NEWSニュース

戸田和幸選手よりエスパルスサポーターの皆さまへメッセージ

先日、現役引退を発表された戸田和幸選手(シンガポールリーグ ウォーリアーズFC/1996~2002、2004清水所属)より、エスパルスサポーターの皆さまへメッセージが届きましたので、ご紹介いたします。


清水エスパルスサポーターの皆さん、お久しぶりです。

このたび現役引退を決意し、18年間の選手生活に区切りをつけることにしました。
わざわざ報告いらないよという声が聞こえてきそうですが、先日の北嶋のメッセージを読みまして。 二番煎じになってしまいますが、僕もひと言皆さんに引退の挨拶をさせて欲しいとこの形をとらせてもらいました。

18歳でエスパルスに入り、途中海外を挟みましたが、27歳で移籍するまでエスパルスにはお世話になりました。今日まで自分なりに全力でサッカーに打ち込んできましたが、日本一のサッカーどころにあるクラブ・エスパルスでプロとしてのキャリアをスタートし、長い期間在籍できたことがいかに自分にとって幸せであったかを、いま改めて思い知っています。

清水という土地が一体どういうところで、サッカーというものがどれだけ大きな存在か、ということに気が付くのに時間はかかりませんでした。サッカー選手はスターであり皆の憧れ、どこに行っても皆が笑顔で話しかけてくれる、こんなところにはその後、他では出会えませんでした。

日本一のサッカーどころでプロとしてプレーをする、確かに簡単なことではありませんでした。一本パスミスをしてしまえばスタンドから声が出る、2位では喜んでもらえない、清水は日本一のサッカーどころ、日本一じゃなきゃ駄目なのだと。 そのスタンダードの高さ、周りの見る目の厳しさが自分を高めてくれたのは言うまでもありません。

プロとして手本となる素晴らしい先輩たちや、お互いに叱咤激励し合える仲間たちに恵まれ、なんとかして試合に出たくて、チームの勝利に貢献したくて、とにかく必死に練習しました。馴れ合いのない、勝負への強烈な拘りを持つ集団の中で必死に食らい付いて闘いました。
エスパルスで見て感じた集団としてのプロ意識の高さ、クオリティの高さ、競争心、クラブを取り囲む環境の素晴らしさ。これぞまさにプロだと今振り返っても心底思うものです。そんな日本を代表するクラブの一員として、たくさんのタイトルを争い、獲得するチームの一員としてプレーができ、本当に幸せでした。

それから日本平はやはり素晴らしいスタジアムでした。あの独特な緊張感の中で、スタンドから降り注ぐ厳しい目に負けないプレーを、と自分なりにいつも勝負していました。自分だけかも知れませんが、サポーターとの間にも良い意味での緊張感が存在していました。 文句を言われたくない、認めさせたいと、スタンドからの鋭い視線に挑む気持ちでした。おかげで随分強くなれた気がします。

移籍をしてから何度かアウェイの試合で訪れましたが、あの独特の雰囲気が自分には心地良くまた必要だったんだなと痛感しました。現役を退く決意をした今、あの緊張感が懐かしくまた恋しい気持ちでいっぱいです。その緊張感を乗り越え、試合に勝った後の安堵感と充実感、それからスタンドからの歓声は忘れられません。


エスパルスでプレー出来たからこそ僕は変わることができたし、プロとして生きていくための自分を見つけることができました。常勝エスパルスでプレーするということは、それだけ責任が重くまた誇り高いものでした。
反面、この性格もあり皆さんには確かにたくさん迷惑をかけました。言いたいことを言って、やりたいようにやりました。「自分はこう考える」ということを伝えることに対して躊躇しませんでした。

エスパルスがとにかく好きで、エスパルスは日本一じゃなきゃならない、そのために必要だと思う事はなんでもしてみました。相手が監督だろうがフロントだろうが、気にせずぶつかりました。サポーターの皆さんに対しても。
それがプロだと信じる自分がいて、自分が正しいからではなく、勝つために、強くなるために、勝ち続けるために、自分なりに必死に考えてすることなら全て受け取ってもらえる、と信じていました。

プロとして勝負に勝つ、勝って皆で喜び合う、この方向に向かってとにかく全力で走る、エスパルスは常に強くなければならないのだから。妥協は一切許されない。
というのが当時の僕の勝手な論理です。

今も変わらずプロとして同じ考えを持ち続けていますが、やはり想いを伝え形にするためには、思慮深さや相手を思いやる気持ちが足りなかったと素直に反省をしています。相手があって自分がいる。この関係はイーブンです。突っ走るにも限度が必要です。この場を借りてお詫びします。


エスパルスを離れてからも10年近く現役を続けました。この時間はまた、自分にとって非常に大切で意義のあるものでした。プロとして、人間として、見聞を広げることができ、行く先々で学ぶことが山ほどありました。

これからの人生はまた新しいチャレンジの始まりです。今日までサッカーや人間関係について、たくさん学ばせてもらって来ました。それらにこれから更に磨きをかけて、恩返しできる人生にしたいと考えています。
これからは行く先々で皆さんに会う機会が出てくるかもしれません。見かけたらぜひ声をかけていただけたら嬉しいです。どんな奴になったか見てみてください。皆さんにご迷惑をかけたことで学んだたくさんのことは、今の自分にはきちんと教訓として生かされていると思っています。


僕はオレンジのジャージが好きでした。
オレンジを身に纏うと強くなれました。

エスパルスはビッグクラブ、たくさんのタイトルを、アジアのタイトルをも獲った誰もが憧れたクラブ。いつまでも子供たちの憧れで、地元の人たちにとって自慢の、そして世界を目指すJのビッグクラブとして、その存在を示し続けて欲しいと切に願っています。 


 一方的な文章になりましたが、引退を決めたこのタイミングで皆さんにはきちんと報告をさせてもらいたく、この場をお借りすることになりました。
僕にとって静岡は第二の故郷です。今日の自分があるのは皆さんのおかげです。どうもありがとうございました。



戸田和幸

2002年 ©︎︎︎S-PULSE

ニュース一覧

あなたにオススメのニュース