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【クローズアッププレーヤー】 #小泉慶 「背中で示すリーダーシップ。勝利から逆算した行動を」

今シーズン、FC東京から完全移籍で加入した小泉慶選手。国内で5クラブを渡り歩いてきた豊富な経験に基づくサッカーセンスと、デュエルの強さや走力に表れる泥臭さを持ち味とする。キャプテンシーがあり、良き兄貴分として後輩からもさっそく慕われている彼の、サッカーに対する真摯な姿勢を紐解いた。


8月18日取材/取材・文=平柳麻衣


自分にはこのポジションが一番特徴を出せる

――エスパルスに加入してからここまでの日々はいかがですか。

「僕だけでなくて新加入の選手に対して、チームのみんながすごく受け入れてくれて、新加入組としては本当にありがたいです。僕自身は最初に少し離脱してしまい、監督をはじめスタッフの方々には迷惑をかけましたし、やっぱりサッカーをやらないと話せない、分かり合えない部分もあるので、正直、出遅れてしまったなと思いましたけど、何とか開幕に間に合って、メディカルスタッフやチームメイトみんなに感謝したいと思っています」


――それでも実戦の場を踏まずに開幕からメンバー入りできたのは、やはりこれまでの経験値が生かされていますか。

「やっぱりケガをしたくてする選手っていないですし、ケガをしてしまった時は割り切るというか、吹っ切れるしかないと思います。ただ、今回は移籍のタイミングでのケガだったので、自分としても気合いを入れてやってきて、いきなりサッカーができないというのは、焦るというよりも『何をしてるんだろう』みたいな気持ちになりました。本来ならチームが変わって、新しいサッカーのスタイルにも触れて、1日でも早くこのサッカーに順応してピッチに立ちたいという想いだったので、練習試合をしないで始まってしまったのは痛かったです。でも、過去に夏の移籍を2回経験していて、その時の感覚に少し近いというか、キャンプもなく、まだあまり話せていない選手たちと一緒にいきなり試合をするという経験は自分の中にあったので、その感覚も生かしながら順応していければと思いました」


――チームのやり方を理解したうえで、自分の役割はどんな部分だと認識してプレーしていますか。

「僕が今やっているポジションは攻撃の時はボランチではないので、そこは今までの癖でボランチのところに立ち位置をとってしまうのを修正していかなければと思いました。大事なのは味方を助けてあげられるポジショニングだと思っていて、攻撃時はもちろん今後も意識していかないといけないし、守備時のポジショニングも細かいことを言ったらたくさんあります。ただ、ボランチも1列前もどちらも今までやったことがあるポジションではあるので、監督によって求められることは違いますけど、1日でも早く理解してそれを試合で結果として示していかないといけないと思います。自分たちの世界は結果の世界だと思うので、チームが勝つためにこのポジションでできること、監督から言われることプラス自分の特徴をしっかり出していくということを今後も意識していきたいです」


――ボール保持時と非保持時の役割は、今まで経験してきたサッカーと比べても違いが大きいと感じますか。

「そうですね。とくに自分のポジションのところは全く違います。ただその分、徹底したことを言ってくれるので、選手としては求められていることをまずはしっかり覚えて表現するというのがシンプルに大事なことだと思います。また、このポジションをやるにあたってはしっかりと90分動ける身体を作っておかないといけないとも感じていて、そこはリハビリ中もそうだし、復帰してからも意識しています。もちろん今のサッカーは全部のポジションがトランジションの速さを求められて大変だと思いますけど、自分にはこのポジションが一番特徴を出せると思っているので、だからこそ結果を出さないと意味がないというか、チームとしても個人としても結果を求めてやっていかないといけないと感じています」


