NEWSニュース

【クローズアップ新加入】佐々木智太郎「挫折にも意味がある…世界を見据える真っ直ぐな生き方」

新加入選手をクローズアップしたロングインタビュー。第6弾は昌平高校から加入したGK佐々木智太郎。インターハイ優勝や年代別代表などの華々しい経歴を持つ一方で、中学時代には長い挫折も経験した。「世界で活躍するGK」を目指すルーキーの生き方とは。


3月22日公開/取材・文=平柳麻衣


最終的には根性で乗り越えるタイプ

――プロ生活が始まって約2カ月経ちました。プロになって一番違いを感じるのはどんな部分ですか。

「昨年、練習参加した時にも感じたことですけど、やっぱり高校とはプレーのスピード感が違いますし、求められるプレーの質も断然高いです。練習参加した当時は権田(修一)さんがいて、ピッチの中でも外でも常に気にかけてくれていたんですけど、今でもよくLINEで連絡をとっていて、いろいろなアドバイスをくださり、本当にありがたく思っています」


――権田選手とはどんな時に連絡をとるのですか。

「例えば、プロになって初めての始動日に『今日から始動します』みたいなことを伝えたりとか。権田さんは『何か分からないことがあったら何でも聞いて』と言ってくださったので、プレーに関する質問もよくしています。僕はプレーに関して上手くいかないことがあった時、基本的には人に聞くよりも自分の中で考えて答えを出すようにするタイプなんですけど、考えが行き詰まってしまった時にアドバイスをもらうのが権田さんであったり、コーチングスタッフの方々です。今でもずっと大切にしているのは、当たり前のことですけど、練習の中の一つひとつのプレーを試合と同じようにやり続けること。そのイメージ力があるかないかで選手としての差がついてくると思います。そういう言葉を権田さんからもらったのは本当にありがたかったですし、これからも忘れずにやっていきたいと思っています」


――始動した頃は体力的にきつそうな顔をしている日も見かけましたが、今はもう慣れてきましたか。

「そうですね。鹿児島キャンプでもかなり練習しましたけどケガなく終えられましたし、だいぶ慣れてきたかなと思います。僕は苦しい時も、最終的には根性で乗り越えるタイプで、絶対に負けたくないという気持ちが支えになっていますね」


――話し方やキャラクターなどから見て、もっと知性で勝負するタイプかと思っていたので意外でした。

「もちろん考えることも大事ですけど、アスリートも“人”なので、どれだけ良いプレーをしていても、そこが備わっていなかったら結果はついてこないと思っています。あとは、以前何かの番組で内田篤人さんが『やっぱり最後は根性だ』と言っていたので、その影響を受けている部分もあるかもしれません」


――そういった情報をインプットするのは好きですか。

「僕は本を結構読むんですけど、人は忘れる生き物で、1日の出来事の中で覚えているのは21パーセントという研究もあるそうです。なので、1回本を読んだだけでは自分の中になかなか落とし込めないので、自分の中に取り入れたい時は、同じ本を何回も読むようにしています」


――好きな本を教えてください。

「一つは『覚悟の磨き方』。吉田松陰という幕末の人について書かれた本で、高校の担任にオススメされて読んだんですけど、自分の原点に帰れる本なので大切にしています。もう一つは、長谷部誠さんの『心を整える』。初めて読んだのは中学生ぐらいの時で、サッカー選手として大事なことが書いてあるので、今でも定期的に読み返しています」


――今一番向き合っている課題は何ですか。

「技術も含めて全部高める必要があるとは思いますけど、まずは身体づくりの部分だと思っています。プロ1年目は、この先のサッカー人生につなげていくための大事な年だと思っているので、今年はまずそこを頑張りたい。エスパルスには素晴らしい先輩が数多くいるので、先輩たちを見ながらいろいろなことを学びつつ、でもそれ以上のことをやらないと先輩たちを追い越していけない立場だとも思っているので、そういう意識で取り組んでいきたいと思っています」


――例えば沖悠哉選手は朝かなり早く来て自主練をしているそうですが、どんなことをしているか見ていますか。

「はい。朝や練習前に筋トレをしているところをよく見ます。本当に尊敬できる部分が多くありますし、良いところはたくさん盗んで、その上を行けるようにやっていきたいです」


人生に起きること全てに意味がある

――サッカーを始めたきっかけは?

