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【クローズアッププレーヤー】#弓場将輝 「ポジティブな思考。ブレない成長意欲」

「J1への挑戦」という高い志を持って2025シーズンにエスパルスへ加入した弓場将輝選手。ここまでの約1年半では、日々真っ直ぐにサッカーと向き合いながら、チャンスが訪れた際には自身の持ち味を存分に発揮し、信頼を勝ち取ってきた。「ミスが怖くなくなった」という24歳のブレないメンタル、ポジティブな思考のルーツに迫った。


9月1日公開/取材・文=平柳麻衣


自分のパフォーマンスよりチームの勝利

――第3節C大阪戦で今季初出場を果たしました。

「湘南との練習試合(8/16)に45分出ただけでいきなりスタメンだったので、結構サプライズなタイミングでびっくりはしましたけど、ハーフシーズンで見せてきたものも含めて評価してもらってのことだと思うので、本当にありがたいことですし、結果でしっかり恩返ししていけたらと思いました」


――そこから天皇杯を含めて3試合連続出場中。とくに前節柏戦は高いパフォーマンスを見せていたと思いますが、感触はいかがですか。

「いろいろなタイプのアンカーがいる中で、自分にできることは最大限やったかなと思います。ただ、試合後にも『嬉しいけど嬉しくない』と言ったように、僕のパフォーマンスは良かったかもしれないけど、結局勝ってないので。僕はたとえ自分のプレーが悪くてもチームが勝てば良いと思うタイプなので、悔しい気持ちは変わらないです。とくに今はチームが点を取れてないのでもどかしいですけど、名古屋戦で勝てたのもほんの少しの差だったと思うし、負けた3試合もあと少しの差だと思うので、やり続けるしかないですね」


――今季はアンカーでの起用が増えていますが、どのように捉えていますか。

「僕としてはアンカーでもインサイドハーフでも、どっちもできるんだという信頼を得られるようなプレーを見せていければと思っています。アンカーなら、このチームはビルドアップに執着しないので、どちらかというとセカンドボールを拾って前につけることと、あとはリスク管理の部分が大事だと思いながらやっています。僕が出ていなかった試合も上から見ていて、やっぱりボールを奪い取るところとかが大事だと思いましたし、僕はそういう部分で示していくことを意識しています」


――今オフはボランチのポジションにも選手の入れ替わりがありました。どう受け止めましたか。

「外国人枠もあるので、僕としては全然ネガティブには捉えていないですね。例えば(小泉)慶くんなんかはすごいキャリアを持っていて、対戦相手として見た時もすごく良い選手だなと思っていたので、盗めるものはしっかり盗んでいきたいなと思っています。あとはもう競争に関しては結果が全てかなと思っています。一番分かりやすいのはゴールやアシストといった数字で示すこと。今までもチャンスをもらった試合でのパフォーマンスに波を作った感覚はないですけど、それでもチャンスを掴みきれなかったということは、まだ足りないということ。個人としてもチームとしても結果を求めてやっていくだけです」


――宇野禅斗選手が海外移籍したことについては?

「昨年のオフに大分で一緒にやっていた安藤智哉選手がドイツに行って、半年後には禅斗が行って、身近な選手がどんどん羽ばたいて行っているのを見て、自分も負けたくないなという想いが強くなりましたし、そのためにしっかりここから上げていけたらと思っています」


――弓場選手と宇野選手は以前『三保クラブハウス通信』でも話してくれたように、良い関係性を築いてきたそうですね。

「最初はやっぱり同じポジションを争うライバルで、少し気まずさはありましたけど、でも一緒にやっていく中ですごくコミュニケーションを取るようになりました。禅斗は『将輝くんのおかげ』と言ってくれましたけど、僕からしたら禅斗のおかげなんですよ。僕が試合に出ていない時も話を聞きに来てくれて、『俺からアドバイスできることなんてないけどな』と思いつつ僕の意見を伝えさせてもらって、逆に禅斗がケガをしていて僕が試合に出ている時は、例えば失点シーンについて『こうしたほうが良かったよね』と言ってきてくれたり。