――吉田孝行監督のサッカーに触れて、まだまだ自分に伸びしろを感じた部分はありますか。

「やっぱりボールを奪うところは以前のほうがもっともっとできていた感覚があるので、もう1回、そこの激しさやガムシャラさは個人として成長させないといけないところだと思っています。あとは攻撃のところでも今インサイドハーフをやっていて、より前の選手との関わりが増えている面もあるので、やっぱりゴールに直結できるようなプレーも意識していかないといけない。シンプルなプレーや安牌なプレーばかりでなく、前にターゲットとなる選手もいますし、チームとしてもクロスからの攻撃が武器になっていると思うので、僕のポジションのところからでもクロスを上げる場面を作れるように、そういうところはより積極的にやっていかないといけないのかなと思っています」


――セカンドボールの回収率もチームのカギの一つに挙げられるかと思います。

「そうですね。今もうJリーグは本当にセカンドの拾い合いだったり、1つのプレーの強度とか、ほんのちょっとした差で展開が大きく変わってしまうところがあるので、多分どこのチームも試合前にはセカンドボール、球際、1対1で負けないといったことを強く言われていると思います。全チームがそこの部分を意識して試合に入っている分、結局はそこが肝になってくると思うし、そこで負けてしまうとどうしても試合のリズムを持っていかれてしまうので、根本的なところで負けないことが大事になってくるし、逆にそこで負けなければ試合を上手くコントロールできたり、チャンスの回数も増えていくと思います。具体例を挙げると、例えば神戸や鹿島、町田、広島なんかはやっぱり肝となる部分での強度が全員強いし、対戦してみると『賢さ』や『巧さ』を感じる部分もあります。エスパルスもそういうところがチームとしてできるようになればもっと試合をコントロールできると思いますし、チャンスの回数が増えれば決めきれる選手もたくさんいると思います。なので、その肝の部分で負けないことは、とくに自分のポジションでは意識して戦っていかないといけないと思っています」


このクラブのために頑張りたいという想いが芽生えた

――リーグが開幕してからここまでは途中出場が続いており、ピッチの外から試合を観る時間のほうが多いですが、外から観て感じたことを伝えたりはしていますか。

「いや、全くないですね。なかにはそういうふうに言ってくれる先輩もエスパルスに限らずいると思いますし、それはそれで良いと思いますけど、僕自身は結局プレーでしっかり見せないと何も言えないと思っています。だって、外から観ていたらぶっちゃけ何とでも言えるじゃないですか。もし自分が逆の立場だったら嫌だなって思ってしまいますし、外から観ているだけでは簡単に言えないですよ。しっかり自分がピッチに立って、ピッチで何かを示さない限り言えないし、示していたとしても他人に強く言うのはあまり得意ではないかもしれないです」


――言葉でも積極的に引っ張っていくスタイルをイメージしていたので、意外でした。

「エスパルスに来てから何人かにもそう言われたんですけど、FC東京でキャプテンをやっていたので、そういうイメージで見られる部分があるのかもしれないです。でも、FC東京の時も本当にチームメイトに助けられながらやっていただけですし、あれはあれで本当にすごく良い経験をさせてもらったと思っています。ただ、やっぱり口でどうこう言うよりもピッチで見せるのが一番の示し方だと思っていますし、自分自身が上に行くためにもそれをやらなければいけないと思うので、これからも意識してやっていきたいですね」


――今回のエスパルスへの移籍は、覚悟のいる決断でしたか。

「そうですね。そんなにスパッと決められるような決断ではなかったです。FC東京では自分もチームもリーグ優勝をしたことがなくて、当時のチームメイトたちと、カップ戦でもいいから何かタイトルを一個獲ろう、優勝しようという方向でみんなと頑張ってきたんですけど、2025シーズンは前半戦がとくに苦しくて、残留争いに巻き込まれていたところを何とかみんなで頑張って乗り越えた感覚がありました。それで後半戦は少し巻き返して、天皇杯もベスト4まで行ったんですけど、結局タイトルは獲れませんでした。そういった苦しい時期を一緒にもがいて乗り越えたメンバーの多くが26/27シーズンもそのままチームに残ると分かっていたので、その中で自分がこのタイミングで移籍していいのかという葛藤は、綺麗事になってしまいますけど、本当にその感情はありました。


