2019シーズン 「トップ5」ならず。最終節で残留を決める。
2019年の12月10日に行われたリブランディング発表にて、2020年シーズンから新しいエンブレムとロゴが使用されることになった。さらに、プロ野球ロッテの社長だった山室晋也社長が就任し、C大阪などで指揮を執り、強化部長も務めた大熊清GMもクラブに加わった。そして、19年にJ1チャンピオンに輝いた横浜FMのヘッドコーチを務めていたピーター クラモフスキー氏を新監督として招聘。クラブの三役が一新されることになった。
選手の顔ぶれも大幅に変わった。ブラジル籍助っ人としてカルリーニョス ジュニオ、ヴァウド、ネト ヴォルピ、タイの英雄ティーラシン デーンダー、名古屋から金井貢史、大宮から奥井諒、大分から後藤優介、FC東京からの期限付き移籍として岡崎慎、高卒新人として鈴木唯人、栗原イブラヒムジュニア、さらにユースから川本梨誉、ノリエガ エリックが昇格。総勢12人がエスパルスに加わりエスパルスの新しいチームを作り上げることになる。
クラモフスキー監督が掲げるサッカーは「速くてアグレッシブで攻撃的なサッカー」。自陣から丁寧にボールをつないで自ら主体的に攻撃の主導権を握る。また、失ってもすぐに奪い返して攻め続ける。これまでとは180度違うサッカーに取り組むことになった。
初戦は、ルヴァンカップ グループステージ第1節川崎F戦。10分にレアンドロ・ダミアンのゴールで先制されるなど苦しい展開となった。前半はさらに1点を追加されて0-2で折り返したが、67分にクラモフスキーサッカーの肝となる左SBにコンバートされた石毛秀樹のゴールで1点返す。だが、終わってみれば、その後3点を追加されて1-5の大敗となってしまった。1週間後に行われたリーグ開幕戦のFC東京戦では、後半開始早々にティーラシンのエスパルスのJ1ホーム通算700得点というメモリアルゴールで先制。それでも「今度こそ!」、という思いは実らず、FC東京の交代策に1-3と逆転負けしてしまった。ただ、エスパルスサポーターは、この1週間の成長に未来を見たはずだった。
次の試合であるルヴァンカップ第2節名古屋戦の前日だった。世界中が新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の事態に襲われ、Jリーグでの全ての公式戦の延期が決定する。チームの全体練習は引き続き行われていたが、これも全国に緊急事態宣言が発出されることになり中断。「ステイホーム」が求められ、選手たちは自主トレーニングを余儀なくされることになった。
リーグが再開したのは7月4日。第2節名古屋戦では、ルーキーの鈴木唯人、GKにはユースから昇格2年目の梅田透吾を抜擢するなど、大胆なメンバー構成で臨んだが、名古屋に1-2の惜敗。再開初戦を落とすと、そこから勝利に見放され、開幕から5連敗。そこからリーグ戦では5戦負け無しと持ち直すが、大会のレギュレーションが変わり4チーム総当りの1発勝負となったルヴァンカップは全敗でグループステージ敗退が決定した。
リーグ戦は第11節横浜FM戦から7連敗、第17節湘南戦で勝利したものの、そこから5連敗と苦しんだ。第23節鳥栖戦、第25節柏戦に引き分けると、クラモフスキー監督が退任、後任は昨年までエスパルスユースを率いており、この年からトップチームのコーチとなっていた平岡宏章監督。「戦う集団」に生まれ変わり、チームの立て直しに成功。初陣となった第26節神戸戦で快勝すると、翌節のC大阪戦にも勝利し、ようやく今季初の連勝を達成。8試合を3勝2分3敗として、最終節を迎える。
最終節を前に、エスパルスは17位。新型コロナの影響でJ2への降格はなくなったが、それでもせめて“自動降格圏”を抜けて、16位まで順位を上げたいところだった。そのための条件は、エスパルスがG大阪に勝利し、かつ湘南が仙台に引き分け以下の結果に終わること。
他力となってしまったが、エスパルスには少なくとも目の前の試合に勝利するしかない。ところが、ここで思わぬ事態。けが人が相次ぎ、先発メンバーには、引退セレモニーを終えていた吉本一謙が入り、FWには「(試合当日の)朝10時すぎに彼に先発を告げた」と指揮官が先発に抜擢したリーグ初先発となる川本梨誉。平岡監督の教え子は、期待に応えて1得点1アシストの大活躍を見せる。守っても、現役最後の試合となる吉本を中心に魂の守備を見せて平岡体制となって初となる完封勝利。2位G大阪を倒して有終の美を飾ることになった。
2021年シーズンのJ1は20チームになり、そのうち4チームが降格になる過酷な1年となる。生き残りのためには守備の改善が急務となるだろう。短いシーズンオフを挟んで、これから先もずっとJ1で戦い続けるための準備を進めることになる。