でもそういう時、禅斗は『いや、大丈夫っすよ』って先輩をたてるじゃないけど、気遣ってくれたりするんですよ。本当に優しいヤツなんだなとは思ってたので、ロッカーも隣でしたし、ギスギスすることはなかったですね。だから対談した時に禅斗が『いつも結果出して脅かしてくるから、毎週毎週ヒヤヒヤで』って言ってくれたのが、ちゃんと僕のアピールも届いていたんだなってのが嬉しかったし、やっぱりチームってそういう競争があるべきだと思うから、僕たちがやってきたことに間違いはなかったんだなと思っています」


常にサッカーに対して120%で向き合ってきた

――百年構想リーグは弓場選手にとってどんな半年間でしたか。

「いや本当にあっという間でした。移籍してきた年(2025シーズン)は、J1に昇格した基盤のあるチームに入るのがすごく難しくて、今年から監督が代わってまた横一線からのスタートだったので、前年より出場していきたいなという心構えでいた中でなかなか出られない時期があったので、すごく悔しかったです。苦しい時期もありましたけど、日頃の練習だったり、1日1日を大切に前向きに取り組んできた成果が最後の国立(5/24vsG大阪)でのゴールだったのかなと思います」


――国立では点を決めた後、真っ先にゴール裏に向かって走っていきましたね。

「本当は自分もベンチ常連組だったのでベンチのみんなと喜びたかったんですけど、もう気づいたらゴール裏まで走ってましたね(笑)。そのままの流れでベンチのほうへ行って、監督、コーチのほうへ行って。ようやく取れたなという気持ちでした」


――「ようやく」ですか。

「そうですね。それこそ2025シーズンで一番点が取れそうだったと思ったシーンが国立(5/3vs名古屋)だったんですよ。カピ(カピシャーバ)のクロスにフリーで右足でシュートを打って、キーパーを越えたんですけど、後ろにいた相手選手に弾かれて。それがたぶん2025年で一番惜しかったシーンで、『うわぁ、この大勢の観客の前で決められねえか、俺』っていう悔しさがあったんです。だからというわけではないですけど、二度目の正直というか、二度目にして国立で点が取れたことはやっぱり大きな自信になりましたし、ようやくスタートラインに立てたような気持ちになりました」


――出場機会に恵まれない時期も、練習試合では毎回のように数字で結果を残していました。

「そうですね。常にサッカーに対して120%で向き合ってきましたし、これからもそのつもりです。くさることは簡単なので、サッカー選手の寿命はすごく短いですし、くさっている時期ほど無駄なものはないので、常に自分と向き合ってやるようにしています」


――そのような考えを持てるようになったのはいつ頃からですか。

「今で言えば子どもが生まれたことが大きなモチベーションになっていますけど、やっぱり上を目指してやっていきたいという気持ちが自分の中にあるし、Jリーグで収まりたくない。何年後かには海外でプレーしたいという気持ちがあるからこそ、それを逆算して1日1日を大切にしないといけないなと思っています。大分時代にずっと試合に出てきた中で、1カ月ぐらい出られなくなった時期があったんですよ。その時にメンタル的に落ち込んで日々のトレーニングを疎かにしてしまい、あとで振り返った時に『あの時間、すごく無駄だったな。もっと自分に向き合えたな』と後悔したんです。そういう経験があるからこそ、エスパルスに来て、苦しい時期があっても自分と向き合えるようになったのかなと思います。まだ24歳ですし、キャリア的にはまだまだ浅いですけど、『これ無駄だったな』という後悔を若いうちにできたことは僕にとってプラスでしたね」


――定期的に自分自身を振り返る機会を設けているのですか。

「いや、ふとした時に思うぐらいで、きっちり振り返る時間を設けたりはしないですね。基本、面倒くさがりなので(笑)」


――これまでの取材をとおして、弓場選手は曲げないところと気にしないところのバランスをとるのが上手いなと感じることが多い印象です。

「僕、基本的には気にしないことのほうが多いと思いますよ。これも大分時代の話なんですけど、自分が中盤辺りでボールを取られてミドルシュートを決められたシーンがあったんですよ。結局その試合は3-3の引き分けに持っていけたんですけど、僕めちゃくちゃ落ち込んだんですよね。その時、1、2週間ぐらい引きずったけど、周りの人ってそんなに他人のことを覚えてないんだなって思ったんですよ。逆に僕も他の選手が勝敗に直結するようなミスをしたとしてもすぐ忘れますし。だったらもちろんミスは良くないですけど、『ミスしても明日になったらそのミス誰も覚えてないや』ぐらいのスタンスでサッカーをするようになったら、ミスが怖くなくなりました」