でも今回、それを上回るぐらい環境を変えて挑戦したいという気持ちが強かったからこの移籍を決断したし、30歳を超えてこういった評価してくれるクラブがあるというのは、もうラストチャンスなんじゃないかという感覚が自分の中にありましたし、もちろんエスパルス側の熱意も感じました。最終的には『エスパルスのために挑戦したい』という想いで移籍を決断することになりました」


――移籍に際してどういった評価をされたことが決め手になりましたか。

「まずだいぶ早いタイミングで声を掛けていただいたので、そこでも熱意が自分にはすごく伝わりましたし、本当に簡単に決められることではなかったですけど、でもこのタイミングで『行かない』という選択をしたら、今後引退した時に『あの時行っておけば良かったな』という後悔が残るほうが嫌だなと思いました。FC東京のファン・サポーターの方々からしたら本当にただの言い訳に聞こえてしまうと思いますけど、自分の中で本当に難しい決断だったことは事実ですし、それでも30歳を超えてこの挑戦ができるということがシンプルに嬉しかったこと、このクラブのために頑張りたいという想いが芽生えたことが大きかったです」


――プレースタイルについて、先ほど「ボールを奪うところは以前のほうができていた」という話がありました。一番できていたという実感が残っているのはいつ頃ですか。

「新潟にいたプロ2年目の時とか、あとは鳥栖に加入して2年目のシーズンは1年をとおしてコンスタントに試合に出られて、ある程度のパフォーマンスをほぼ1年をとおしてできたという手応えがありました。でもそれ以降は、その年を上回るようなシーズンを送れた感覚が自分の中でなくて、感覚としては“できていない”というふうにも感じています。ポジティブに言えばそこにしっかり気づけているのは良いことかもしれないですけど、でもこの世界は本当に結果を出さない限り終わってしまうので、じゃあそれを上回るためにどういう取り組みをすべきなのか、逆算してやっていかないといけないと感じています」


――小泉選手が選手として最もプライドを持っているのは、やはりデュエルの部分でしょうか。

「そうですね。ボールを奪うところであったり90分をとおして走りきれるところを武器にしてプロに入った時からやってきたので、それは10年以上経った今も変わらないですし、今後もたぶん変わらないと思います。そのためにはやっぱり動ける身体をしっかり作っておくことが常に大事で、動けなければ奪い切ることもできない。あとは試合を経験してきた中で頭を使って奪い切る部分も昔に比べたら増えてきたとは思っているので、身体と頭の両方が上手くかみ合えば、もっともっと良くなっていくのかなと思います」


ずっと憧れの存在であり続けている

――小泉選手のこれまでのキャリアを振り返った時、最も重要なターニングポイントとして思い当たる試合や出来事はありますか。

「僕はもう間違いなく、新潟でプロの世界に入った時にレオ シルバと出会ったことですね。ブラジル人で同じポジションだったんですけど、プロ1年目の僕から見たらもうとんでもない人で、サッカー面はもちろん、人間として学ぶことも多かったです。彼と一緒に試合に出て真隣でプレーできたことも財産ですし、普段の練習から盗めるものや吸収できるものはすべて吸収しようと思っていたので、通訳の方に入ってもらいながら聞きたいことは全部聞いていました。その後、僕が鹿島へ移籍した時もまたチームメイトになることができて、その時もすごかったですし、彼と出会えたことには感謝の気持ちしかないですね」


――先ほど言っていた「頭を使って奪う」部分も学んだりしましたか。

「そうですね。身体能力もすごく高かったですし、守備のところだけでなく攻撃でも推進力があって運べたり、ゴールに直結するようなプレーもあったので、攻撃でも守備でも学ぶことはたくさんありました。人間性の面では、日本人かと思うぐらいめちゃくちゃ真面目で、どれだけ活躍しても謙虚で何も変わらない。そういったところからも学ぶものばかりでした」


