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【STORY】山原怜音「攻撃的サイドバックとして、J1でも自分らしく」

2025シーズン開幕直前特集!今回は山原怜音選手の【STORY】をお届けします。


2月13日公開/取材・文=平柳麻衣


始まりは、山原怜音の右足からだった。昨季の開幕アウェイ熊本戦。1点ビハインドの状況に追い込まれたエスパルスだったが、60分、長い距離を走ってペナルティエリア内でボールを受けた山原が、相手DFをかわして右足を振り抜いた。狙いすましたシュートは鮮やかにゴールネットを揺らし、これがエスパルスにとっての2024シーズンファーストゴールとなった。


「前年昇格できなかった流れから、今季こそは圧倒的な力をチームとして見せた上で昇格したいと意気込んでいた中で、先制されてダメージも多少はあったと思うんですけど、でも同点に追いつき、逆転できた。前年までとは違う、逆境を乗り越える力があるというところを開幕戦から見せられたのは、シーズンの良いスタートダッシュになったという印象があります」


どんなときも最大限の準備を

2024シーズン、山原はリーグ戦34試合に出場して3得点6アシストを記録。「年間をとおして1試合のパフォーマンスに大きな波なく戦えた感覚はある」と手応えを口にした。その秘訣としては「悩まないようにしている」ことが挙げられるという。


「悩まないというか、1試合1試合の出来に一喜一憂しない。僕は落ち込みだしたら止まらないんです。自分の性格の良くないところは自分自身が散々理解しているし、『調子が良かったな』という日を振り返ってみると、何も考えずにプレーした日。だったらもう、最低限の試合の反省はしつつ、次の試合に向けた練習が始まったらとにかく頭をクリアにしようと。そのスタンスを続けてみて、良い感覚を少し掴めた気がします。


自分にできることって1日単位では大きく変わらないもので、長い時間をかけて積み上げていくものだと思うんですよね。例えばですけど、国立開催だとか勝てば昇格や優勝が決まるからと言って特別に意気込んだとしても、急に何かができるようになるわけではないし、むしろ余計な意識が強ければ強いほど上手くいかない。どんなときも今の自分にできる最大限の準備をして、目の前の1試合だけに集中する。このメンタリティはJ1に上がった後にも生かしていけると思います」


だから、今季の開幕カードが国立競技場での東京V戦と発表されても、「確かに一昨年のプレーオフと同じ場所で同じ相手という背景はありますけど、リーグ戦の第1節。J2での2年間や、僕がプロに入ってからの3年間で積み上げてきた今の自分の力をJ1相手にぶつけることだけに集中して、今、準備をしているという段階です」と、昨季自信を掴んだスタンスで臨もうとしている。

自分の想いをチームメイトに託して

2024年10月27日。栃木に1−0で勝利したエスパルスは、J1自動昇格を決めた。しかし、山原はその前の山形戦から欠場が続き、栃木にはメンバー外選手として訪れていた。チームメイトたちと喜びを分かち合う中、不意に西原源樹が話しかけてきた。


「怜音くんや(高橋)祐治くん(栃木戦を欠場)が正直、一番悔しいですよね」(西原)


実際、山形戦を迎える前までの山原の胸中は複雑だったという。


「勝てば昇格というのが見えてきたシーズン終盤になって、山形戦の前ぐらいから少しプレーできない足の状態になってしまって、昇格が決まる瞬間のために1年間、もっと言えば加入してからの3年間頑張ってきたのに、何で今なんだよって。どれだけそれ以前の試合に出たと言っても、昇格が決まるときに試合に出られないって、やっぱり悔しいですよ。


でも、ケガでの離脱期間が長かった2023年にしみじみ感じましたけど、余程のことでない限り大体のケガは自分の責任以外の何ものでもないと思うんです。自分の力不足や甘さ。こうなったのも全部自分のせい。


それにファン・サポーターのことを考えたら、僕が出てる、出てないに関係なく、やっぱりチームがJ1に戻ることをずっと待ち望んできたはずだし、逆に僕が試合に出ている間に悔しい想いをたくさんしながらも歯を食いしばって毎日努力してきたチームメイトもいると思う。そう考えたら、必ず勝ってほしいと自分の想いをチームメイトに託すことができましたし、昇格が決まった時は心から喜ぶことができました」


