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【STORY】住吉ジェラニレショーン「覚悟の完全移籍。自分に厳しく高みを見据えて」

2025シーズン開幕直前特集!今回は住吉ジェラニレショーン選手の【STORY】をお届けします。


2月11日公開/取材・文=平柳麻衣


「ジェラ ジェラ ジェラ ジェラ ゴール」


2024年10月27日。アウェイ栃木の地でスタンドを埋め尽くしたオレンジのサポーターによる、この日のヒーローを称える誇らしげな歌声が場内に響き渡った。


自動昇格が懸かった栃木戦で、住吉ジェラニレショーンは値千金の決勝ゴールを決めた。この一戦に限らず、住吉はリーグ戦31試合出場4得点とシーズンをとおしての活躍が認められ、J2ベストイレブンに選出された。しかし、完全移籍に際したリリース文で以下のように想いを綴っている。


“清水エスパルスに関わる全ての皆様、僕をJ1 に連れてきてくれて本当にありがとうございます。これからは僕が皆様に恩返しをする番です”


「あくまでも自分はエスパルスに関わる一人であって、自分がJ1に連れて行っただなんて思っていません。サポーター、フロント、ボランティアの方々など、みんながいなかったらJ1に行くことができなかったと思う。自分はエスパルスに関わる何万人の中の一人だから、“連れて行ってもらった”と表現しました」


自分がどれだけやれるのかというワクワク感のほうが大きい

2月16日、国立競技場での東京V戦からエスパルスのJ1での戦いが再び幕を開ける。住吉自身にとっては2023年以来、2年ぶりのJ1舞台だ。


「やっぱり開幕戦はJ2から上がってきたチームがJ1でどれだけできるのかが試される第一歩。スタートダッシュという意味でも一番大事な試合だと思っています。ただ、水戸から広島に移籍して個人的にJ2からJ1へステップアップした時は、すごく緊張したし、不安もあったけど、広島で過ごした2年半と今の心境は全然違います。今は自分がどれだけやれるのかというワクワク感のほうが大きいです」


昨季は「1年間試合に出続ける」という目標に挑んだ1年でもあった。結果、リーグ戦は8割以上の31試合に出場し、見えてきたものがある。


「夏場のコンディションの調整であったり、試合に向かって行くサイクルの中で連戦中に身体に張り感が出たりとか、自分の身体について『この時は良かった』『この時にケガをした』などを1年をとおして感じながら過ごすことができました。やっぱり身体が資本の仕事であるから、ケガをしないために、コンディションを維持するために何ができるかは季節ごとによっても変わってくるということも分かりました」


「サッカー面においても、シーズン序盤はどのチームもまだ完成されていなくてお互い探り合いで、中盤は課題を改善してより良いチームにしていって、終盤は成熟したチーム同士の戦いになる。個人としても1年をとおして戦っていく中で自分に足りないものが見えてきたり、改善するために取り組んで日を追うごとに良くなっていく実感を得られたり、いろいろなことが分かったシーズンだったのかなと思います」


とくに昨季は自身の課題であった「考えてサッカーをすること」に取り組み続けた1年だった。


「自分をより良くしていきたいから、自分からスタッフに頼んで、週に1回以上は分析担当のスタッフやコーチ、監督と試合のフィードバックをする時間を設けてもらいました。もともとあまりサッカーの試合を観るほうではなかった分、最初は分からないことが多かったし、自分で感じていたこととスタッフやコーチが映像で示しながら伝えてくれることには違う部分もありました。スタッフに指摘されたことに関しては、それがまた別の試合でできなかった時に自分でも『今のポジショニングは悪かったな』とか『もう少し内側に寄ったほうが良かったな』とスタッフと同じイメージを持つことができるようになってきたんですけど、課題はどんどん出てくるので、自分では気付けなかったところをどんどん指摘してもらい、課題改善に向けて積極的に取り組んでいます」


ピッチに立って勝利に貢献することが最大の喜び

昨季は期限付き移籍での加入だったが、今季から完全移籍することを決めた。その決断に至るまでに、迷いがなかったと言えば嘘になる。


「……正直、悩みました。近年の広島の成績を見た時に、リーグ戦で優勝争いをしたり、カップ戦でタイトルを獲ったり、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)にも出場していて、客観的に見て国内や世界のタイトルを狙うには、広島のほうが近いと思います。


