CLUB クラブ沿革

2021

クラブ創設30周年に何とか希望をつなぐ

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例年以上の注目を集めることになった新体制発表記者会見は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、初めてオンラインのみで行われることになった。これまで東京V、C大阪を率い、両クラブとも各カテゴリーの上位に押し上げたロティーナ監督、イバン パランコヘッドコーチ、トニ ヒル プエルトフィジカルコーチなどコーチ陣が刷新され、さらに選手も大幅に入れ替わった。会場となったクラブハウスに集まった権田修一、指宿洋史、片山瑛一、鈴木義宜、永井堅梧、ディサロ燦シルヴァーノ、中山克広、原輝綺、成岡輝瑠の9人に加え、オンラインでチアゴ サンタナ、ウィリアム マテウスの2人の計11人が参加。大熊清GMが「『上手い清水エスパルス』でなく皆さんが希望している『強い清水エスパルス』を築きたい」と力強く語った。

期限付き移籍からの復帰などを含めると、チームの約半分が入れ替わったことになる。前年は降格の無いシーズンだったが、最下位を何度か経験するなど苦しみ、最終節に勝利して16位。通常であればあったはずの自動降格圏を、ようやく脱出したにすぎない。それだけに、この大きく変わったクラブに期待度は高かった。

コロナ禍の中、順調に鹿児島キャンプ、三保での練習を積み重ね迎えた開幕戦は「常勝軍団」鹿島。先発メンバーには新加入選手6人を加え、これまでの選手と融合させた布陣だった。前半は、この年から取り組んでいる組織的な守備を見せ、さらに日本代表GK権田の好セーブなどもありスコアレスで折り返す。75分に先制点を奪われたが、これが選手たちの目を覚まさせた。その3分後、サンタナが持ち味のゴール前の勝負強さを見せてチーム初&来日初ゴールを挙げて同点に追いつくと、83分には後藤優介の豪快なダイビングヘッドで逆転に成功する。勢いに乗った新生エスパルスは、さらに88分に河井陽介のコーナーキックがオウンゴールを誘発し、ダメ押しの3点目。鮮やかな逆転劇で、華々しくスタートした。

しかしこれ以降、これを超える試合がなかなか見せられなかった。ホーム開幕戦となった第2節福岡戦では、カルリーニョス ジュニオ、中山克広のゴールで2-1のリードを保ったまま90分を経過。だが、後半アディショナルタイムにエミル サロモンソンに痛恨の同点ゴールを決められてしまう。勝ち点3を目前で逃してしまうと、同じような取りこぼしが続き、ホーム初勝利は5月26日の第16節FC東京戦まで待たなければいけなかった。

このFC東京戦は、この年のベストゲームとも呼べる試合だった。リーグ9試合勝利がないどん底の状態で迎えた試合。序盤にサンタナのゴールで先制すると、前半アディショナルタイムにヴァウドのゴールで追加点。後半開始直後にも片山瑛一のゴールで3点リードを奪うと、FC東京の猛攻をかわして初の完封勝利となった。ようやく攻守が揃ったように見えた。

一方ルヴァンカップでは、第2節仙台戦で鈴木唯人のプロ初ゴールで勝利、さらに第5節の同じく仙台戦ではディサロ燦シルヴァーノのエスパルス初ゴールなど4-1で勝利し、グループステージを2勝2分2敗で突破。鹿島とのプレーオフステージに臨むことになった。ホームアンドアウェイで争われる同ステージ、第1戦は試合序盤決められたゴールが決勝点となり0-1と落としてしまうが、アウェイで行われた第2戦、サンタナのゴールで同点に追いつく。それでも、45分にファン アラーノに決められて2戦合計1-2とされると、後半にもゴールを奪われ、プライムステージ進出とはならなかった。

その後、天皇杯2回戦福山C戦に勝利するなど、公式戦6戦無敗とチーム全体として調子を上げてきたように思われたが、ACLの日程などで延期されていた第18節川崎F戦に敗れると、再び勢いがしぼんでしまう。天皇杯でもラウンド16で川崎Fに敗れてしまい、ここで全てのタイトルの可能性が消滅。リーグ第31節福岡戦では、死闘の上で勝利を挙げたが、そこから3連敗。ロティーナ監督が契約解除となり、2年連続で平岡宏章監督が終盤の立て直しをはかることになった。

就任からわずか2日後。準備もままならない中で迎えた札幌戦は、サンタナのゴールで先制するも、その6分後に追いつかれる難しい展開。49分に逆転ゴールを許してしまうと、平岡監督はユース時代からの愛弟子である滝裕太を投入。その滝が、83分に同点ゴールを決めて、首の皮一枚つながった。「清水愛」で再びチームを率いることを決断した平岡監督は、初戦で勝ち点1をつかむと、ワールドカップ予選などの期間を活用して整備を進め、翌広島戦はサンタナのゴールを守り抜いて勝ち点3を手にする。さらに浦和戦は、90分まで0-0という緊張感のある試合だったが、後半アディショナルタイムに中村慶太の劇的ゴールが決まり、シーズン初の連勝を記録。そして、負ければ降格の可能性もあった最終節C大阪戦は、オウンゴールで先制点を与えてしまうというなか、鈴木義のゴールで同点。そして、後半には西澤健太の左足ミドルが豪快に突き刺さり、最後の3試合を3連勝と、追い上げる下位チームを振り切って残留を達成。順位も上げて14位でフィニッシュとなった。

