新加入選手をクローズアップしたロングインタビュー。今回は、5月末にスロバキアのFC DAC 1904 ドゥナイスカー・ストレダから完全移籍で加入したマテウス ブルネッティ。センターバックとサイドバックをこなすブラジル人レフティは、チーム合流直後の天皇杯2回戦・松本山雅FC戦で先発出場し、その後も試合出場を重ねている。彼のプレーに表れるクレバーさのルーツとは?
8月4日公開/取材・文=平柳麻衣
フットサルとサッカーの両立がプレースタイルに影響
――まずはサッカーを始めたきっかけや、幼少期に憧れた選手を教えてください。
「私がサッカーを始めたきっかけは、8歳上の兄の影響です。彼は当時すでにサッカーをやっていて、私が6~7歳の時に初めてサッカー教室に連れて行ってくれました。彼は私にもこの世界に入ってもらいたいと思っていたので、その影響でサッカーを始めました。子どもの頃は、将来どのポジションでプレーするかは分からなかったのですが、その当時はカカをとても尊敬していました」
――生まれはブラジルですが、イタリア国籍も持っているそうですね。
「はい。私はイタリア国籍も持っていますが、両親ともイタリア人ではありません。父方の祖父がイタリア人で、昔はイタリアにも親戚がいました。でも、今は特に親しくしているイタリアの親戚はいません。自分はブラジルで生まれ育って、ほとんどの人生をブラジルで過ごしてきたので、イタリア代表よりもブラジル代表チームにすごくリスペクトの気持ちを持っています」
――現在はセンターバックやサイドバックを本職としていますが、現在のポジションになるまでの経緯は?
「8歳の頃は左サイドのMFとしてプレーしていました。その後、サンパウロのユースチームの最初のトライアウトを受けることができたのですが、その時から左サイドバックとして参加することになったんです。当時はまだそのポジションには慣れてなかったですが、その後センターバックでもプレーするようになって、ポジションの幅が広がったのがすごく良かったと思っています。今振り返ってみると、そういった経験が自分にとってサッカー選手として成長するきっかけになったと感じています」
――子どもの頃の経験の中で、現在のプレースタイルにつながっている出来事はありますか。
「これまで訪れたすべての場所で、人生に役立つことを学んできたと実感しています。とくに、15歳までフットサルを続けていた経験は、私のプレースタイル形成に大きく影響を与えました。その当時はフットサルとサッカーの両方をプレーしていました」
初めてのJリーグで、すべてが新しくて刺激的
――6月11日の天皇杯・松本山雅FC戦でエスパルスデビューを果たし、6月15日のG大阪戦以降はJリーグでも出場を重ねています。短期間でチームにフィットするために心がけたことはありますか。
「外国籍選手たちであったり、いろいろな選手が日本でのやり方を共有してくれるので、できるだけ早くそれを汲み取ることは意識してきました。通訳も含めスタッフもいろいろな情報をくれますし、エスパルスのやり方に自分らしいアクセントをつけられるように、といったアドバイスをもらいました。天皇杯で初出場して、その後のリーグ戦ではスピードや強度の部分の感覚に違いを感じましたが、その中でも自分のサッカーを見せることができてきているのかなと思っています」
――日本のプレースピードや強度は、ヨーロッパやブラジルのリーグと比べてどのような違いを感じますか。
「言葉にするなら何と言いますか……ヨーロッパでは部分部分での強度が高く感じられますが、継続性の面やキレ、鋭さのところが日本は違うのかなと感じています。どちらのほうが上、というわけではなくて、それぞれの特色と言えると思います」
――日本に来て、自分の強みを発揮できていると感じているのはどのような部分ですか。
「まだ適応している過程だと思っています。初めてのJリーグで、すべてが新しくて刺激的であり、もっと成長していく必要があると感じています。まだまだ日本のリーグの試合のペースに慣れていくことが大事だと思いますし、日本人選手のスピードやテンポについていく必要があります。試合は常に激しく展開するので、そのリズムにうまく馴染んでいくことも課題です。そういった中で自分の強みをもっと出せるのはビルドアップの部分かなと思っていて、そこはまだまだ伸ばしていけると感じています」
――プレー中に自分が一番重点を置いていることは何ですか