でもやっぱり去年自分がピッチに立って、優勝して昇格した。その感覚というのは広島時代には味わえなかったことです。サッカー選手である以上、ピッチに立って勝利に貢献する、チームの目標を達成するということが最大の喜びだというのを味わえたのはエスパルスなので、それをもう一つ上のカテゴリーでも味わいたいと思ったのが、完全移籍を決めた大きな理由です。


あとはやっぱりサポーターの存在というのも大きくて、良い時も悪い時も支えてくれましたし、シーズンオフの間は街を歩いていてもSNSでも『エスパルスに残ってね』というメッセージを多々いただきました。それもやっぱり試合に出ているからこそ、そういった嬉しい言葉がたくさん飛んできたと思っているので、それもエスパルスに残ることを決めた理由の一つになりましたね」


そして今季、住吉は新たな重責を担うこととなった。2月4日、副キャプテンへの就任が発表された。秋葉忠宏監督は住吉を選出した理由を次のように明かした。


「2つの意味を込めて選びました。まずは経験を積み、すごく成長したこと。いろいろな選手と触れ合ってきた中でDFとしてプレーの幅も広がり、いよいよ“本物”になりつつあるなと期待を持っています。もう一つは、『緩くなるなよ』というメッセージを込めて。キャプテン・副キャプテンを決めるにあたって、スタッフやベテランの選手たちの意見を聞いたところ、満場一致でしたから、今までどおり自分に厳しく、他人に優しくやっていってくれればと思います」


秋葉監督から副キャプテン就任を打診された住吉は、迷いなく引き受けたという。


「副キャプテンやキャプテンといった役職はなかなか経験できるものではないですし、責任や覚悟を持ってやってほしいという意味で選んでもらったのも感じ取りました。プロサッカー選手の寿命は長くないですし、できるうちにやってみたい。やったことでまた気づくこともいろいろあるだろうと思い、引き受けることにしました。


キャプテンは大学時代にもやったことがありますけど、自分があまりそういうキャラらしくないというのも分かっています。自分らしくキャプテンをサポートしつつも、自分もまだまだサポートを受ける側だと思っているので、足りないものを他のみんなに指摘してもらいながら、お互いに成長していければいいと思います」



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自分に厳しく――。秋葉監督がそう期待を寄せるように、住吉は慢心なくサッカーと向き合い続けている。


「過去を振り返ったときに、『この試合、最高だったな』と思える試合が自分の中ではないんです。もちろんDFなので無失点に抑えられたら嬉しいですけど、自分のミスが1つ、2つでもあったら、自分の中では100点ではないから。失点に関しても、チームとしてどうしていれば……というよりは、もっと自分がこうしていれば防げたのにって考えるタイプなので」


では、住吉がプロサッカー選手としてのやりがいを感じるときとは?


「ピンチを防いだとか、良い形でボールが取れたりして、コアな方に『あのプレー良かったよね』と言ってもらえたら、それは嬉しいですけど、それはその瞬間だけしかないし、それが結果に直結するわけではないので……。ディフェンスとはかけ離れますけど、やっぱり自分の感情が爆発するのは点を取った時。去年だったらアウェイ甲府戦やアウェイ栃木戦のような、チームの勝利につながる点を取れたときはものすごく嬉しいです。だからこそ今季も、去年達成できなかった『年間5得点』という目標にもう一度チャレンジしたいと思っています」


もちろんセンターバックとして守備には強いこだわりを持ちながら、得点でもチームに貢献したいと思っている。すべての物事を自分に矢印を向けながら考える、住吉らしい答えだった。


「狙って取れるものではないですけど、ベストイレブンをJ1でも取れるような結果を残したいです。チームの順位が上がれば必然的に入れる可能性は上がると思うので、個人的には3位以内が目標。そして今季も80パーセント以上の試合に出場すること。対人の強さやスピードなど、自分らしさを出しながら戦っていきます」


エスパルスでより高みを目指すことに、意味がある――。強い覚悟で今季もオレンジのユニフォームを身に纏うと決めた「66番」が、ピッチで攻守に躍動する。

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