2025シーズン開幕直前特集!今回は宮本航汰選手の【STORY】をお届けします。
2月14日公開/取材・文=平柳麻衣
昨夏のことだ。夏の中断期間を終え、残りのリーグ戦に向けて勢いを加速させていこうというタイミングで抱負を聞くと、宮本航汰が次のように語ったのが印象的だった。
「やっぱりまずは試合に勝ちたいし、昇格、優勝したい。ただ、それがあともう14試合で終わってしまうのか、と。このメンバーで戦える残りの試合、一つでも多く勝って、少しでも早く昇格、優勝を決めたいですね」
どのチームも移籍や新加入、引退により毎年のように選手が入れ替わる。今年で11年目に入ったプロキャリアの中で、他クラブへの期限付き移籍を4シーズン経験している宮本だからこそ、エスパルスで過ごす日々、仲間と切磋琢磨する1日1日を大切にしてきた。そして――。
「もし今季つけなかったら、自分がつけないまま終わってしまう可能性もあるかもしれないと思って」
いよいよ念願であった「背番号6」をつける時が来た。
6番とともに成長していけたら
「もともとユース時代から6番をつけていて、トップでもつけるというのがプロになった時からの目標でした。自分がトップ昇格した年には杉山浩太さんが、期限付き移籍から戻ってきた時には竹内(涼)くんがつけていて。竹内くんが岡山へ移籍する時に『どう?』とは言われたんですけど、13番も好きだったので、悩んだ結果、6番は置いておきましょう、と。でも、つけないまま終わる後悔はしたくないと思ったので、今季からつけることにしました」
背番号を変えるにあたって、オフシーズンに竹内と話をすると、「プレッシャーに感じることはないから、楽しんで」と背中を押してもらったという。
「(北川)航也にも『変えようと思ってる』と言ったら『良いんじゃない?』と言ってもらったり、(乾)貴士くんにも『背番号を変えて頑張ります』と報告しましたし、最後に(西澤)健太にも『変えるよ』と伝えて、『もう少し一緒にやりたかったね』なんて話もしました」
もちろんエスパルスの6番に紡がれてきた歴史は理解している。ただ今は「本当に夢だったので、早く着てピッチに立つ姿を見せたいですし、活躍することでみんなに認めてもらえるように頑張りたい。僕も6番とともに成長していけたら」と、新たな番号を背負った自分を披露する日を待ち焦がれている。
目に見える結果をもっと
宮本は昨季、エスパルスでのキャリアハイとなるリーグ戦35試合に出場し、チームの中軸として昇格に貢献した一人だ。
「1年をとおして試合に絡めたことは非常に良かったですし、前に行く姿勢であったりリスク管理の部分は、継続的にやれているとは思っているので、それがJ1でどのくらいできるのか。1試合1試合成長したいとか、試合に出たいという気持ちでずっとやって来た結果がJ1昇格だったので、また新たな挑戦として楽しみではあります。ただ、もっと試合数も試合時間も出られたと思っているし、決めるべきところで決めきれなかったり、チームとしても勝ちきれなかったり、まだまだ課題はある。より厳しいステージになりますけど、その中でも目に見える結果を出していきたいと思っています」
昨季はリーグ戦で2得点を挙げ、それ以外にも積極的にペナルティエリア内に侵入してフィニッシュに関わるプレーが増えたように映った。だが、アカデミーの頃から宮本をよく知る北川に言わせてみれば、「全く変わっていない」という。
「変わったとか今までと違うと言われがちですけど、攻守に渡っていろいろなところに顔を出すという航汰の強みはユースの頃から変わってないですよ。ゴール前まで顔を出すのもプロに入った当初からずっとやり続けていることですし。でも、じゃあ航汰の何がすごいの?と言ったら、なかなか試合に出られなかった時期からずっと、変わらずに地道なことをやり続けられるところ。どんなときも変わらず準備できている選手こそ、ピッチに入った時にも同じプレーができると思っています」(北川)
北川に限らずチームメイトから寄せられる信頼が、宮本に自信をもたらしてくれている。
「日々のトレーニングは手を抜かずに100パーセントでやり続けてきたと思っていますけど、正直そういう部分は誰かに言われないと成長や自信をあまり実感できないものなので、周りがそう言ってくれているのだとしたら、日頃の練習の向き合い方が全てかなと思います。