J1に復帰した17年以降、8位だった18年を除くと毎年のように下位に位置している。3年連続シーズン途中の監督交代、そして、最終節で何とかJ1に踏み止まっている状態だ。特に、この年は大型補強などで期待値が高かった分、この順位に納得できないサポーターも多いことだろう。翌シーズンは、2度チームの危機を救った平岡監督がシーズンのスタートから指揮を執る。指揮官の熱い思いを選手たちが感じ、これまで忘れがちになっていた「戦う」という気持ちの部分で、サポーターに応援されるような「強いエスパルス」への変貌が求められる。そして何より30周年となる2022シーズンは、この経験を糧に、逆襲の年にしなければいけない。

公式戦記録

明治安田生命J1リーグ 14位(42勝点 10勝12分16敗 37得点、54失点)
YBCルヴァンカップ プレーオフステージ
天皇杯 全日本サッカー選手権大会 ラウンド16

主な出来事

2月27日 J1リーグ開幕。鹿島を逆転で破り、カシマスタジアムでは9年シーズンぶりの勝利を挙げる。
3月22日 Jエリートリーグがスタート。開幕戦で水戸を1-0で破る。
5月19日 ルヴァンカップグループステージ最終戦、横浜FMに敗れるが、2012年以来のグループステージ突破が決まる。
6月28日 夏の移籍期間に、井林章を完全移籍で獲得。その後、ホナウド、ベンジャミン コロリ、松岡大起、藤本憲明が加入した。
11月3日 アイスタで鳴り物での応援が可能に。
11月4日 ロティーナ監督が退任し、平岡宏章監督が就任。
12月4日 最終節のセレッソ大阪戦、西澤選手の決勝ゴールで勝利を収め残留を決める。

登録選手

No. 名前 name ポジション 出身地
1 大久保 択生 Takuo OKUBO GK 東京都
2 立田 悠悟 Yugo TATSUTA DF 静岡県
3 ホナウド Ronaldo da Silva MF ブラジル
4 原 輝綺 Teruki HARA DF 埼玉県
5 ヴァウド Andrevaldo de Jesus Santos DF ブラジル
6 竹内 涼 Ryo TAKEUCHI MF 静岡県
7 片山 瑛一 Eiichi KATAYAMA DF 埼玉県
9 チアゴ サンタナ Thiago Santos SANTANA FW ブラジル
10 カルリーニョス ジュニオ Carlos Antonio de Souza Junior FW ブラジル
11 中山 克広 Katsuhiro NAKAYAMA MF 神奈川県
13 宮本 航汰 Kota MIYAMOTO MF 静岡県
14 後藤 優介 Yusuke GOTO FW 鹿児島県
16 西澤 健太 Kenta NISHIZAWA MF 静岡県
17 河井 陽介 Yosuke KAWAI MF 静岡県
18 エウシーニョ Elson Ferreira De Souza DF ブラジル
19 ディサロ 燦シルヴァーノ DISARO’ Akira Silvano FW 東京都
20 中村 慶太 Keita NAKAMURA MF 千葉県
21 奥井 諒 Ryo OKUI DF 大阪府
22 ヘナト アウグスト Renato Augusto Santos Junior MF ブラジル
23 鈴木 唯人 Yuito SUZUKI MF 神奈川県
24 藤本 憲明 Noriaki FUJIMOTO FW 大阪府
25 永井 堅梧 Kengo NAGAI GK 埼玉県
26 滝 裕太 Yuta TAKI MF 静岡県
27 指宿 洋史 Hiroshi IBUSUKI FW 千葉県
32 ベンジャミン コロリ Benjamin KOLOLLI MF スイス
34 ノリエガ エリック Noriega Loret de Mola Erick Carlos FW 静岡県
37 権田 修一 Shuichi GONDA GK 東京都
39 山原 怜音 Reon YAMAHARA DF 京都府
50 鈴木 義宜 Yoshinori SUZUKI DF 宮崎県

クラブスローガン

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強いエスパルスを再構築するために、新たな一歩を踏み出した昨シーズン。
コロナ禍という未曾有の困難の中でも、変わる勇気を失うことなく、未来を見据え、クラブ一丸で一歩一歩前に進んできた。
  

2021シーズンはさらなる重圧が待ち受けているが、だからこそ我々は攻めの姿勢を変えるつもりはない。
攻守ともに主導権を握るサッカーを築き上げるため、チームに新しい血を加えた。
それは大きな決意の表れである。
  

突き進む・突破・貫くを意味することば。PENETRATE(ペネトレイト)
このことばを胸に我々の新しい挑戦は始まる。   

目の前にどれほど大きな壁があったとしても、サポーターとクラブが一体となって自力で突き破り、新たなステージへと駆け上がる。