CLUB クラブ沿革

2023

あまりにも残酷な結末。真の強さとは何か

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自力でJ1昇格を掴むチャンスは2度あった。どちらもサポーターの悲願に指先が触れそうなところまで近づいていた。だが、勝ち切るだけの力が足りなかった。

クラブとしては2016年以来、2度目となったJ2リーグへのチャレンジ。前年から主力の多くが残り、J2では飛び抜けた戦力と言われた。ゼ リカルド監督が続投し、戦術的な継続性もあった。
当然開幕ダッシュで昇格争いをリードしていくことを目指していたが、ホームで開幕した水戸戦は0-0のドロー。前シーズンの4-4-2から3-4-2-1に布陣を変えて臨んだが、それが狙い通りに機能せず、後半は4バックに戻し、流れを取り戻したが、90分を通してチャンスを決めきれなかった。
開幕戦で波に乗れなかったエスパルスは、その後も本来の得点力を発揮できないまま5試合連続ドロー。そして6節・群馬戦、7節・甲府戦に連敗したところでゼ リカルド監督が契約解除となり、新任の秋葉忠宏コーチが監督に就任した。

「エスパルスファミリー」という表現でサポーターとの一体感を呼びかけ、熱い気持ちと言葉でチームを引っ張る秋葉新監督の下、初戦の8節・東京V戦は、開始6分で先制されたが、前半アディショナルタイムに北爪健吾のゴールで同点に追いつき、90分にオ・セフンが左CKから渾身のヘッドを叩き込んで逆転。それまで見られなかった土壇場での勝負強さを発揮して、リーグ戦初勝利を掴んだ。
そこからは8戦負けなし(6勝2分)と戦績はV字回復。秋葉監督は、乾貴士をサイドハーフからトップ下に移して自由を与えることで彼本来の攻撃センスを発揮させるなど選手個々の特徴を活かし、「超攻撃的に、超アグレッシブに」という強気の姿勢でチーム本来の力を引き出した。
それによって、10節・山口戦で6-0、14節・いわき戦で9-1、15節・藤枝戦で5-0と得点力も爆発。7節終了時で19位だったところから、15節終了時でプレーオフ圏内の5位まで上がり、得点数(33点)ではダントツの首位に立った。

またリーグ戦と並行して戦ったYBCルヴァンカップでは、初戦の川崎F戦に3-2で勝利する好スタートに成功。秋葉体制になってからは出場機会に飢えた選手やユース選手を積極起用しながら戦って、最終的には2勝2分2敗のBグループ2位に終わり、惜しくもグループステージ突破はならなかった。
6月7日に2回戦からスタートした天皇杯は、1-1で迎えた延長戦で勝ち越し点を奪われてJ3の岐阜に敗れ、初戦敗退に終わっている。

リーグ戦での16節以降は、エスパルスの圧倒的な攻撃力を警戒して守りを固める相手が増え、その攻略に手を焼く中で19節まで1勝3敗と一時的に失速。とくに先制されると苦しい展開になり、シーズンを通して逆転勝ちが2回だけという部分は課題として残った。
そのまま21節・秋田戦まではゴールを量産できない試合が続いたが、23節・長崎戦はアディショナルタイムの北川航也の劇的な勝ち越しゴールによって3-2で勝利。良い流れからの得点も生まれて攻撃のリズムが出始め、続く仙台戦は3-0、大分戦は2-1と3連勝。ゴール前での崩しの質を高めて、得点力を取り戻していった。

27節からは海外に挑戦していた鈴木唯人と原輝綺が復帰し、29節・東京V戦では鈴木唯の技ありゴールによって1-0で勝ち切るなど、28節から4連勝。原が右サイドバックと3バックの右センターバックの両方でハイレベルなプレーを見せたことによって、試合の中で4バックと3バックを臨機応変に使い分けていく戦い方も成熟し、勝ち切る力につながっていった。
31節の首位町田との大一番では、前半に2点先行されたところから3点を奪い返して逆転勝ち。84分の西澤健太の高速クロスをエースのチアゴ・サンタナが頭でニアに突き刺した逆転ゴールのシーンは、アイスタを興奮の渦に巻き込んだ。
そうした好循環の連鎖もあって、対戦が2巡目に入ってからは36節まで負けなし。14戦無敗というクラブ新記録を打ち立て、35節終了時点でついに自動昇格圏の2位に浮上した。

