新加入選手をクローズアップしたロングインタビュー。第3弾は大津高校から加入した嶋本悠大。180センチの長身ボランチで、大津高では10番を背負ってチームを高校年代日本一に導いた。プロ生活が幕を開けた今、日々どんなことを感じながらトレーニングに励んでいるのか。
2月9日公開/取材・文=平柳麻衣
自信がついたことで考え方もかなり変わった
――プロサッカー選手を目指すようになったのはいつからですか。
「小学1年生でサッカーを始めたときからずっとです。もともとは野球をやろうとしていたんですけど、友達がサッカーをしてみないかと誘ってきて、練習参加に行ったのがきっかけです。初めて遊びではないサッカーをやって、一生懸命ボールを追いかけたり、点を決めるのが楽しくて。小学生の頃はFWをやっていました」
――当時あこがれていた選手はいますか。
「本田圭佑選手や香川真司選手とか、当時の日本代表で活躍していた選手たちですね。とくに本田選手はミランで10番をつけたりして、とにかく上手いという印象でした。当時、自分が背番号を4番にしたのも本田選手の影響からです」
――当時はどんな努力をしていましたか。
「小さい頃はあまり努力と言えるようなことをした覚えがありません。ただひたすらボールを蹴っていただけ。YouTubeでリフティングとかのスーパープレー集を見て、それを真似してやってみたりとか」
――FWから始まって、現在の本職であるボランチに至るまでの経緯は?
「中学時代は人がいなかったこともあって、ずっとサイドバックをやったりしていました。でも、対人があまり得意ではなくて、どちらかと言えばずっと内側に入って偽サイドバックのような形でした。得意なポジションとは言えなかったですけど、現代サッカーはサイドバックが大事だと聞いて、一生懸命やっていましたね。ただ、もっと前目でプレーしたいという気持ちはずっと持っていて、高校に入った時に監督と自分の意見が一致して、それからボランチをやるようになりました」
――ボランチのやりがいは何だと思いますか。
「相手と自分たちのボランチ同士がラインを越える、越えさせないのやり合いだと思っているので、そこのエリアで相手に思いどおりやらせないことにはこだわっています。あとは余裕が出てきたら、観客がうわーって沸くようなプレーを見せること。高校1年の時は、1年間で身長がすごく伸びて、ボールと足の感覚が全然合わなくなってしまったことでほぼ1年を棒に振ってしまったんですけど、身体の変化に慣れて思うようにボールを扱えるようになってからは、ボランチの楽しさをすごく感じるようになりました」
――ボランチとしてお手本にしている選手はいますか。
「(ジュード)ベリンガムは守備と攻撃どっちもできて、個人でも点を取ることができるので、自分の理想のボランチですね。やっぱり自分で点を取りたいです」
――自分ではどんな人間性を持っていると思っていますか。
「プロサッカー選手になりたいという夢はありながらも、元々はあまり欲がなく、大学進学を考えていました。でも、高校2年からスタメンで出るようになってだんだん自信がついてきて、サッカーがすごく楽しくて、もっと上を目指したいと思うようになりました。3年生の途中からは監督やコーチたちも大学ではなくプロに行くべきだと言ってくれ、Jクラブの練習参加に行くようになりました。今でこそ『自分が点を取りたい』とか『試合に出たい』と強く思いますけど、以前の自分だったら、周りの選手にやってほしいと思うばかりで……自信がついたことで、考え方もかなり変わったなと思います」
――エスパルスの練習に参加した際にはどんなことを意識しましたか。
「ある程度の評価があって練習参加に呼んでもらえていると思っていたので、あとは自分の特徴を出すだけだと思いました。反町(康治)さんは高円宮杯U-18プレミアリーグも観に来てくれていたので、そこも含めて評価してもらえたのかなと思います」
――練習参加した際に印象に残っていることは?
「練習後にクラブハウスの食堂で(西原)源樹とご飯を食べていた時、たまたま近くの席に(乾)貴士くんが来て、いろいろな話をしてくれたんです。すごく優しかったですし、やっぱり一番年上の人がああやって接してくれたことでリラックスできて、すごく良い時間だったなと思います。貴士くんだけでなくエスパルスは優しい先輩ばかりです」
本気でスタメンを狙っていく
――高校時代で一番印象的な試合は?
