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【クローズアップ新加入】中原輝「サッカーIQで上回るしかない…結果に貪欲な“雑草系”の頭脳派アタッカー」

新加入選手をクローズアップしたロングインタビュー。第2弾はサガン鳥栖から期限付き移籍で加入した中原輝。大卒でJ3から這い上がってきた自身のキャリアを「雑草系」と語る。精度の高い左足キックを武器とするアタッカーの思考に迫った。


2月8日公開/取材・文=平柳麻衣


いろいろなクラブ、監督、選手と出会って今の自分がある

――唐突に失礼しますが、人と話したり、取材を受けることは好きですか。

「質問されたことには答えますけど、喋るのがあまり好きではないので、取材もそれほど……。自分のことをあまりガツガツ話す必要はないかなと思ってしまいます」


――プロとして、もっと自分を知ってほしいとは思わないですか。

「それはもちろん思いますけど、自分を作ってまで良いように見せたいとは思わないです。ピッチの外ではありのままの自分でいいかなって。それよりもサッカー選手はピッチで表現することが仕事だと思っているから、ピッチ内で評価されるほうが嬉しいです」


――それだけピッチ内でのプレーや結果には強くこだわってきたと言えますか。

「そうですね。とくに僕の場合はプロキャリアのスタートがJ3だったから、結果さえ出せば上に行ける、他のチームから興味を持ってもらえる、という意識が一番身に染みているところはあると思います。もちろんチームありきのスポーツだから、チームが勝つことが大前提。その上で、自分が生き残っていくために、自分の結果に対しては貪欲にやってきたつもりです」


――プロの世界で生き残っていくために、大事にしていることはありますか。

「良いか悪いか分からないですけど、ブレないところですかね。もちろん戦術であったり、監督が体現したいものは取り入れつつも、自分の特徴を出すことは大事にしてきました。僕が主にプレーするサイドハーフって、本当にいろいろなタイプの選手がいると思うんですよ。外国籍選手がいるチームも多いですし、シンプルに足が速くて縦にガンガン行く選手がいたり、僕みたいに中に入っていろいろなことをやろうとする選手もいたり。チームが志向するサッカーによって、生きるも死ぬも左右される可能性が一番高いポジションだと思っているからこそ、自分が勝負すべきだと思ったら勝負する。


正直、プロの世界で僕はめっちゃ足が速いわけでもないし、めっちゃ身体が強いわけでもなく、身長も低いほう。それでも生きていくためには、サッカーIQの部分で上回っていくしかなくて。自分はどこのポジションを取るべきで、相手が嫌がることは何なのか。ビルドアップから相手を崩すためにはどこでどういうプレーをしたらいいか。そういったことをすごく考えてプレーしています。考えた結果、僕は比較的右サイドでプレーすることが多いですけど、左サイドまで顔を出したり、トップ下の選手が空けたスペースを使ったり、相手に捕まらないポジション取りを考えたり。身体能力があれば、右サイドにずっと張り続けて縦にガンガン行く選手もいると思いますけど、そうではなく、頭を使いながらサッカーをするのが自分の強みの一つかなと思います」


――もう少し自分のスピードを生かしながらプレーするタイプかと思っていました。

「もちろん僕も足が遅いってわけでもないので、スペースがあったり、相手を見て仕掛けられる状況であれば仕掛けますよ。でも、例えば三笘薫選手とかって本当にスピードがあるから、カバーに来る選手がいたとしても突破できるけど、僕が三笘選手ぐらいのスピードを手に入れることは、これから先もたぶんない。だからこそ頭を使うんです。試合の中で『あ、今ここのポジションを取ったらいいだろうな』というのが感覚的に分かるのは、サッカーキャリアにおいて自分の武器になっていると思います」


――考えてプレーすることの必要性を一番感じたのはいつですか。

「一番は熊本で大木武さんと出会った時ですね。大木さんのサッカーってボールも人も動いてすごく流動的だし、技術も求められるので、一番成長したなと感じられる1年でした。それ以降も熊本時代の経験がヒントになりながら、いろいろなクラブを渡り歩いてきた自分だからこそ、プレーの引き出しが増えていっているのかなと思います。例えばセレッソ大阪だったら清武弘嗣選手や香川真司選手だったり、エスパルスだったら(乾)貴士くんだったり、いろいろなクラブ、監督、選手と出会って、良いものを吸収して、今の自分があると思っています」


――様々なスタイルのサッカーに触れてきた結果、どんなサッカーが一番理想的だと思いますか。

「一番の理想はマイボールの時間ができるだけ長いこと。ずっとボールを握っていれば、点を取られないじゃないですか。難しいのは分かっていますけど、ずっとマイボールにしながら相手の出方をうかがって攻めていくのが一番の理想かなと思います」