「幼少期に少し太っていて、お母さんが何かスポーツをやらせたいということで近所のサッカークラブに連れて行ってもらったのがきっかけです。僕は秋田県生まれで東北の人間なので、大谷翔平選手や佐々木朗希選手もいますし、野球も小さい頃からよく見ていました」


――サッカーを始めた頃からGKだったのですか。

「いや、小学3、4年生頃まではフォワードでした。ある時、ベガルタ仙台vs川崎フロンターレの試合を観に行って、なぜか僕はフロンターレのサポーター側の席で観てたんですけど、その試合で元エスパルスの選手でもある杉山力裕さんが活躍しているのを観てGKをやりたいと思い、そこからですね」


――GKをやってきた中で、挫折経験はありますか。

「中学時代の3年間、試合に出られなかったことだと思います。でも、僕は人生に起きること全てに意味があると思うというか、起こった出来事に対して自分がどういう意味付けができるかが大事だと捉えるようにしています。3年間試合に出られなかったのは本当に苦しかったですけど、その分、自分と向き合う時間が増えたので、今となっては自分にとって必要な時間だったと思っています」


――当時、サッカーをやめたいとは思わなかったですか。

「やめたいと思ったことはないですね。当時もずっと、高校では自分が活躍するんだと思っていましたし、その先に世界で活躍する選手になりたいという目標があるので、そこに対してブレることは全くなかったです」


――その頃から世界を目指していたのですね。

「やるなら一流を目指したいですし、幼い頃からその考えはずっと変わっていないと思います」


――夢や目標以外で、モチベーションになっているものはありますか。

「僕がプレーするにあたって多くの方々が支えてくれたり、僕がプレーする姿を観てくれることですね。先日、『3.11』でしたけど、東日本大震災が起きたのが4歳になる年で、ちょうどサッカーを始めた頃でした。家は内陸のほうなので無事でしたけど、お母さんとデパートで買い物している時に急に揺れて、店中が停電しました。僕は小さかったのであまり覚えていないですけど、お母さんは『死ぬかと思った』と言っていましたし、祖父は岩手の人間で、周りで多くの方が亡くなったということも聞きましたし、幼いながらにすごいことが起こってしまったんだなと感じたのを今でも覚えています。なので、秋田県出身の選手が頑張っている姿を東北の方々に見せることで少しでも力になれたら嬉しく思いますし、それも自分が頑張れる要因になっていると思います」


サッカーの神様が宿題を残してくれた

――昌平高校時代でとくに印象に残っていることは?

「高校1年生の時は1番下のカテゴリーから始まり、自分が苦しいことに対して真正面から向き合うという、アスリートである以前に人として大事なことを学べたのが一番大きかったと思います」


――そこからレギュラーを掴み、プロ内定を得るまで相当な努力を積んできたのではないでしょうか。

「自分では努力とは全く思っていないんですけど、中学の時から昌平高校の下部組織のチームに入っていたので、片道2時間半かけて毎日通っていました。朝は6時頃に家を出て、帰ってくるのは23時〜0時ぐらい。そういう生活をずっと続けてきたのは、今振り返ってみるとよく頑張ってこれたなと思います。とにかく電車に乗る時間が長かったので、その中で勉強したり、読書したりしていましたね」


