11月5日、札幌ドームで行われたJ1リーグ最終節。J1残留のためには、この試合の勝利が最低条件だった。1点ビハインドで迎えた後半、一気に攻勢に出るとチアゴ サンタナの強烈なボレーで同点に追いつく。さらにその2分後に白崎凌兵のスライディングシュートで逆転。その後1点返されるが、78分にホナウドの来日初ゴールで再逆転に成功する。エスパルスに関わる全ての人々は、このゴールに一縷の望みを懸けていた。しかし――。86分、さらに後半アディショナルタイムに痛恨の連続失点を喫して敗戦。2015年以来、クラブ史上2度目となるJ2降格が決まった。
今季を迎えるにあたり、選手層は充実していた。主力選手の多くは残り、鹿島から白崎、柏から神谷優太、徳島から岸本武流が加入。昨年の残留争いの中で貴重なアシストを記録した山原怜音が筑波大学から、さらに早稲田大学からは加藤拓己、静岡学園高校から川谷凪、ユースから千葉寛汰、菊地脩太がそれぞれプロの門を叩いた。前年はシーズン序盤から躓いたが、残り4試合のところで平岡宏章監督がチームを率い、3勝1分という好成績で残留を達成。平岡監督が引き続き今季スタートから指揮を執ることも決まり、新戦力を加えて、さらなる飛躍が期待されるシーズンだった。
そうして迎えたリーグ開幕戦の相手は札幌。けが人が相次ぎ、ついに開幕1週間前にエースのサンタナまで負傷離脱となるなど不穏な空気もあったが、1点リードを奪われた中で、鈴木唯人が新エースに名乗りを挙げる同点ゴールを叩き込んでドロー。悪くないスタートを切ると、続く第2節は3年ぶりの開催となる静岡ダービーとなった。開始早々に神谷のパスに抜け出した鈴木唯がGKとの1対1を制して先制ゴール。1点返されるが、67分にカウンターから中山克広が決めて勝ち越し。今季初勝利をダービーで飾った。
JリーグYBCルヴァンカップは開幕戦となった名古屋戦はスコアレスドロー、続くJ2徳島との戦いでは神谷の直接FKが決まり辛くも引き分けに持ち込む。第3節の広島戦ではベンジャミン コロリの来日初ゴール、原輝綺の追加点で2-1で勝利を挙げたが、2周目に入るとアウェイ徳島戦でまさかの1-4と大敗。第5節で名古屋にも敗れ、第6節では広島に勝利したが、時すでに遅しだった。
その広島戦が今季公式戦ホーム初勝利となったが、リーグ戦ではなかなかホームで勝利を挙げることができなかった。その要因の一つが、今季苦しめられることになるアディショナルタイムでの失点だ。リーグ第8節G大阪戦、3月18日にチームに合流したU-23韓国代表のオ セフンが初先発した試合になった。そのオ セフンは早速期待に応え、57分に先制ゴールを決める。ところが、このまま勝ち試合となるはずが、90+7分に失点。掴みかけていた勝ち点3が、目前でこぼれ落ちた。
もやもやする展開が続く中、第11節湘南戦で鈴木唯の1得点2アシストの活躍もあって4-1で今季2勝目を挙げるが、川崎F戦を0-2で落とすと、京都戦の引き分けを挟んで、そこから3連敗。その第16節柏戦の翌日、平岡監督が契約解除となり、エスパルスは4年連続シーズン途中での指揮官交代となった。
後任を模索するなか、篠田善之ヘッドコーチが指揮を執ることになった天皇杯初戦は、周南公立大戦。13分にサンタナが決めてからゴールラッシュとなった。終わってみればディサロ燦シルヴァーノがハットトリック、サンタナ、中山が2得点、最後はオウンゴールで8-0で勝利。こちらは最高のスタートを切ったが、3回戦京都戦では1点を奪うことができず0-1で敗れ大会を終えることになった。
平岡監督の後任に決まったのは、ブラジルでも数々のチームを率いてきたゼ リカルド監督。クレーベル サントスヘッドコーチ、ファビオ エイラスフィジカルコーチ、フェリペ オリーベフィジオロジストとともにチームの立て直しを進めることになり、リカルド監督が練習を指揮してわずか4日で第17節福岡戦を迎えることになった。それでも積極的にボールを保持する戦いがはまり、序盤に西澤健太のゴールで先制すると、41分にサンタナのゴールで追加点。後半に1点奪われても、交代出場のベンジャミン コロリが3点目を決めて快勝。リカルド監督の初陣は、今季リーグ戦ホーム勝利となった。
そして今季を語る上で、大事な一戦を迎える。7月2日、エスパルスのクラブ創設30周年記念マッチとして国立競技場で横浜FMと対戦した。先制点を奪われるが、直後に神谷のゴールで追いつくなど、シーソーゲームに。後半開始早々にサンタナのゴールで2-2としたが、そこから一気に3失点を喫する厳しい展開。後半アディショナルタイムに片山瑛一が執念で押し込んだものの、3-5というスコアで敗れた。それでも、エスパルスのホームゲーム歴代最多入場者数となる56,131人を集め、それは今季のJ1リーグ最多入場者数でもあった。
リーグも終盤戦に突入。なかなか下位を抜け出せないままだったが、夏の補強で乾貴士、北川航也、ヤゴ ピカチュウと大型補強を行う。その3人の出場が可能となったのが第23節鳥栖戦だった。前半は0-2、白崎のゴールで1点返したが、80分に致命的な3点目を相手に与えてしまう。しかし、北川のゴールでもう一段ギアを上げ、最後はサンタナのゴールで3-3のドローに持ち込む。この試合を境に8月の4試合を負けなしの3勝1分で順位を上げた。
だが、9月からはリードを奪いながら、後半アディショナルタイムに失点する試合などが続き、1勝もできないまま最終節に突入。その最終節で札幌に3-4で敗れ、17位でJ2降格が決定。J1得点王のサンタナ、さらに日本代表守護神の権田修一を擁しながら、クラブ創設30周年という節目のシーズンは、まさかの結末となった。
「この結果を真摯に重く受け止め、今シーズンのみならず、ここ数年続いている低迷の原因追究に努めます。それはチームだけでなくクラブ全体として改めて見つめ直して参ります。来シーズンはJ2での戦いとなりますが、強い意志のもと変革し、皆様の信頼を取り戻すべく精進いたします。そして必ずや1年でのJ1復帰を果たし、強いエスパルスを復活させます」とシーズン終了後に山室晋也代表取締役社長が記しているように、来年以降は成績はもちろんだが、サポーターの前で強いエスパルスを見せることが求められることになる。