昨年6月のアウェイ名古屋戦で大ケガを負い、全治9カ月の診断を受けた高橋祐治。長いリハビリ期間を経て、今夏のオーストリアキャンプでついに対外試合復帰を果たした。次なる目標である公式戦復帰に向け、26/27シーズン開幕直前の心境を聞いた。
取材・構成=平柳麻衣
理想に近づけていく作業はこれから
――昨年6月の大ケガ(左膝前十字靱帯断裂、左膝半月板損傷)から、今夏のオーストリアキャンプ中のトレーニングマッチで対外試合復帰を果たしました。改めて心境を聞かせていただけますか。
「やっと練習試合ができるぐらい身体が戻ったんだなということと、チームメイトやスタッフ、とくにトレーナーの方々が喜んでくれたのは嬉しかったですし、ここからまたコンディションを上げて頑張ろうという気持ちにもなりました」
――ポリッスヤ ジトミール戦はネットでの生配信もあったため、日本から復帰の瞬間を見届けたエスパルスサポーターも多く居たかと思います。
「もともと20分ぐらい出る予定で、給水タイムで交代するはずだったんですけど、なかなか給水タイムが来ず、確認してもらったら給水タイムがなしになったということで、じゃあ行こうか、と。とくにソワソワすることもなく普通に準備をして、落ち着いて試合に入ることができました」
――短い時間の中でご自身のパフォーマンスについてはいかがでしたか。
「まだまだですね。『もっと跳べるのになぁ』とか、『もっとスムーズに動けるのになぁ』と感じる部分はもちろんありますし、あとはやっぱり1年ゲームから遠ざかっていたので、ゲーム感覚の部分もまだまだだなと。そういった具体的なプレーに関しては落ち込んでいる自分もいるというのが正直なところで、理想と現実にギャップはあるけど、そこは『1年やってなかったし、仕方がないか』と自分自身に言い聞かせて、自分の理想に近づけていくのはこれからの作業になるかなと思います」
――まだプレーに怖さを感じる面もありますか。
「押されて潰されたりする時とか、あとはスプリントする時に膝を折りたたまないといけなかったりとか、逆に膝が伸び切らないとスピードに乗っていかないとか、そういうところはもちろん怖い部分もありますけど、やっていかないと戻らない部分でもあるので、とにかくやって戻していくという感じですね」
――復帰に向けての過程においては、2020年のケガ(右膝前十字靭帯断裂)の時の経験も生かされていますか。
「いや、前にケガをした時は順調すぎるぐらい順調に復帰したから試合勘だけ戻せばという感じだったんですけど、今回のほうが前十字に加えて半月板も傷めてしまったので、ちょっと厄介な感じはしています。最初の頃は全然自分の膝じゃないような感覚もあったりしました。そこも慣れで、徐々に違和感が取れてきたかなと思います」
手を差し伸べてくれる人がたくさんいた
――ここまでのリハビリで一番つらかったことは何ですか。
「手術した後じゃないですかね。痛すぎるし、動けないし、足もつけないからトイレに行くのも大変で、治る気がしないというか、あの時期は結構キツかったです」
――そんな時、支えになったものは?