――それが弓場選手の持ち味でもある思い切りの良さに繋がっているのでしょうか。

「そうですね。プレーに迷いはなくなった気がします。サッカーはやっぱりメンタルスポーツなので、少しでも恐怖心があったら良いプレーができないですし、大事なのはそこかなと思います」


――エスパルスに来てからはもう、くさりそうになった時期は経験していないですか。

「それはないですね。移籍してきて最初の5試合ぐらいメンバー外だった時は、家族もこっちに来て環境が変わるストレスがあったし、僕自身も今だから言える話ですけど、やっぱり移籍自体が初めての経験だったのでストレスを感じていたし、その中でメンバーに入れないというのは、結構不安でいっぱいでした。でも練習試合でアピールはできていたので、サッカーに対してくさることはなかったですし、やり続けるだけだなと思っていましたね」


――試合後や練習後にお話を聞いても、基本的にポジティブな言葉が返ってくることが多い印象があります。

「そうですね。僕自身があまり他人のことを言いたくないので。高卒2年目とかで試合に出ていた時に、他の選手が外に矢印を向けたコメントをして、それを記事に書かれていたことがあったんです。そういうのって見ていて気持ち良くないし、それを書かれるのも気持ち良くないし、だから僕も周りの選手、とくに年下の選手たちが記事で見て良い気分にならないようなことは絶対言いたくないと思いました。それに結局ネガティブなことを吐くと、自分に返ってくるだけだと思うんですよね。だから僕は常にポジティブなことだけを発するようにしています」


――ポジティブな面で言えば、先日の天皇杯では延長後半に入る前の円陣で弓場選手が「勝ち切るよ」と大きな声でチームを鼓舞していましたね。

「スタートから出ている選手は声も出せないぐらい疲労がすごかったので、僕を含め途中から入った選手がしっかり声を出してやらないといけないと思いましたし、気持ちも入っていたので、必然的にというか、勝手に声が出ていました。あのタフな経験をまた次につなげることができたら、僕にとって良い成長ということになるので、これから先がやっぱり大事だなと思います」


このエンブレムを付けることができて幸せ

――大分という愛着のある地元を離れ、静岡に来て1年半が過ぎました。どんなことを感じていますか。

「本当に苦しい時期がすごく多かったですけど、サッカー人生が終わった時にたぶんこの時期ってすごく今の自分にとってプラスになる経験だったって思えると思うんですよ。というより、そう思えるような人生を歩めるようにこれからも頑張っていきたいです」


――エスパルスというクラブや街の印象はいかがですか。

「もうめちゃくちゃ良いですね。スタジアムの雰囲気や観客の多さ、サンバのリズム。他のクラブにはない唯一無二の良さがありますし、本当に素敵なクラブで、このクラブのエンブレムを付けることができてすごく幸せだなと思います。静岡の街も、僕は生魚が大好きなので、美味しい魚をたくさん食べられて助かっています」


――最後に、今後の目標を聞かせてください。

「本当にチームの中心選手になること。そしてチームが目標を達成できるように、チームのみんなと力を合わせてやっていきたいです。また、個人的には海外に行って、レスター・シティ時代の岡崎慎司さんのように名門クラブを倒して優勝したいという大きな目標があります。その目標に向かって日々頑張ります」


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アンカーでの起用が増えている今季は、攻撃面で相手ゴール前に侵入する場面は減りつつも、チームのバランスを取りながら、ここぞというピンチでは自陣ゴール前で身体を張って決定的なピンチを救う。彼の最たる強みはボックス内での仕事なのだと再確認した。


「アンカーもインサイドハーフも、両方とも高いレベルでできるようになりたい」とポジティブに現状と向き合う弓場。「本当にチームの中心選手になる」という覚悟が、サッカーでも立ち居振る舞いでも、チーム内での存在感を増す原動力になっている。


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