しかし、37節では残留争いの渦中にある藤枝に0-2で完敗。非常にもったいない敗戦で3位に転落。1週間後には、2位・磐田との“静岡三国決戦”ラストマッチを迎えた。
1万9千人近い観客が詰めかけてアイスタが最高の雰囲気となった魂の戦いは、サポーターの想いが乗り移ったかのような41分の乾のゴールで先制し、スタンドの絶大な後押しを受けながら守り切って1-0。絶対に勝たなければいけない戦いに勝ちきって、自力で2位の座を奪い返した。

その後のラスト4試合は、いわきに7-1で大勝したが、18位(当時)の熊本にはホームで今季初の逆転負け。この敗戦も本当に悔やまれるが、ライバルも勝ちきれず2位を保ち、ホーム最終戦では大宮に4-0で快勝。2位を守ったまま、勝てば自動昇格という水戸との最終節を迎えた。
アウェイのケーズデンキスタジアム水戸に約4千人の清水サポーターが応援に駆けつけ、アイスタでのパブリックビューイングにも約3千7百人が詰めかけた運命の一戦。だが、前半は水戸の術中にはまってエスパルスらしさをほとんど発揮できず、後半は持ち直したが、62分にミスから先制点を奪われる苦しい展開に。それでも81分にサンタナの意地の一撃で追いつき、その後も決定機を作り続けたが最後まで勝ち越し点は決めきれず、無念の1-1。磐田と東京Vが勝ったことで順位も4位まで落ち、昇格の望みはプレーオフに持ち越された。

プレーオフの1戦目はアイスタに5位山形を迎え、非常に難しい戦いになったが相手の攻撃をきっちりと押さえきって0-0のドロー。規定によりリーグ戦上位のエスパルスが決勝に進む。 そして国立競技場で開催された東京Vとのプレーオフ決勝には約2万人の清水のサポーターが詰めかけ、スリリングかつ拮抗した熱戦の中で63分にサンタナがPKを決めて先制。その後は押されながらもアディショナルタイムまでリードを守り続けたが、残り3〜4分というところでPKを献上して追いつかれ、1-1で終了。これで3位の東京VにJ1昇格を奪われ、エスパルスの2023年はあまりにも悔しい結末に終わった。

「チャンスを何度も何度も逃した結果がこれ。まだまだ力が足りないんだと思います」と白崎凌兵は試合後に言葉を振り絞った。秋葉監督は「何回負けて泣いてるんだと。これをしっかり心に刻んで、これからのフットボール人生をどう過ごすのか。自分がどうなりたいのか。オフシーズンに一人一人がしっかりと見つめ直して考えたい」と語った。
自分たちが強く変わらなければ望むものは得られない。その現実を突きつけられた1年となった。

公式戦記録

明治安田生命J2リーグ 4位(74勝点 20勝14分18敗 78得点、34失点)
YBCルヴァンカップ グループステージ敗退
天皇杯 全日本サッカー選手権大会 2回戦敗退

主な出来事

2月18日 2016年以来、2度目のJ2リーグで迎える開幕戦。水戸にスコアレスドローでスタート。
3月18日 5節磐田との静岡三国決戦。終了間際に同点ゴールをあげるも2-2の引き分け。開幕から5試合連続のドロー。
4月1日 7節甲府に0-1で敗戦。前節群馬戦の初黒星から連敗を喫する。1年でのJ1昇格を目指すも7節までに積み上げた勝ち点は僅か5。試合の翌々日にはゼ・リカルド監督の契約解除が発表となり、秋葉忠宏コーチが監督に就任。
4月8日 8節東京Vをホームに迎えた秋葉監督の初陣。試合終了間際にコーナーキックからオ・セフンがネットを揺らし、逆転。今シーズン初勝利を掴み取る。
5月13日 15節藤枝に5-0で勝利。秋葉監督就任後の戦績は8戦負けなし(6勝2分)と順位も5位まで昇り詰める。
5月21日 17節アウェイで迎える首位町田との一戦。多くのエスパルスサポーターの後押しを受けるも、終了間際に勝ち越しゴールを許し、敗戦。
7月16日 26節千葉を相手に迎える国立マッチ2023。両チーム得点を奪い合い、2-2の痛み分けに終わるが、シーズン最多47,628人の入場者数を達成。(2023シーズンJ2リーグ最多入場者数)
7月22日 27節栃木戦より、鈴木唯人と原輝綺が海外への期限付き移籍より復帰。
8月19日 31節首位町田との大一番。2点を先行される苦しい展開も、3点を奪い返し逆転勝利。首位との勝ち点差を11に縮める。
9月30日 37節藤枝を相手に0-2の敗戦。15試合振りの黒星は、自動昇格圏の2位から3位に転落する痛恨の敗戦に。
10月7日 38節2位・磐田との静岡三国決戦。約1万9千人が詰めかけた一戦は、前半41分に決めた乾のゴールを守り切り、1-0で勝利。自動昇格圏の2位に再浮上。
11月12日 勝てば自動昇格が確定する中、アウェイ・ケーズデンキスタジアム水戸で行われたリーグ最終戦。約4千人のエスパルスサポーターが駆けつけた運命の一戦は、最後まで勝ち越しゴールを決められず、1-1の引き分け。最終順位を4位で終え、J1昇格プレーオフへ回る。
11月25日 J1昇格プレーオフ準決勝はアイスタに5位・山形を迎える。拮抗した試合は両者ネットを揺らすことなく、0-0で試合終了。リーグ順位のアドバンテージにより決勝に進出。
12月2日 国立競技場で開催された、3位・東京VとのJ1昇格プレーオフ決勝。約2万人のエスパルスサポーターが集結。1点リードで迎える後半ATにPKを与えてしまい、1-1で試合終了。リーグ順位のアドバンテージにより、3位・東京VのJ1昇格が決定。あまりにも悔しい結末。