西原に対しては「こういう経験も自分のためになるし、これを生かすことが大事なんだよってカッコつけて言っておきました(笑)」。そして「優勝の瞬間こそは絶対にピッチに立つ」と固く誓った山原は、翌節のいわき戦に途中出場し、宣言どおりピッチで優勝決定の笛の音を聞いた。


「シーズンをとおしたら34試合に出られましたけど、やっぱり僕は全試合出たい。自分のコンディションの問題だったり、ケガに泣いて出られないのは本当に悔しいので、そこは今後の課題として引き続き取り組んでいきたいと思います。それも日々の積み重ね。『今日はこれぐらいでの準備でいいか』といった油断や隙が、長い目で見たときに身体に影響すると思っているので、そういったことをできるだけなくしていきたいです」


人生で一番と言ってもいい

チームにとっても山原にとっても、3シーズンぶりのJ1での戦いが間もなく幕を開ける。


「3年前にJ1にいた時とは別の感覚ですね、あの時できていたことが簡単にできると思っていないし、まぁ当時の自分がすごく活躍できていたとも思っていないんですけど、今季は今季で新しい自分。この2年間で広がったプレーの幅であったりチームとしてやるべきことがあるので、それを発揮したらどうなるのか楽しみな気持ちがあります」


チームの志向するスタイルや、一緒にピッチに立つ選手のタイプによって、山原のプレーにも変化が生まれてきた。ただ、強みに関しては「変わっていない」と自負する。


「やっぱり自分の特徴は攻撃的であること。J1だからといって守備的なサイドバックになるつもりはないですし、どんどん攻撃的に、常にチャンスメイクをする。そこはJ1でも見てほしいと思っています」


昨季の中で印象的なプレーとして、第4節大分戦でのゴールシーンを挙げた。1点リードで試合終盤に差し掛かった中、やや押し込まれて苦しい時間帯に山原が自陣からドリブルで持ち運び、一人でシュートまで完結させたシーンだ。


「個人的には人生で一番と言ってもいいぐらいのゴールですね。あの瞬間は自分の中でもいろいろ考えて、持っている技術と判断、すべてを出せた。サイドバックであのプレーができるのがやっぱり自分の一番の特徴なので、印象に残っています」

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筑波大在学中のJFA・Jリーグ特別指定選手期間も含めれば、エスパルスでプレーして5年目になる。昨季に引き続き、今季も副キャプテンの一人に選出された。


「この役割を任された中には、自分のピッチ内外でのチームへの関わり方だったり、選手への関わり方を少なからず評価してもらって選んでもらっていると思うので、まずそこを変えずに、今の自分のままでちゃんとやり続けることがチームにとってはプラスだと思っています。プラスアルファでチーム内の立ち位置的には中堅ぐらいだと思うので、特に下の世代のみんなを吸い上げるというか、高い基準に持っていかせるための役割をもっと意識して担っていきたいです。


アカデミー出身の選手を除けば、僕もかなり長い年数このエンブレムをつけて戦っていると思います。僕も含めてそういった人たちがクラブの価値を示していかないといけないし、このクラブが本来、Jリーグ誕生の時からどこにいて、どこを目指さないといけないのかを周りよりも理解して、そのためにやっていかないといけないという責任感はあるので、それは強く意識しないと、と思っています」


プレーや人柄で多くのファン・サポーターを魅了し、愛されている山原。そんな彼にとってエスパルスとは――。


「学生の頃は自分のサッカー人生だけを考えてやってきた部分が大きくて、もちろん今も自分の人生をどうしていくかは常に考えていますけど、それ以上に一緒に戦う人たちのことが頭に浮かびます。背負う想いの数や強さが、学生とプロでは全然違うから。しかもエスパルスは国立でのホームゲームが満員になったりしますし、地域の方々や静岡全体も含めれば、もっと多くの人たちの想いを背負って戦っているというのを実感しているので、みんなに良い思いをしてもらいたいと思いながらやっているところはあります。


これから先、いつか自分がサッカー選手を引退したときに、きっと一番思い入れのあるクラブになる。5年もこのエンブレムをつけていると、自分の中でエスパルスはもうそういう位置づけになってきていると感じているので。今季もまた、皆さんと良い思い出をつくりたいですね」

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