるにしても、チームとして進んでいる方向性には手応えも得られましたか。

「そうですね。戦術の部分に関しては、タカさんは神戸の頃から信頼している監督ですし、タイトルを獲れる監督だと思っています。ただ、それをピッチで表現するのは選手なので、僕たちがもっとしっかり表現しなければいけない。例えば選手一人ひとりが当たり前のことを当たり前にやるとか、イージーミスをしないとか。僕が今年エスパルスに来て最初に感じたのが、なんかちょっとボールを雑に扱う時があるというか、後ろから見ていて、一か八かのパスが目立つなと思ったんです。それは個人の意識の問題ですけど、もっと小さなミスも許さないような雰囲気にしていく必要があると思いましたし、タイトルを獲るためには本当に“勝つ集団”になっていかなければいけないと思います」


――本多選手自身は神戸時代から吉田監督の下でプレーしている中で、エスパルスに来てからの半年間で何かアップデートできた部分はありますか。

「移籍してきて、チームも環境も変わって、自分一人の力じゃ何もできないんだなというのは本当に痛感しました。自分の能力やパフォーマンスを向上させていくことはもちろんですけど、大事なのはやっぱりチームがどれだけ同じ方向を向いて、勝ちにこだわってやっていけるか。勝つためだけに集中してやっていきたいです。そのために試合の中ではみんなの力を借りながら、それ以外の部分では、自分は後ろのポジションだからどちらかというと後ろで支える側なので、前の選手にどんどんチームを引っ張っていってもらえたらと思います」


闘志溢れる感じがカッコよくて

――プロになるまでのキャリアの中で、一つターニングポイントを挙げるとしたら何ですか。

「うーん……交通事故かな。小学3年生の時に事故に遭って、4カ月ぐらい身体を動かせない時期があったんです。もうすでにサッカーは習い始めていたんですけど、できなくなったことで、より『サッカーがしたい』という気持ちが強くなった。そういう意味でターニングポイントの一つかなと思います」


――ポジションはずっとディフェンダーですか。

「いや、中学生ぐらいまではウイングをやったりしていました。それからサイドバックをやったり、センターバックをやったりという感じです」


――憧れた選手はいましたか。

「それこそ小さい頃に参考にしていたのは、当時イタリア代表とかセリエAを結構観ていたので、イタリアの選手ばかりでしたね。(ジェンナーロ)ガットゥーゾとか、(ファビオ)カンナバーロとか、(パオロ)マルディーニとか。技術云々より闘志溢れる感じとか、球際で戦うところがカッコよくて、たくさん点を取る選手よりもそっちのほうが魅力的に見えた覚えがあります」


――ディフェンダーをやっている今、やりがいを感じるのはどんな時ですか。

「若い頃まではそれこそ1対1とか競り合いの時、自分のところに来いって思っていたけど、今はもうやりがいなんて感じないですよ。展開にもよりますけど耐える時間が長くなれば苦しいし、僕だってできれば前目のポジションをやりたい。そっちのほうが陽のあたるところじゃないですか。ディフェンダーにとって一番楽しいのは、90分終わって勝った時。勝った時は喜びも安堵感も両方感じますし、サッカーをやってて良かったなと思います。勝つことが自分にとっては何よりのモチベーションだし、それ以外はないですね」


――今までのキャリアの中で「出会えて良かった人」を挙げるとすれば?

「うーん……難しいですね。選手で言えば、トゥーさん(田中マルクス闘莉王)は名古屋と京都時代に隣でプレーさせてもらうことが多くて、もう死ぬほど怒られました。大人になってから怒られることってなかなかないですし、自分にとっては良い財産になっていると思います。


指導者で言えば、やっぱりタカさんですかね。タイトルを獲れたことも良かったですし、出会って最初の頃のミーティングで、タカさんが言ってることって何となく自分の考えと似てるなって思ったんですよ。だから言われたことがスッと自分の中にインプットされたイメージがあって。タカさんに求められることは本当にシンプルで、ポジション取りが悪かったり、タカさんが求めるプレーができていない時に、こうだよねって言ってくれる感覚が自分の中の考えと合っているからすぐに直せるし、自分の立場から言うのは何か失礼ですけど、考え方とかがすごく自分に合っている監督だなと思います」


――吉田監督と出会えたこともキャリアにおけるターニングポイントと言えますか。

「そうですね。京都の時にアキレス腱を断裂してしまって、復帰した後もなかなか上手くいかず、引退も考えたんです。で、京都との契約が満了になって神戸に行って、プロになってから一番苦しかった時期を乗り越えられたのは大きかったなと思います。そんな時にタカさんと出会えて、タイミングも良かったですね。まぁ、タカさんって最初はすごく怖いイメージだったんですけどね。顔、怖くないですか?(笑)。でも関西人らしく冗談も言うし、天然なところもあるし、結構面白い人ですよ」


まずは1日1日のトレーニングを大事に

――2023シーズンには神戸の優勝とともに、Jリーグ優秀選手賞を受賞しました。

「何で僕が選ばれたのか分からないです。だってそんな目立ったことはしてないですし、後ろの選手は陰であるべきですよね」


――自分が目立ちたいという気持ちは一切ないのですか。

「一切ないです。だからこういうインタビューも苦手です。今回が最後ですよ(笑)」


――そんなこと言わないでください(笑)。神戸ではJ1連覇を果たしましたが、“優勝”とはどんな景色ですか。

「大変だった印象しかないですね。もちろん優勝が決まった瞬間とかは相当嬉しかったですけど、それ以上に本当にホッとしたというか、終わったんだな、みたいな安堵感が強かったです」


――それだけ大変なことにエスパルスで再び挑もうとしているということですね。

「はい。僕も本当にタイトルが欲しいですし、タカさんをはじめみんなもそう思っているので。1年が終わった後にみんなで笑い合えればいいですけど、そんなことを言っても始まらないので、まずは1日1日のトレーニングを大事にして、今シーズンが終わった時、タイトルが一つでも獲れていたらいいなと思います」


――本多選手から見たエスパルスは、どんなクラブとして映っていますか。

「僕は地方のクラブに来たのが初めてだったんですけど、サポーターやスタジアムはめっちゃ良い雰囲気ですし、とくにアイスタの芝生の環境は日本でもトップクラスですごいなと思います。応援は、一つ言うとしたら……いや、僕がこんなことを言うのはおこがましいですけど、攻撃してる時の応援って自然とすごい盛り上がるじゃないですか。守備の時も、もっと応援の力で失点を減らせたらなぁって。まぁ、僕はそんなこと言える立場じゃないですけど」


――サポーターの皆さんはきっとそういう気持ちを持って応援してくれていると思います。

「エスパルスの応援って独特だから、前線の選手はリズムに乗っていきやすいと思うんですよ。後ろの選手も……僕自身がサンバの応援をもっと身体に染み込ませて、力に変えられるような方向に持っていけばいいってことですね」


――本多選手からそんな話が聞けるとは、意外でした。

「全部カットでいいです、こういうキャラでやってるんで(笑)。とにかく僕は勝ちたい。そのために今シーズンも頑張ります」


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2026/27シーズンより、副キャプテンの一人に任命された。「チームが目標を達成できるよう全力を尽くします」。この言葉こそ、彼のすべてである。


頂点からの景色を再び見るために、本多は1日1日をサッカーに捧げながら過ごしていく。



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