登録選手

No. 名前 name ポジション 出身地
1 大久保 択生 Takuo OKUBO GK 東京都
2 山原 怜音 Reon YAMAHARA DF 京都府
3 ホナウド Ronaldo da Silva MF ブラジル
4 高橋 祐治 Yuji TAKAHASHI DF 滋賀県
5 北爪 健吾 Kengo KITAZUME DF 群馬県
6 竹内 涼 Ryo TAKEUCHI MF 静岡県
7 神谷 優太 Yuta KAMIYA MF 山形県
8 松岡 大起 Daiki MATSUOKA MF 熊本県
9 チアゴ サンタナ Thiago Santos SANTANA FW ブラジル
10 カルリーニョス ジュニオ Carlos Antonio de Souza Junior FW ブラジル
11 中山 克広 Katsuhiro NAKAYAMA MF 神奈川県
13 宮本 航汰 Kota MIYAMOTO MF 静岡県
14 白崎 凌兵 Ryohei SHIRASAKI MF 東京都
15 岸本 武流 Takeru KISHIMOTO MF 奈良県
16 西澤 健太 Kenta NISHIZAWA MF 静岡県
17 ベンジャミン コロリ Benjamin KOLOLLI MF スイス
18 齊藤 聖七 Sena SAITO FW 神奈川県
20 オ セフン Se-hun OH FW 大韓民国
22 ヘナト アウグスト Renato Augusto Santos Junior MF ブラジル
23 鈴木 唯人 Yuito SUZUKI MF 神奈川県
24 菊地 脩太 Shuta KIKUCHI DF 静岡県
27 監物 拓歩 Takumu KEMMOTSU DF 静岡県
28 吉田 豊 Yutaka YOSHIDA DF 静岡県
29 ディサロ 燦シルヴァーノ Akira Silvano DISARO FW 東京都
31 梅田 透吾 Togo UMEDA GK 静岡県
33 乾 貴士 Takashi INUI MF 滋賀県
34 落合 毅人 Taketo OCHIAI DF 新潟県
37 森重 陽介 Yosuke MORISHIGE FW 神奈川県
38 井林 章 Akira IBAYASHI DF 広島県
40 成岡 輝瑠 Hikaru NARUOKA MF 静岡県
45 北川 航也 Koya KITAGAWA FW 静岡県
46 阿部 諒弥 Ryoya ABE GK 北海道
49 加藤 拓己 Takumi KATO FW 茨城県
50 鈴木 義宜 Yoshinori SUZUKI DF 宮崎県
57 権田 修一 Shuichi GONDA GK 東京都

クラブスローガン

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ひとつの勝利を掴み取ることは容易ではない。
その執念が生み出すチカラ、我々は幾度となく目の当たりにしてきた。
我々が感じていた確かな手応えは、今までのクラブに欠けていた最後のピース。

何度、唇を噛み締め、己と向き合ったのだろうか。
その時間を無駄にしてはならない。
今シーズンのエネルギーに変えていけ、結果で示すしか道はない。

STRONG WILL
もっと強く、自らを奮い立たせろ。
一人ひとりの想いがチカラになる。

強い意志の表れがこのチームの未来だ。