――技術面ではどんな部分が伸びたと感じていますか。

「中学高校の6年間は同じGKコーチの下でやってきて、セービングのバネの部分だったり、ジャンプ力や瞬発力はすごく鍛えられたと思います」


――元Jリーガーである玉田圭司さん(現名古屋コーチ)の指導も受けましたね。

「監督として指導を受けたのは1年間だけでしたけど、ずっと『サッカーを楽しめ』と言い続けてくれて、自分がミスした時なんかにもすごく良い言葉をくださったり、ありがたかったですね。これからはプロの舞台で勝負できるチャンスがあるので、楽しみにしています」


――インターハイの全国優勝と、高校選手権の県予選敗退、自分にとって印象深いのはどちらですか。

「インターハイの決勝は今までで一番良いプレーができたと思うんですけど、良いシーンほどなかなか頭に残らないもので、インターハイの時のことはもうあまり覚えてないんですよ。逆に選手権は3年間ずっと目標にしてきたものを叶えられなかったのですごく悔しい思い出として残っています。ただ、さっきも言ったように僕は人生で起こること全てに意味があると思っているので、僕だけでなく大学でサッカーを続けていくチームメイトも含め、これからの長い人生への宿題をサッカーの神様が残してくれたんじゃないかというふうに捉えています。僕自身もこれから成長していくにあたって、いつまでも謙虚さを忘れずにいられるような大事な経験になったと思います」


――GKのやりがいはどんなところに感じますか。

「一人だけみんなと違うユニフォームを着て、手が使えるというのは、野球で言えばピッチャーのような、すごくカッコよくて素晴らしいポジションだと思っています。GKが全部止めれば試合に負けることはないですし、唯一、自分の力でチームを勝たせられる存在だと思っているので、そこがGKの醍醐味ですね」


――これから世界を目指していくにあたって、世界で活躍するGKが持ち合わせているものは何だと思いますか。

「まずはシュートストップの技術レベルがすごく高いこと。あと、やっぱり一番大事なのはメンタリティだと思います。たとえミスをしてしまったとしても、ミスをしたと思わせないような振る舞いができるかどうか。海外のGKはとくにこの部分が優れていると思います。タマさんに自分もそっち側の人間だと言っていただいたことがあるので、そこに自信を持ちながらもっともっと成長していきたいと思っています」


――なぜそこまで真面目で、芯が強くいられるのでしょうか。

「自分ではあまり分からないですけど、結果が大事なスポーツをやりつつも、僕はそれ以上に生き方の部分を大切にしたいと思っています。自分の可能性に期待しながら、毎日全力で1秒1秒過ごしていくことで、自分の人生を後から振り返った時に素晴らしいものだったなと思えると思うので、とにかく目の前のことを全力で頑張る。他人のことよりも自分がどうあるべきかを大切にしたいという考えが根本にあるんじゃないかなと思います」


――最後に、エスパルスサポーターの皆さんへ。

「皆さんの応援はすごくありがたく、嬉しいですし、本当に力になっています。ただ、これからも応援されるためにはまず試合に出なければいけないと思っているので、皆さんの前で活躍する姿を見せられるように日々頑張っていきます」


*****************

今シーズンもエスパルスのGK陣は5人体制となっており、高卒ルーキーの佐々木は最年少の立場にある。たった一つのポジションを巡る争いは熾烈を極める一方で、お互いをライバルとして認め合いながら、日々トレーニングに励んでいる。


「サッカーの神様から残された宿題」をプロの世界でどう乗り越え、これからの成長につなげていくのか。ひたむきに、真っ直ぐに突き進む佐々木が、やがて大きな花を咲かせるストーリーを見届けていきたい。


エスパルスアプリでは試合日の舞台裏に迫った人気コンテンツ『THE REAL』のほか、試合前後の監督・選手コメント、選手インタビュー『三保クラブハウス通信』、イベント裏側動画など様々なオリジナルコンテンツを日々配信中です。


ぜひ、ダウンロードしてお楽しみください!

ニュース一覧

あなたにオススメのニュース