自分のプレーの特徴である、味方をサポートするポジショニングや走力についても、昨季までだったらテル(原輝綺)がよく『助かってるよ』と言ってくれたりして非常にうれしかったですし、もっと伸ばしていきたいと思いました。また、昨季に引き続き、もっとゴール前に入っていったり、ゴールやアシストなど目に見える結果を増やしていきたいですね」
副キャプテンを「断ろうと思った」宮本らしい理由
今季、宮本はキャリアの中で初めて副キャプテンに選出された。しかし、秋葉忠宏監督に打診された当初は「断ろうと思った」のだという。ただ、それはポジティブな理由からだった。
「秋葉監督が『考えていいよ』と言ってくれたので、だったら断ろうかなと。理由としては、キャプテン、副キャプテンになろうがならなかろうが、自分は変わらないと思ったから。どの立場でもこれまでどおり100パーセントでやるだけだから、だったら俺じゃなくても……って。決して『やりたくない』とかネガティブな理由ではなく、どんな時も自分は変わらないというポジティブな理由からです。
(矢島)慎也くんとも、やっぱり一人ひとりが自分の考えていることをチームのためにやるのがいいよねっていう話もしました。でも監督から、年上の選手たちの意見を聞いた中で名前が挙がったと言われて、それでは推薦してくれた人たちの気持ちに対して断るのは申し訳ないと思い、引き受けることにしました」
これまで何人ものキャプテン、副キャプテンの背中を見てきた宮本は、どんなリーダーシップを発揮していこうと考えているのか。
「実際に副キャプテンに就任してまだ数日ですけど、感じているのは、練習であったり、エスパルスの選手としての立ち居振る舞いの中で、より自分にベクトルを向けていく必要があるということ。自分が発信した内容について、まずは自分自身が本当にできているのか、とか。ただ、自分が思うチームのためにやれること、クラブのためにやれることを考えて行動に移していけたらというスタンスは根本的には変わっていないと思います。
あとはシーズンが始まって、もし航也が何か困っていることがあればサポートしていきたい。航也も航也でクラブのためにやってくれる選手なので、特に心配はしていないですけどね」
チャレンジすることを恐れずに
新シーズンを迎えるにあたって、クラブは「J1で10位以内をできるだけ早く確定させること」という目標を提示した。
「地に足をつけるという表現が正しいか分からないですけど、非常に良い目標だと思いました。もちろんタイトルを獲ることやトップ3に入ることも大事ですけど、まずは3年ぶりにJ1に帰ってきた自分たちに何ができるのか。この2年間でやってきたことが間違っていなかったということを示すシーズンでもあると思うので。最初の目標は10位以内であっても、シーズン途中でよりもっと上の目標に変えていくこともできますし、まず目指すところがはっきりしているのは良いことだなと。
厳しいキャンプでのトレーニングを終えて、みんなで乗り越えた、やりきったことに関しては非常に自信を持って臨めますし、キャンプを経て一体感やチーム力は増したと感じています。開幕戦からしっかりエスパルスらしさを出して、良いスタートをきれるようにしていきたいです」
個人としても3年ぶりのJ1は「楽しみな気持ちが大きい」と宮本は言う。
「今季も超攻撃的・超アグレッシブなサッカーはチームとして継続していくので、その中で自分はボールに関わり続けたり、惜しむことなく走ったり、まずは自分の良さを出すこと。その中で出た課題や足りない部分は都度修正していきながら、チャレンジすることを恐れずにやっていけたらと思います」
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昨年末、宮本、北川、西澤の同期3人で焼肉座談会を収録した中で、宮本がふと呟いた言葉がある。
「ユース時代の得点感覚を取り戻したいんだよね」
北川の言葉を借りれば、当時の宮本の特徴は今も変わらずに彼のプレーの中にある。背番号がユース時代と同じ“6番”に戻った今季、攻撃面での彼の持ち味がより輝きを放つシーズンになるかもしれない。
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