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【クローズアップ新加入】小竹知恩「陸上競技で培った走力が強み。西原源樹とのライバル関係も刺激に」

新加入選手をクローズアップしたロングインタビュー。第7弾はエスパルスユースから昇格した小竹知恩。ナイジェリア人の父と日本人の母から授かった身体能力を武器とするアタッカーだ。高校2年時のルヴァンカップでトップチームデビューを果たしているが、プロ入り後はここまで出場機会に恵まれず、悔しさをピッチで爆発させる時を虎視眈々と狙っている。


3月23日公開/取材・文=平柳麻衣


サッカーをやってきた中で初めて悔し涙が出た

――今日、小竹選手の取材があることを小塚和季選手にちらっとお話ししたところ、「アイツは今、いろいろ大変だろうから優しくしてあげて」と言われました。小竹選手自身は今、どんな時期だと感じながら過ごしていますか。

「和季くんはいろいろ気遣ってくれますし、優しい先輩ですね。(蓮川)壮大くんも去年から度々話しかけてくれていましたし、(北爪)健吾くんや(弓場)将輝くんなんかもよく声を掛けてくれるし、良い先輩方に恵まれたなと思います。俺はもともとそんなに思い悩むタイプではないんですけど、実はこの前、サッカーをやってきた中で初めて悔し涙が出てしまったということがあって……。それはガンバ大阪戦のメンバー発表の時で、(嶋本)悠大が先発組に入って、(西原)源樹もサブメンバーに入って、自分の名前が呼ばれなかったという現実がすごく悔しくて。その時も和季くんや(宇野)禅斗くんとかが声を掛けてくれたんですけど、最近の中では一番悔しい出来事でした」


――それだけ自分としては良い感触をつかめていたのですか。

「開幕前からコンディションは良くて、練習試合でも良いアピールができたという手応えがありましたし、周りの先輩方も『メンバー入りあるぞ』と言ってくれていた中で、実際にはここまで試合に絡むことができていません。それはもちろん自分に足りない部分がまだまだあるということだと思っていますけど、やっぱり同期の悠大や源樹が活躍している姿を見ると、自分はピッチに立つことすらできないというのは虚しさを感じてしまいます」


――そんな時、先輩方はどんな声を掛けてくれますか。

「先輩たちからは『おまえはすごく良いものを持ってるから、それを出し続けるしかないよ』と常に言われています。『それをやらなくなったら知恩じゃないから、どんどん練習から見せていけ。そうすれば絶対チャンスは来るから』と。とくに将輝くんやハネくん(羽田健人)なんかは、移籍してきて試合に出られないという難しさがある中でも、練習から常に前向きなプレーをピッチで見せてくれるので、それを見ていたらやっぱり自分も自然と身体が動くし、マイナスの方向に向かったって何も意味がない、自分も頑張ろうという気持ちになれます」


――開幕前からの調子は今も維持できていますか。

「攻撃面では自分の特徴を出せているかなと感じています。例えば紅白戦などで良いアピールができたなと手応えを感じられた時、紅白戦をやる日の練習は大体非公開なので、『うわぁ、せっかく今日調子良かったのに、サポーターの方々に観てもらえなかった』とすごく残念に思います。やっぱり多くの人に自分のプレーを観てもらうためには、試合に出るしかない。そのためには守備で足りない部分を克服して、監督に『使いたい』と思ってもらうしかないと思いながら、練習は前向きに取り組めています」


――守備面の何が一番難しいと感じますか。

「強度の部分ですね。90分間をとおして常に高い強度でプレーし続けること。あとは奪い切る能力であったり、1対1の局面での勝負がJ1のレベルだと多いですし、自分が剥がされてしまったらチーム全体にも影響してしまうので、そこが自分には足りないと感じています。ポジショニングも最初の頃は全然ダメだったんですけど、練習の中で(吉田)豊くんとかがよく声を掛けてくれるおかげで、少しずつ良くなってきているかなと思います」


――守備面は西原選手も課題にしている部分だと思いますが、2人でサッカーの話をすることはありますか。

「源樹が試合から帰ってきた時、『ここが良かったね』といったプラスの声掛けは素直にするんですけど、課題の部分に関してはあまりお互い言い合わないかもしれないです」


――西原選手との関係性はプロになってから何か変化はありますか。

「いや、ユースの頃と変わらないですね。もちろん源樹が試合に出ているのを観て、『俺だって源樹以上のプレーができるし!』という気持ちは、本人には言わないですけど心の中にはあります。その悔しさがなければ、プロサッカー選手としてやっていけないと思いますから。ピッチ外では仲良く、ピッチに立ったらお互いに遠慮なく、ですね」


――ユースの頃から変わらない、良い関係ですね。

「はい。ユースの頃からずっとですけど、源樹が点を取ったり活躍することで一番悔しいと感じるのは俺だと思っているんですよ。でも昨季はユースの試合で、俺が左サイドで出ることによって、源樹が右サイドで起用されるというパターンもあり、その時は源樹が『本当は左をやりたかった』と悔しそうに言っていたのを覚えています。今季はここまでのリーグ戦で源樹だけが試合に絡んでいますけど、自分がもっと試合に絡めるようになったらまたお互いに成長するきっかけが生まれていくと思うので、これからも高め合える存在であるために自分がもっと頑張らないといけないなと思います」