「まずは常に最善を尽くすことを一番大事にしています。そのうえで、自分の持ち味をしっかり出しながら、チームメイトを一番いい形でサポートして、チームに貢献できるよう心がけています。試合を重ねるごとに少しずつ慣れてきていますが、とくに自分の中で転機になったのは名古屋戦ですね。あの試合で、自分らしさを一番出せた気がします」
――チームとして、ここまでの試合では流れの中からの得点が少ないという課題があります。その課題改善のため、ブルネッティ選手はどのように貢献していきたいと考えていますか。
「システムにもよりますが、とくに3バックでやっている時のサイドのセンターバックは、攻撃に関わるプレーをするようにという話を監督がしています。そのほうが私自身もやりやすいので、抵抗なく攻撃参加できますし、自分の動きが上手くチームにハマるようにやっていきたいです。それが選手としても自信になりますし、チームへの貢献にもなると思っています」
クラブの歴史に自分の名前を刻めたら、本当に最高
――秋葉忠宏監督が志向するサッカーは、加入前と実際にプレーした後で印象に違いはありますか。
「監督によってそれぞれスタイルややり方に個性があると思いますが、秋葉監督のサッカーにはとくに戸惑うことはなかったです。実際にプレーしてみて感じたのは、選手にしっかり信頼を寄せてくれて、的確な指示も出してくれるので、ピッチ上で安心してプレーできるということですね」
――秋葉サッカーとの出会いは自身にどんな学びや影響をもたらしてくれていますか。
「ここに来てからの約2カ月間で、秋葉監督やチームメイトから本当にいろいろ学ばせてもらっています。とくに印象に残っているのは、常に前へ、そしてゴールを狙う姿勢と、攻撃の場面で僕たちに自由を与えてくれるところです。まだまだ学ぶことはたくさんありますが、すごくポジティブな影響を受けています」
――Jリーグにおいて、秋葉監督の超攻撃的・超アグレッシブなスタイルにどのような可能性を感じますか。
「私たちのプレースタイルはすごく良いと思っています。常に前を目指して、鋭くゴールを狙う姿勢を持っているのが特徴です。この先、時間とともにチームの結束力が高まって、もっとお互いの連携が深まってくれば、タイトルを狙える力もついてくると信じています」
――エスパルスというクラブや静岡の街、ファン・サポーターの印象を聞かせてください。
「来日前にブラジル人選手たちと話していたのですが、みんながエスパルスのことをすごく良く言っていたんです。実際に来てみて、初日からクラブの雰囲気やスタッフの方々の姿勢、そしてクラブが本当に多くの人に愛されていることに感動しました。とくにファン・サポーターの皆さんは本当に素晴らしくて、毎試合すごく良い雰囲気をつくってくれ、いつも全力で応援してくれます。それは選手にとって大きな力になりますし、正直ここまでとは思っていなかったので驚きました。静岡の街についてもすごく気に入っています。まだ全部は分かってないですが、静かで美しくて、とても住みやすいところだなと感じています」
――サッカー選手としての今後の大きな目標は何ですか。
「今の自分の目標は、とにかく早く日本のサッカーにしっかり適応して、もっとチームメイトをサポートできるようになることです。そして、もし清水でタイトルを獲ることができて、クラブの歴史に自分の名前を刻めたら、本当に最高だなと思っています。今はとにかく、ここでのプレーに集中したいと思っていて、正直、今のところまたどこかのリーグに移るつもりはありません。できるだけ長くここに残りたいという気持ちでいます」
――ブルネッティ選手にとって、サッカーをする喜びを感じるのはどんな時ですか。
「僕は毎日サッカーをしているだけで幸せを感じています。練習でも試合でも、サッカーができること、そしてそれを仕事にできていることに本当に感謝しています。やっぱり勝った時の喜びは格別で、その瞬間が一番うれしいですね」
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穏やかで親しみやすいキャラクターのブルネッティ。加入直後からチームに溶け込むと、3バックと4バックの併用にも難なく適応し、守備面はもちろんのこと、ドリブルでの落ち着いた持ち運びやクロス攻撃など攻撃面でも存在感を光らせている。
機を逃さない冷静さと精度の高いクロスを生かし、前線へのホットライン開通となれば、エスパルスの大きな武器の一つになるだろう。
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