「たくさんありますよ。でもやっぱり家族の存在は一番大きいし、あとはクラブハウスに来ればチームメイトやトレーナーの方々がいたり、やっぱり話す相手がいるって大事だなと思いました。あとは音楽が好きだから、いろいろな音楽に助けられたりもしました。一曲には絞れないけど、例えばワンオク(ONE OK ROCK)とか、ケツメイシとか。リハビリってすごく地味なことを毎日毎日やるから、ずっと同じテンションでやるのが難しくて、『今日は本当にやる気出ないわ』みたいな日もあったりするんですよ。でも、とくにクラブハウスに来た時なんかは自分の空気で周りの人のテンションを下げたくないという思いもあったし、空元気でも何とか前向きにやっていこうとしていましたね」
――確かに、クラブハウスでは高橋選手が落ち込んでいるような姿は見かけていません。
「それもチームメイトがイジってくれたり、気を使って話しかけてくれたから、そのおかげで持ち堪えたというのが一番大きいですね。自分の周りには良い人が多いというか、手を差し伸べてくれる人がたくさんいたので、そういう人たちのおかげで前向きにリハビリができたし、周りの環境に恵まれたなと思います」
――逆に弱みをさらけ出すような時もあったのでしょうか。
「自分の本音のところは、奥さんだったり、去年だったら同い年の矢島慎也がチームにいたので、結構話を聞いてもらったりしていましたね。やっぱり自分の中に溜まったものって、言葉とかで外に出さないと、どんどん悪循環になっていくんですよ。だから『今こういう感じで、こういうことにストレスがかかっている』っていうのを話して、聞き役になってもらったりしていました」
――お子さんはケガのことを理解できていますか。
「分かりますよ。ケガをする前はよく公園とかで一緒にサッカーをしていたので、それができなくなって、誕生日の時だったかな、手紙に『パパ、ケガが治ったら一緒にサッカーしようね』と書いてくれて、そういうのは嬉しかったですね」
まずはみんなと同じラインに立つために
――2026シーズンから就任した吉田孝行監督が高橋選手に求めているのはどんなことだと捉えていますか。
「センターバックに求めていることは僕だけでなくみんな一緒だと思いますけど、カバーであったり弾くところ、潰すところなんかは吉田監督が徹底して求める部分だと思っています。そこをしっかりやるのは最低限として、プラスアルファ自分の強みを出していくことが大事になると思います」
――チームはタイトル獲得を目標に掲げていますが、目標を達成するために必要なことは何だと思いますか。
「僕自身まだキャリアの中で優勝したことがないのでちょっと難しいですけど、でもやっぱり毎日の積み重ねが大事だと思います。一人ひとりがどれだけ毎日の練習に対して本気で取り組んで積み上げられるか。それの繰り返しでチームはより強くなっていくと思います。吉田監督をはじめスタッフ陣も練習からすごく細かいことを言ってくれますし、練習中に求められる基準もより上がったと思うので、この空気感を継続していきたいです」
――サッカーキャリアの中で、センターバックのやりがいはどんなところに感じていますか。
「やっぱりすごく責任感が求められるポジションだし、後ろからチームを見ている分、声を出して味方にいろいろ伝えなければいけないポジションでもあるから、すごくやりがいを感じているし、楽しさももちろんあります。その中で、やっぱりゴールを奪われることに関しては、もちろんGKもそうだと思いますけど、センターバックの選手は自分たちのゴールネットが揺れることに対しては誰よりも悔しがらないといけないし、ネットが揺れることすら嫌がる人でなければいけないと思います」
――26/27シーズンをどんな1年にしたいですか。
「自分自身はまだ練習試合も20分ぐらいしか出られていませんし、まだポジション争いの中でみんなと同じラインには立てていないと思っています。まずは90分間試合に出て、ちゃんとパフォーマンスする。そこからやっと競争に加わっていけると思うので、そうしたら公式戦に復帰したいというのと、あとは1試合1試合を大事にして、しっかり勝点を積み重ねて、チームも目指しているように優勝したいですし、カップ戦でもタイトルを獲りたいなと思います。タイトルってどんなものなんだろうというのを、しっかり味わってみたいです」
――先ほど名前が挙がった矢島選手も今季は鳥取でキャプテンに就任するなど、同年代から受ける刺激はありますか。
「そうですね。一緒にやってた選手がだんだん引退をしてくる年齢になってきましたけど、それでも慎也とかはチームを引っ張る立場になっていたりして刺激も受けますし、慎也だけでなく自分たちより年上の選手もまだまだ頑張っているので、その人たちにも負けないようにじゃないけど、自分も向上心を持って、復帰に向けて地道にやっていきたいです」
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リハビリ期間中には、同じケガで苦しむ人のために個人のYouTubeチャンネルでリハビリの過程を発信するなど、前向きな姿勢を示してきた高橋。どんな時もつらさを表に出さないポジティブな彼の姿勢に、多くの人が勇気をもらったことだろう。
練習試合への復帰は、まだ完全復活への道半ば。理想のパフォーマンスでタイトル獲得を目指すチームの力となるべく、一歩一歩、力強く前進を続けていく。
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