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【クローズアッププレーヤー】 #須貝英大 「スプリント王が目指す高み。仲間と自分を信じ、ブレずに努力を」

今夏、京都から完全移籍で加入した須貝英大選手のロングインタビュー。「2025シーズンのスプリント王」に輝いた豊富な運動量を武器に、攻守においてハードワークを見せるサイドバック。今回の移籍に懸ける想いや、プレースタイルの信念を聞いた。


取材日=7月24日/取材・構成=平柳麻衣


他のポジションより頑張らなきゃいけない

――加入からここまでの日々を振り返って、どんな印象を抱いていますか。

「監督が求めるサッカーがすごく明確なので、新加入選手も既存の選手も、ミーティングを重ねながらお互いの特徴を理解し、始動日からモチベーション高くタイトル獲得という目標に向けて進めていると思います。キャンプもヨーロッパでやるのは初めてでしたけど、いろいろな人に支えてもらいながら、練習試合も含めて良い時間を過ごすことができました。本当に良い選手がたくさんいるので、あとはお互いの能力を生かしながらやっていければというところだと思います」


――キャンプ中の練習試合を経て、どんな部分に課題を感じましたか。

「個人としては、エスパルスの右サイドバックはとくに運動量が求められるポジションでもあるので、攻撃でも守備でも他のポジションより頑張らなきゃいけないというか、上下動というのが大切になってくると思います。攻撃ではやっぱりもっともっともっと得点に絡んでいかなければいけないと思っていますし、ディフェンスの選手なので前に上がっただけにならずしっかり戻る。ゼロで終わるためにきちんと守備をするという部分もやっていかなければいけないと思っているので、運動量という自分の武器を生かしながらやっていけたらと思っています」


――カールスルーエSC戦では木下康介選手へのアシストもありました。一つ数字を残せたことで良いアピールになったかと思います。

「そうですね。そこは自分が一番求めている部分で、どちらかというと対人の守備には自信がある中で、ゴールやアシストなど、攻撃でどれだけアクセントをつけられるかというのが今自分が向き合っている課題でもあります。中央からの攻撃だけでゲームが決まるというのは難しいと思うし、どれだけサイドからの攻撃で得点を取れるかという重要性を感じながら、キックの部分は練習しています。強度を出しながらもしっかり顔を上げて、周りを見ながらパスやクロスを供給すること。運動量を生かして良い位置でボールを受けて、良いボールを上げられるように引き続き意識してやっていきたいです」


――カールスルーエSC戦のアシストはスルーパスという形でしたが、供給するボールの種類も意識していますか。

「いや、キックの名手でもないのでそんなに球種は持っていないですけど、とにかく自分が意識しているのは、どれだけ相手が嫌がるところにボールを出せるか。ピンポイントで味方に合わせるというよりは、前線の選手は本当に相手の嫌がるスペースに入ってくるのが上手いので、あとはそこに良いボールを送れるか送れないかだと思っています。その時々で相手が一番嫌がるようなボールを入れられればと考えながらプレーしています」


――加入してからチームに求められることは、事前にイメージしていたとおりですか。

「まず獲得の話をもらった時にいろいろな話を聞く中で、すごく自分の特徴を生かせるなと第一に感じていましたし、エスパルスの試合を観たり、実際に対戦した時の印象もあったので、タカさん(吉田孝行監督)がどういうサッカーをするかは大体イメージがついていて、『想像以上だな』というよりは、『これぐらいやらないといけないよね』という感触です。それに僕自身、“頑張らないといけない選手”だと思っているので、特別能力が高いわけでもないし、本当に“普通の選手”だから、どれだけ他人より頑張ってプレーできるか。その意味でもエスパルスの右サイドバックはいろいろなチャレンジができるポジションでもあるし、そういうサッカースタイルだと思っているので、キツいですけど、やっていてすごく楽しいし、充実感がすごく大きいです」


――先日、反町康治GMにインタビューした際、須貝選手の獲得はすごく大変だったと話していました。

「京都は(2025シーズンで)3位に入ってACLの出場権がありましたし、自分は甲府の時もACLがあるというタイミングで鹿島に移籍したので、正直、京都に残ってACLを戦いたいという気持ちももちろんありました。でも、反町さんやタカさんの話を聞く中で、2人の熱量はもちろん、もっと自分のストロングポイントを伸ばせるかなとか、もっともっと成長できるかなというイメージがすごく湧いたというのが一番大きかったです。自分ももう今年で28歳で、これから先どういうサッカー人生を歩んでいくかというのがすごく大事になってくる中で、自分をもう一段階上に上げなければいけないと思っていますし、エスパルスはそれができるチームだと感じたので、自分の特徴を理解して必要としてくれたチームのため、自分の成長のために今回の移籍を決断しました」