――レオ シルバは小泉選手にとって、「なりたい存在」「超えたい存在」「違う部分で勝ちたい存在」、この中のどの感覚に一番近いですか。

「あれを超えるのは無理ですね(苦笑)。でも一緒にやっていた当時は『超えたい』一心でやっていましたし、今でもずっと心の中で憧れの存在であり続けています。それに、彼が教えてくれたものがあるおかげで今自分がサッカーをやれている部分もあると思うので感謝の気持ちもあるし、レオはもう引退してしまいましたけど、彼の分も『俺まだまだ頑張ってるんだよ』と伝えられるぐらいにやっていきたいなと思っています」


――小泉選手もそんなふうに若手や子どもたちから憧れられる選手になりたいと思いますか。

「いや、そういう役回りはジャメ(ジャーメイン良)でいいんじゃないですか(笑)。もし僕みたいなスタイルが好きだと言ってくれる若手や子どもがいたらそれは嬉しいですけど、さっきも言ったように僕は口で何かを伝えるよりもプレーで示すタイプですし、僕も先輩たちを見ながら学んできました。今のエスパルスにも良い若手がたくさんいるので、まずは自分がしっかりプレーで伝えられるようにやっていきたいです」


――クラブは「タイトル獲得」を目標に掲げて始動しました。今後どんなことが大事になってくると思いますか。

「ホームの横浜FM戦もそうですけど、やっぱり最低でも勝点1にできたゲームだったと思うし、個人としても自分が出て負けてしまっているので、個人も含めてまだまだやっていかないといけないし、優勝するにはああいうゲームを勝ち切ったり、難しい試合でも勝点1を拾うしぶとさ、勝つためにもっと徹することや、ずる賢さも時には必要だと思います。また、ここから連戦が続いていきますけど、あまり先の試合を考えず、目の前の1試合にどれだけ懸けられるかが大事になってくると思いますし、1試合1試合勝つためにやっていく。その積み重ねしかないと思っています。選手や監督もいろいろなところで『タイトルを獲る』と発信している中で、じゃあそのために何をしなければいけないのかを逆算して考えていけば、トレーニングや言動、行動とかも変わってくると思いますし、当たり前の基準が高くなればなるほどタイトルに近づいていくと思うので、そこは自分自身にもしっかりベクトルを向けてやっていきたいです」


――まだ加入して日が浅いですが、試合やイベントなどをとおしてエスパルスというクラブにどんな印象を抱いていますか。

「地域密着というか静岡全体で清水エスパルスを盛り上げていこうというのはすごく感じますし、メディアで取り上げられたり、応援してくれる、支えてくれる方々がいて選手たちは今サッカーに集中できていると思います。まずはその環境に感謝しないといけないのと、結局はサッカーで結果を残さない限りは何も意味がないと思うので、そこは僕も含めてしっかり自分にベクトルを向けて、日々の練習から頑張っていかないといけないと思っています」


――エスパルスサポーターの皆さんへ。

「もう感謝しかないですよ。開幕戦もアウェイの名古屋でしたけどあれだけの人数が入ってくれて、結果としてその声援に応えることができました。ホーム開幕戦もたくさんの方が観に来てくれたのに結果で応えられず、やっぱり観てくれた人に勝ち試合を見せられるように選手はやらないといけないと改めて感じました。この街だからこそ、勝てば勝つほど人も入るだろうし、もっともっとエスパルス自体が盛り上がっていくだろうなと感じているので、ここから本当に厳しい戦いが始まっていくと思いますけど、もっともっとエスパルス自体を盛り上げられるようにチーム全員で頑張っていきたいと思います」


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インタビュー中、何度も繰り返された「プレーで示すしかない」「結果がすべて」という言葉。それらは、これまで渡り歩いてきたクラブの中で培ってきた責任感の強さや、彼自身の軸となっている「上に行きたい」「タイトルを獲りたい」という欲望が生み出しているのだろう。


「ラストチャンス」の覚悟を持ってスタートしたエスパルスでのキャリア。愚直にサッカーと向き合う姿勢は、エスパルスでも周囲に好影響を与えることになっていくはずだ。




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