先日、今シーズン限りでの引退を発表された北嶋秀朗選手(ロアッソ熊本／2003～2005清水エスパルス所属)より、エスパルスサポーターの皆さまへメッセージが届いておりますので、ご紹介させていただきます。



「エスパルスに在籍していたのはだいぶ前ですし、一緒にプレーした選手もほとんどいませんし、エスパルスサポーターのみなさんの中に、何人僕のことを覚えている人がいてくれているのかな?と思ったりします。けれど、僕のサッカー人生において、エスパルスでの日々というのは、本当に大きかったんです。今はレイソルのサポーターと選手たちとの絆は強く、団結力がありますが、僕が高校を卒業して最初に過ごした6年は、僕も若くて、サッカーと真摯に向き合っていなかったということもありますが、レイソルのサポーターもチームと共に戦うというより、殺伐とした雰囲気で、距離感がありました。

2003年シーズンにエスパルスへ移籍したときに、初めて僕は選手としてサポーターと共に戦うという姿勢、その素晴らしさを、実感させてもらいました。そして生意気だった僕に、森岡隆三さん、齊藤俊秀さん、伊東輝悦さんといったベテランが、サッカーへの正しい姿勢や取り組みを目の前で見せてくれました。

僕のプロサッカー人生で一度だけ本気で試合に出たくないって思った試合があります。それは眞田雅則さんの最後の試合でした。サッカー人生の中で、試合に出たくないと思ったのは後にも先にもあの試合一度きりです。互いにベンチスタートで、2人の交代枠を使っていて、1-3のビハインドの中で残り1枠になったとき、ホームで最終節だったし、消化試合だからサポーターは結果なんか気にしていなくて、眞田さんの姿が見たくてスタジアムに来ていました。だから試合の流れに関係なく眞田さんコールや、「出せ！」という声がずっと聞こえていました。

でも眞田さんが僕のところに来て
「キタジ、この試合状況でもし俺を出すと石崎さんが言うなら、俺はキタジを出してくれっていうから、声がかかったら遠慮なく行ってくれ」
って言われたんです。実際に声がかかったのも僕で、その時は「マジか」と思ったし、本当に出たくありませんでした。眞田さんじゃなくて、俺かよって…。あれは酷で辛かった。本当に出たくなかった。今は僕も眞田さんの立場になり、残り試合を戦うにあたり、池谷監督にも言ってあります。
「実力で判断してほしい。けれど、出られないならば、それはそれで相当ムカつきます」って(笑)


今でも日本平スタジアムは日本で1、2位を争うスタジアムだと思っていますし、あの雰囲気は清水という土地ならではだと思います。富士山が見えるようになっている作りもいいと思います！エスパルスも熊本でいうカモンロッソみたいに、勝ちロコやってるんですよね?あれ、いいですね！そして、かつて僕の応援歌だった曲がチームのチャントになってる。あの曲はサポーターの中でいい曲だったんだなと思って嬉しかったです。

柏に戻ってから日本平に戻った時に拍手で迎えてくれたこともすごく嬉しくてテンション上がったのに、前半で交代でした(笑)。しかもその後に逆転…。エスパルスの試合は今もチェックしますが、サポーターのみなさんの声量があがったんじゃないかな?と感じます。相変わらずのサンバは最強です。これからも変わらずにいて欲しいです。


息子に引退を告げたとき長男がバルセロナとサントスとレイソルとロアッソでプレーしたいって言ってくれたのは嬉しいことでした。エスパルスにいた時にはまだ小さくて記憶がないんです。彼なりに記憶している僕の所属してきたチーム全てをあげたつもりだったんだと思います。すみません。エスパルスに在籍していたことは、今後しっかりと伝えていきます。

短い在籍期間でしたが、僕にとってはプロサッカー人生のターニングポイントとなる大切な3年間でした。エスパルスサポーターのみなさんが、本当の意味でサポーターと共に戦うということを僕に教えてくださいました。本当にたくさんのことを気付かせていただきありがとうございました。今後もエスパルスの発展を祈っています」

北嶋秀朗