――「もう一段階上に行く」というのは、ご自身の中でどんな基準をイメージしていますか。

「どうなったから成長した、みたいな明確な基準はないですけど、やっぱり現状維持が一番良くないと思っていて、新しい環境にチャレンジし続けることによって自分の見え方も変わってくると思うし、いろいろな選手とサッカーをすることで新たな発見や刺激もあると思います。どのチームにいても良い選手はたくさんいますし、そこから吸収するものが多くある中で、自分に足りないものが明確になったり、そういった発見がある瞬間が自分は好きというか、それが自分の成長につながると思って、大事にしています」


――今までの移籍も環境を変えることで得られる刺激を求めて決断してきたのですか。

「いや、ただ刺激が欲しいから新しい環境に飛び込んでいるというわけではなくて、その都度、チームのことや移籍のタイミングなど、サポーターの皆さんが想像している以上に考えて、悩んで、いろいろな人に相談しながらまた考えて……と悩み抜いた末に、息が短いサッカー人生の中でベストな選択をしてきたと思っています」


――須貝選手なりに、過去の所属クラブのサポーターの想いも背負いながらピッチに立ってきたのですね。

「それはもちろん。今まで在籍した甲府、鹿島、京都、みんなすごく大好きなチームで、本当に良いチーム、良い仲間に出会えたなと感じています。一方で、今回エスパルスに来てまた特徴のある良いサイドバックの選手たちとの出会いがあって、周りの選手のプレーを観るのは面白いですし、いろいろな選手の良いところを盗みながら、勉強しながら、自分も負けないように頑張ろうという思いで日々アピールを続けています」


このタイミングで豊くんと出会えたことも学び

――先ほど話に出てきた“頑張らないといけない選手”というスタンスは、どのように培ってきたのでしょうか。

「小、中学校の頃から意識していたことがずっと今にもつながっているんですけど、自分はとにかく無名な選手で、選抜に選ばれることもほとんどなかったんです。そういった中で、どれだけキツい時間帯に戦えるかとか、どれだけチームのためにできるかという部分を大事にしてきました」


――小さい頃からプロを目指していたのですか。

「いやいやいや、小、中学校の頃なんて全然プロになれるようなレベルじゃなかったですよ。高校(浜松開誠館高校)の時もそうだし、大学(明治大学)でも同級生の経歴と比べると自分は全然足りなかった。でも逆にそのおかげで自分に足りないものが明確になったし、『これもできないな』とか『これを頑張らなきゃ』といろいろな部分で感じられたのは大きかったです。あとは身近にプロになる先輩がいたおかげで、こういうことを日々積み重ねていけばプロになれるという明確なイメージを持てたのが一番大きくて、自分一人では絶対プロにはなれていないと思うし、周りの環境や人とのつながりに感謝しています」


――プロの世界がグッと近づいたのは明治大在学時ですか。

「最初の大きなきっかけは、高校の時に青嶋(文明)監督がサイドにコンバートしてくれたことですね。小中時代はボランチをやっていたんですけど、高校に入った時に全然通用しなくて、上手くいっていなかった時に青嶋監督が『走れる』という部分を評価してくれて、そこからサイドの選手になりました。高校3年間で走力も含め能力が上がったと感じたし、体力もついたと思います。大学では、同級生の(蓮川)壮大とかがバンバン主力として試合に出ている中、僕がちゃんと試合に出始めたのは4年生になってから。もちろんサッカーが好きだったのでプロにはなりたかったけど、自分がなれるとは全然思っていなくて、プロになるために頑張るというよりは、自分に足りない部分を勉強して、コツコツ地道にやり続けるしかないと思いながら取り組んでいました」


――実際にプロになれた時はどんな気持ちでしたか。

「それはもうすごく嬉しかったですし、なおかつ地元の甲府から声を掛けていただいて、プロ生活を地元でスタートできたのはすごく嬉しかったですね。僕は小さい頃から甲府サポーターで、ずっと観てきたクラブだったので」