「やっぱりプレミアリーグファイナルですね。ただ、そこで日本一になれたことで、慢心ではないですけど、その後の高校選手権は『日本一を獲ろう』ではなく、『もう1冠獲れたらいいじゃん』ぐらいの気持ちになってしまったところが少しあったのかなと思います。大津は公立高校で、中学でそういう経験をしたことがない選手が多くて、プレッシャーに慣れていなかったところもあったのかなと。リーグ戦だったら毎試合リラックスしてできたんですけど、選手権は一発勝負ですし、みんな硬くなってしまっていたかなと思います」
――個人としても「プロ内定選手」として見られるプレッシャーを受けながらの戦いだったかと思います。
「選手権の時はもう大丈夫でしたけど、内定が発表されてから1、2カ月ぐらいはずっとプレッシャーを感じていましたね。『期待に応えなきゃ』と思ったら何もできなくなるタイプなので、なるべく気にしないように、ミスしてもいいからとにかく普段どおり自分のプレーをしようと必死でした」
――プロ生活が始まった今のほうが、ルーキーとしてのびのびプレーできているところはありますか。
「今は、他のボランチの選手たちをどんどん越えていきたいという気持ちが強いです。例えば(宇野)禅斗くんだったら守備とか、エスパルスの選手は本当にみんな上手いから、少しでも頭を休めてしまったらすぐ食われてしまうので、とにかく頭を動かすことを意識しています。昨年、U-19日本代表候補に入った時はピッチ内でもどんどん声を出せていたので、エスパルスでも早く慣れていきたいです」
――どういった部分で違いを出していきたいと考えていますか。
「自分は身長もありますし、陸上一家で育ったので、体力には自信があります。試合終盤までしっかり走れるところと、守備もやりつつ点が取れるところが自分の武器だと思っているので、どんどん攻撃参加にいきたいですし、技術を生かしながら攻撃面で違いを作っていきたいです」
――ここまでの練習ではどんなことを感じていますか。
「今はセンターバックやサイドハーフなど、いろいろなポジションをやらせてもらっています。それぞれのポジションを理解することがボランチでのプレーにもつながってくると秋葉監督も言ってくれていますし、日々勉強だと思いながらやっているところです。例えばセンターバックだったら、『ボランチがここに居てくれたらありがたいな』というのもよく分かりますし、ボランチに入った時のこともイメージしながらプレーできていると思います。あとはやっぱりプロはプレスのスピードが全然違って、高校だったらパスを受けられていたようなシーンでも食われてしまうことがあるので、そういった部分にも早く慣れていきたいです。練習生の時とは違ってもうプロですし、本気でスタメンを狙っていく気持ちで毎日練習しています」
――今後の目標を聞かせてください。
「まずはエスパルスでスタメンを取って、点を決めたりアシストをすること。1年目からJ1で飛躍したいです。将来的には海外に行きたいですけど、その前にエスパルスで愛される存在になりたいなと思っています」
――「愛される存在」とは?
「(吉田)豊くんみたいな感じ……? でも自分がああなるのは無理なので(笑)、自分がボールを持ったらワクワクさせられるような選手。もちろんミスなしでプレーできたら一番良いですけど、まだ新人ですし、ミスを恐れずどんどんチャレンジしていきたいと思います」
――今季のエスパルスのチーム目標は「J1で10位以内」と提示されていますが、プレミアリーグ優勝を経験した身として、「日本一」はどんな景色ですか。
「日本一を獲った時は、あっという間というか、気づいたら日本一になっていたような感覚でした。とにかく毎週の試合が楽しみで仕方なくて、目の前にある試合を大事に戦っていったら、いつの間にかファイナルへの出場権を得ていて。過去の試合のことは『そういえば、そんな試合もあったね』とあまり覚えていられないぐらい、次の試合のことしか考えていませんでした。なので、エスパルスでも目の前にある試合を大事にすることを続けていきたいと思います」
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鹿児島キャンプの途中から全体練習に本格合流した嶋本。練習の中でも強烈なシュートでネットを揺らすなど、持ち味の攻撃面を堂々と発揮している。
経験を自信に変えて成長を遂げてきたこれまでのように、プロの世界でも目の前の試合、目の前の競争と向き合いながら、大きな夢に向かって努力を続けていくだろう。
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