みんなと一緒に喜ぶ瞬間のためにやっている

――小さい頃から身体能力が高かったのではないかと思いますが、サッカー以外に何かスポーツ経験はありますか。

「最初に始めたのが水泳で、それからサッカー、陸上、バスケをやりました。一番成績が良かったのは陸上で、駅伝の大会に出たり、小学5、6年生の時には短距離で県で一人しか行けない全国大会に出場することができ、サッカー選手になる前に日産スタジアムで走りました。陸上競技って一番速い人が勝つという、分かりやすいスポーツじゃないですか。中学に上がるタイミングで陸上とサッカーのどちらをやるか選ばなければいけなくなった時、自分に向いているのは陸上なのかなと思いました。


全国大会に出ただけでなく、お兄ちゃんも陸上で成績を残していた影響から自分も中学から声が掛かったりしていて、成績で見ればどう考えても陸上一択。サッカーでは市のトレセンのCチームに入るかどうかぐらいの実力しかありませんでした。でも、親やジュニアの頃から所属していたサッカーチームの監督に、『サッカーをやっている時のほうが楽しそうだよね』と言われたんです。陸上の全国大会に出た帰りにご褒美として買ってもらったのもサッカーのスパイクで、やっぱり自分が好きなのはサッカーなのかなと思い、ギリギリまで陸上と悩んだ結果、サッカーの道を選びました」


――サッカーを選んで以降、「やっぱり陸上にすれば良かった」と後悔したことはなかったですか。

「それは一度もないですね。陸上は今でも好きだから大会があればテレビやYouTubeで観るし、同級生の結果とかも気にしたりします。でも、だからと言って自分も陸上をやっていれば……とは思わないです」


――サッカーと陸上では、チームスポーツと個人スポーツという大きな差があります。

「今思うと自分がサッカーを選んだ決め手として、陸上は自分が一番になっても喜ぶのは自分だけ。でも、サッカーは点を取ったり活躍すれば、自分だけでなくチームメイトみんなも喜んでくれる。それがサッカーの魅力だし、みんなと一緒に喜ぶ瞬間のためにやっているのかなと思います」


自分のプレーでスタンドを沸かせたい

――今年の年初にベルギー2部のパトロ・アイスデン・マースメヘレンへ練習参加に行きましたね。そこでかなり走らされたと聞きました。

「フィジカルをメインとしたクラブと聞いて、走りなら自分も得意なほうだからと自信を持って行ったんですけど、打ちのめされました。毎日が衝撃でしたけど、一番驚いたのは初日。まずは四角に置かれたコーンの周りをひたすら走って、クタクタになった状態で今度はフルコートで6対6。レストの間もジョギングで動かなければいけないので、水を飲む暇もない。カラッカラの状態で、今度はコートの端から端までを走り続ける60分間走があって、全身、身体の隅から隅まで筋肉痛になりました。これら全部合わせて1日のメニューで、翌日以降もこんな厳しい走りが続いて……。練習参加した中で試合にも出たんですけど、日本と比べて攻撃も守備もボールに対する執着がすごく強かったです。大変な思いはしましたけど、自分もいつか海外でプレーしたいという目標がある中で、ヨーロッパのサッカーに触れられたのは良い経験になりました」


――日本に戻ってきてからのYo-Yoテストではチーム内でトップの成績を残しました。

「向こうであれだけ走ったおかげで、身体はめちゃくちゃ動きましたね」


――ユースからエスパルスアカデミー育ちですが、エスパルスに来て良かったと感じる時はありますか。

「エスパルスの良さは、やっぱり街全体がエスパルスを応援してくれていることだと思います。ファン・サポーターの熱量がすごいですし、街のどこを見てもオレンジばかり。それが静岡に来て最初に驚いたことであり、今でも鮮明に覚えています。トップチームに昇格してからは、おかげさまで自分のことを覚えてくれているサポーターの方も増えてきて、街を歩いているだけで声を掛けてもらうこともあります。そういう時に、やっぱりすごく愛されてるクラブなんだなと感じますし、エスパルスに来て良かったなと思います」


――ユース時代に2種登録選手としてトップチームデビュー済みとはいえ、早くサポーターの皆さんに試合でプレーする姿を見せたいですね。

「そうですね。自分の特徴は分かりやすいですし、それを早くピッチで表現したいという気持ちは強いです。今までトップで出た試合は3試合ともアウェイだったので、まだアイスタでトップの試合には出られていません。アイスタはピッチとスタンドが近いので楽しみですし、自分のプレーでスタンドを沸かせたいです」


――どんな選手を目指していますか。

「やっぱり試合に出てこそプロサッカー選手だと思うので、自分の特徴を出して、目に見える結果をどんどん残していきたいと思います。また、サッカーをやっている以上、代表は目指して当然の場所だと思っています。今は悠大と源樹がアンダーの代表に選ばれていますが、それもやっぱり試合に出ていることが一番のアピールになっていると思うので、自分も早く試合に出て、チャンスを得られるように頑張っていきます」


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プレースタイルや風貌から、かつてエスパルスや日本代表で活躍した三都主アレサンドロを彷彿とさせると言われることが増えてきたのは、小竹自身も認識している。


「周りに言われるようになってからプレーなどを調べてみたんですけど、特徴は近いのかなと思いました。今の髪型は、似せに行ったわけではないですけど(笑)、ただ自分がやりたい髪型にしてみたら、思っていた以上に似ていましたね。あんなふうにカッコよく活躍できるようになりたいです」


小竹が飛躍した時、エスパルスの歴史にまた新たな1ページが刻まれる。


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