2019シーズン 「トップ5」ならず。最終節で残留を決める。
「トップ5を狙う」。昨季は、13年度以来の一桁順位となる8位。今季はさらに上を狙うことになった。そのための態勢は整った。昨季リーグチャンピオンの川崎Fからエウシーニョ、そしてブラジル1部でのプレー経験もあるヘナト アウグスト、ヴァンデルソン、そしてエスパルスアカデミー出身で初めて大学経由でエスパルスに戻ってきた西澤健太、昨季長崎で7得点を挙げていた中村慶太、ユースからは高木和徹以来となるGKでの昇格となった梅田透吾が加わる充実した補強となった。
シーズン開幕戦、広島に乗り込んだエスパルスは、キャンプから準備していきた3バックを披露することになる。30分に北川航也のゴールで先制。最終的にはサロモンソンのボレーシュートで追いつかれてドローも、「開幕戦」、「アウェイ」ということを考えてもドローは悪くない結果だった。ところが、第2節ホーム開幕戦となったG大阪戦。中村の移籍後初ゴールが決まり先制するも、試合は思わぬ方向に進み始める。29分に同点にされてから、後半は大量4失点。準備してきた3バックはズタズタに切り裂かれていた。続く札幌戦では、昨季までの4バックに戻したが、一度狂った歯車は元に戻ることはなく、結果は5失点。交代出場の滝が2試合連続でゴールを決めたことが唯一の救いだった。
3試合で10失点。前線からボールを追いかける昨季のサッカーに立ち戻る作業に入り、第4節神戸戦ではルーカス ポドルスキに先制ゴールを許すも、土壇場の88分に鄭大世のゴールで追いつき開幕戦以来となる勝ち点を獲得。勝利に近づいたように見えたが、第5節・湘南戦、第6節・FC東京戦に連敗。
そんな中で迎えるのは磐田とのダービー。選手たちはプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、鄭大世のゴールが決まるとチームは勢いづき、後半にも北川のゴールで追加点。ロドリゲスに1点を決められはしたが、今季初勝利を挙げた。続くC大阪戦で連勝。これでチームは完全に波に乗った、かと思われた。
第9節・浦和戦では興梠慎三に「平成最後のゴール」を決められるなど0-2。続く鹿島には0-3、さらに川崎Fには0-4と3連敗。10試合を終えてわずか2勝、さらに失点は26失点。降格の足音が聞こえてくる16位。この事態にヨンソン監督が退任し、コーチだった篠田善之氏が監督に就任した。
自信を失いつつあった選手たちに、篠田監督は強い気持ちを選手たちに植え付けて選手個々の能力を引き出した。篠田監督初陣となった第12節大分戦では、ドウグラスの初ゴールなどでドロー。4試合ぶりの勝点を手にすると、翌節の仙台戦では、ドウグラスの2得点などで打ち合いを制して初勝利を挙げる。5試合を3勝2分と負け無しで、最下位から12位まで順位を上げることに成功。一桁順位まではあと4ポイントまで迫った。
第20節FC東京戦を最後に、北川がオーストリアの地に旅立つことに。チームにとっては痛手であることには間違いないが、一方で新しい顔ぶれもエスパルスに加わった。吉本一謙、大久保択生、福森直也、そしてジュニオール ドゥトラが加入。北川がいなくなって最初の試合、第21節・横浜FM戦は吉本がセンターバックに入り、今季2試合目となる完封勝利。続く松本戦もウノゼロ(1-0)と難しい試合をものにして、「北川ロス」を感じさせない戦いで連勝となった。
ただ、良い時が続かないのが今季の特徴だった。第23節・札幌戦、10分にチャナティップに先制ゴールを許すと、ジェイにハットトリックを決められるなど、終わってみればJリーグワーストタイの8点差で敗れてしまった。そこからの切り替えも上手くできなかった。川崎F戦では、先制されドウグラス、ヘナト アウグストのゴールで逆転するも、交代出場の小林悠のゴールで同点に追いつかれた。続く鹿島戦では、ほぼ何もできないまま0-4で敗れてしまった。
再び息を吹き返すきっかけを作ったのは西澤だった。第26節・名古屋戦では先制ゴールと、決勝点となる3点目を決めて4試合ぶりの勝利をもたらすと、チームも活気づいた。第27節湘南戦は、エウシーニョの個人技の高さを見せる連続ゴールが決まり、前半だけで4-0のリード。後半にも、ドウグラスと西澤が決めてクラブ最多タイの6得点で圧勝。守っても5試合ぶりの完封勝利だった。
この勝利で油断したわけではないだろうが、その勢いは続かない。第29節・浦和戦、第30節・広島戦と、ドウグラスが幸先よく先制ゴールを決めるが、そこからの試合運びが上手くいかない。毎回のように終盤に失点を許して勝ち点を取ることができなかった。今季全勝中のダービーでも苦戦。二見宏志のロングスローからオウンゴールで同点に追いついたものの、アダイウトンに決勝ゴールを決められて、天皇杯を含めた公式戦のダービーでは6試合ぶりの敗戦。次の仙台戦にも完敗し、順位もプレーオフ一歩手前となる16位まで再び転落。あと1勝すれば、残留はほぼ確定する状態で、1勝もできないままついに最終節まで来てしまった。
迎えた最終節・鳥栖戦。勝てば残留が決まるが、それ以外の場合は得失点差の関係もあり、残留は他会場の結果次第になる。エスパルスは序盤から二見のロングローを含めたリスタートで相手ゴールに迫る。後半に入ってからも、3試合ぶりの先発となったドゥトラが決定機を作るなど、攻撃のリズムは悪くない。すると68分だった。六平光成のスルーパスを、ドウグラスが右コーナー付近で受ける。ドリブルで中に切り込むと、左足を振り切って放たれたボールは、グッとカーブがかかり逆サイドのネットに突き刺さった。このスーパーゴールを守り抜き、残留を自らの手で勝ち取った。
「終わりよければ全てよし」というわけではない。シーズン当初の目標は「トップ5」。最終的に12位まで順位を上げたとは言え、目標には到底及ばなかった。ただ、この最後のゲームで、選手、スタッフ、そしてサポーターが一緒になって最後まで戦ったという事実は忘れてはいけない。この苦しい経験は、未来のエスパルスにとって必ず糧になるはずだから。