――子どもの頃、憧れていた選手はいますか。

「それこそ(吉田)豊くんが甲府にいた頃、練習をよく観に行っていて、ポジション関係なくいろいろな選手にサインをもらっていたので、豊くんのサインも持っているはずです。だから今夏からチームメイトになって、今もまだあの高強度でバリバリにサイドバックでプレーし続けているって、もう本当にリスペクトしかないですし、憧れていた選手とこういう形で出会うって不思議な感じがしますね。自分もどうしたらあと10年、現役でプレーできるんだろうと考えたりもするんですけど、今の自分では全くイメージできないので、今このタイミングで豊くんと出会えたこともまた学びだし、良い刺激です」


――今、サイドバックとして参考にしている選手はいますか。

「海外サッカーは毎試合しっかり観るようなタイプではないので、どちらかというと国内のほうが実際に対戦経験があったりして、イメージしやすいですね。中でも酒井高徳選手は本当にいろいろなことを考えながらサッカーをしているなと感じるし、長友(佑都)選手は明治大の先輩でもありますけど、何歳になっても歳を言い訳にせずガンガン上下動を繰り返す部分は良いお手本になるし、自分ももうそろそろ30歳になりますけど、運動量が落ちないサイドバックになりたいなと思います」


――吉田監督のサッカーを体現するうえでは、酒井選手のプレーはスタッフ陣からも参考例として映像を提示されることもあるかと思います。

「やっぱり攻撃に参加することも多いですし、ビルドアップに入って後ろからゲームを作ることもしますし、攻撃だけでなく守備でもしっかり役割を担っているので、自分もタカさんの要求を理解しながら、いろいろ考えてやりたいなと思います。あとはプレーの質の部分ですね。どれだけ強度高くプレーしてオーバーラップしても、最後のクロスでミスをしてしまったらダメだし、勝つためにはそこを通さないと勝てない。プレーの質はもっともっと上げていきたいです」


どれだけ仲間と自分のことを信じてできるか

――高校時代は浜松開誠館高校で過ごしましたが、清水を含む中部地区をどのように見ていましたか。

「県大会だと西部の高校が勝ち上がることがあまりなかったので、中部の学校と当たる時は『西部を代表して頑張ろう』みたいな意識はあったと思います」


――静岡市で暮らすようになった今の印象はいかがですか。

「高校時代はバス移動がほとんどだったので、位置関係が全然わかっていなくて、草薙ってこんなにアイスタの近くだったんだとか、草薙や藤枝総合でよく試合をしたなとか、アイスタも来たなとか、なんだか懐かしい感じがします」


――エスパルスというクラブの印象は?

「すごく良い雰囲気だと思います。チーム全体としてタイトルに向けてやっていこうという一体感もありますし、選手がより良い環境で、良い状態でサッカーに臨めるように考えてくれているのを感じるので、そこはすごく良いところだなと思います」


――これまで在籍したクラブでのタイトル争いの経験を踏まえ、エスパルスではどんなことを大事にしていきたいですか。

「もちろん各々が良いプレーをすることも大事なんですけど、チームとして結果を出すためには信頼関係がすごく大事だと思います。どれだけ仲間のことを信じて、自分のことを信じてできるか。日によってやる、やらないではなく、どんな状況になってもチームのために、自分のためにやり続ける姿を見せることで、自分もチームに良い影響を与えられると思っています。“優勝”ということだけに囚われるのではなく、良い時も悪い時もブレずに毎日やり続けること。その繰り返しがゆくゆくはタイトルにつながると思うし、どんな時もチームがブレないように、自分も良い影響を与え続けられるよう意識したいです」


――最後に、エスパルスサポーターの皆さんへ。

「まずスプリントのところはやっぱりJリーグでトップを獲りたいと思っていますし、サイドバックの選手が2桁アシストできれば、チーム状況は絶対に良くなると思います。ゴールはもちろん、アシスト数のところもこだわって今シーズンに臨みたいです。あとはもう、とにかく監督が求めるサッカースタイルをどれだけ選手たちが信じてやり続けられるか。J1で優勝できるだけの力とスタイルはあると思うので、どんな状況になっても自分たちを信じてほしいですし、サポーターの皆さんにも清水エスパルスを信じて1年間応援していただき、みんなで良い結果が得られればと思います」


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自らを“頑張らないといけない選手”と表現した須貝。無名だった学生時代からいかにコツコツと努力を重ね、プロの世界の扉を叩くまでに成長を遂げてきたのかが、その一言に詰まっている。


無尽蔵のスタミナでガムシャラにピッチを駆ける姿は、苦しい時にもチームに活力を与える存在になるだろう。


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