――山形時代には元エスパルス監督でもあるピーター クラモフスキー氏の指導を受けていますが、同監督も攻撃の時間が長いサッカーを志向していたかと思います。

「そうですね。ピーターもずっと試合で使ってくれましたし、その年もすごく成長できたなと感じました。やっぱり攻撃的なサッカーを好む監督のほうが、自分の良さを上手く出せている実感があります。秋葉監督のサッカーも、加入前からの印象どおりアグレッシブで攻撃的ですね」


――理想とする攻撃的サッカーを実現するために、サイドハーフとしてできることは何だと考えていますか。

「クロスや仕掛けなど、アタッキングゾーンでのゴールに関わるプレーはまず求められるし、何だかんだ一番印象に残る部分だと思います。それに加えて僕が考えるのは、ビルドアップで中盤の選手が困っている時に助けられる立ち位置を取ること。チームによってボールの動かし方が違うので難しいですけど」


――エスパルスがJ1で勝点を積み上げていくために大事にすべきことは何だと思いますか。

「もちろん攻撃的なサッカーをしていくけど、まずは失点しないことが大事だと思います。去年の順位表を見ても、やはり失点が少ないチームのほうが上位にいます。それはJリーグに限らず世界のサッカーを観ても共通すること。攻撃面に関しては、味方との関係性を深めればどんどん良くしていけると思うので、まずは粘り強く戦い、簡単に失点しないことが上位に行くカギになると、去年J1で実際に戦っていて感じました」


――となると、前線の選手にもハードワークが求められますね。

「そうですね。体力は比較的自信があるほうなので、チームの守り方をしっかり覚えれば大丈夫だと思っています」


エスパルスの選手として、国立という大舞台で

――エスパルス側からすると、中原選手と言えば、やはり一昨年のJ1昇格プレーオフ決勝で東京Vの選手だったという印象が強く残っています。

「そうなんですか? ヴェルディには半年しか在籍していなかったですけど、チームを離れる時にファン・サポーターがSNSなどでたくさんメッセージをくれたり、後輩が『ヴェルディに戻ってきてよ』と言ってくれたり、昇格という経験ができたこともあって、すごく濃い時間だったなと思います。自然とヴェルディ愛も湧いてきましたし……でも今は、エスパルスの選手として国立という大舞台でヴェルディとガチンコ勝負できることが楽しみな気持ちが一番大きいです」


――これまで在籍してきたクラブへの愛を口にするとは……意外な一面でした。

「こういうタイプだから、サバサバと渡り歩いてると思われがちなんですよ(笑)。でも、そんなことはないです。これまでのサッカー人生、充実している時ばかりでなく、苦しい時間もありました。そういう時も支えてくれたファン・サポーターやクラブには、在籍期間の長さに関係なく、それぞれ愛着をすごく持っていますよ。エスパルスもまだ加入したばかりですけど、トレーニング中の選手間の雰囲気はすごく良いですし、富士山がいつも見えるのもいいなと思いながら過ごしています」


――まもなくリーグ戦が開幕します。今季の抱負を聞かせてください。

「去年は開幕3日前に大ケガをして半年間リハビリ生活を送ったので、もうそういう思いをしたくないという気持ちが強いです。開幕から出たいですし、サッカーができる幸せを感じながらプレーしたいですね」


――昇格や降格、大ケガも経験した自分のキャリアを言葉で表すとしたら?

「うーん、何だろう……どちらかというと『泥臭い』とか『雑草系』ですかね。高卒でJ1のクラブに入るような選手も多くいる中、僕は大卒でJ3 から這い上がってきたほうなので。でも、スタートはそこだったけど、自分の良さを磨いて、こうやって今季もまたJ1でプレーできるという点では、周りの選手たちに負けているつもりはないし、やっぱり試合に出続けることが選手にとっては一番大事だと思います」


――今、思い描いている今後のキャリアプランは?

「どんなに長くサッカーをやっていても、J1やルヴァンカップ、天皇杯でタイトルを獲った経験のある選手ってそんなに多くはないと思います。もう今年で29歳になりますし、チームの中心を担った上で、タイトルを獲りたいです」


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鹿児島キャンプ最終日に行われた磐田とのトレーニングマッチに出場した中原は、強烈な左足シュートでCKを獲得。精度の高いボールを送り、ドウグラス タンキの先制点をアシストした。「キックの精度はまだまだ良くなる」と言い、チームの得点源として大きな期待が掛かる。


また、クールな表情に隠れたハングリー精神も彼の魅力的な一面。自分の長所を把握し、ピッチで体現することで這い上がってきた自負がある。経験に基づくサッカーIQで周囲との連携を深めれば、秋葉サッカーの攻撃に新たなアクセントをもたらしてくれるだろう。


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