コメントは以下の通りです。
【2014年度決算報告・2015年度事業計画】
<左伴社長 コメント(抜粋)>
(第21期)FY2015事業計画重点項目としては10項目(事業計画要約別紙)を上げております。
会社全体としては、社長就任時にもお話しました通り、目で見る管理や日常管理の徹底をしていきます。これは個人別にセールス日報を付けながら売上に繋がる全ての項目(スポンサー、チケット、グッズ)について個人の売上をガラス張りにして日常的に管理をしていき、社員全員で進捗状況を見ていく会社にしていこうということです。
また、地元の事業法人などとのコラボレーションにより積極的に地域共存に向けた法人に変えていきたいと思っております。株主様やスポンサー様の主たる事業の商材をお借りし、エスパルスのブランドを付けて我々の営業力やブランド力を通した商売をさせていただくことにより、コラボレーション先法人様の売上、事業発展に繋がる事業を我々も一緒にさせていただき、そのロイヤリティを少しいただくということです。スポンサーというよりもいわゆるパートナーとしての関係を作っていきたいと考えております。最終的にはスポーツだけでなく、色々な生活商材で地域の皆さまにエスパルスを浸透させていければと思います。
トップチームについては事業計画にある通りのサッカーを目指します。強化費としては過去10期の中で4番目に多い強化費を計画しており、昨シーズンより1億円以上多い予算です。予算やチームパフォーマンスの進捗度合については5試合毎にゲームプラン通りのサッカーが出来ているのか、出来ていないのかを確認しています。試合中には何十項目かのデータ(数値)をとっており、そのデータがどの値を示して18チーム中どの位に位置しているのかということも押さえております。現在、G大阪戦(JL5)までの5試合のデータがありますが、それが示している値と皆さまが試合を観て感じられている内容はおおよそ一致していると思います。それについての分析内容や今後の戦い方については相手のあるスポーツですので控えますが、課題がはっきししているか、それは組織的なものなのか、個人の問題なのかは既にはっきりしております。また、チーム全体のメンタリティについては、昨年、最終戦までの残留争いを経験しております。試合終了が近づく後半、昨年のフラッシュバックが出ないチームかというと、それは余程強靭な精神力を持ったチームでない限り少なからず出てしまいます。そこをどう凌駕して戦っていくのか、その為に前半どのような戦い方をするのか、そのことを頭の中でしっかり整理しているかということの方が6連敗、7連敗という結果のみに拘ることよりも当然のことながら、大事なことだと考えております。シーズン当初よりこれまで一貫して大事にしていることは、誰が悪かったかではなく、何が出来ていて何が出来ていないのか、それをどう対策するのかを頭の中で整理し、冷静に分析し、それを選手たちに浸透させて熱い気迫をもって、ファイティングポーズをとらせながら戦ってもらうことを毎試合継続していけているかということが大事だと思っております。大榎監督や本田キャプテンとは、これまでそのような話を何度となくして振り返りを行なってきました。
勝利や成功というのはサッカーだけでなく、組織や会社を含めチームで仕事をする上で見ていかなければいけない成功ベクトルというものがあります。そのベクトルの方向は心・技・体の3軸で決まります。気迫や闘争心を持ってというのは心の部分です。技と体というのはブレない方針で仕事をすれば、サッカーに言い換えると「前からプレスをかけて奪ったらゴールに向かう」というサッカーをブレずに追求していけば(ポゼッションとか長いボールを入れるとかの方法論ではなくて)、それに基づいた技術と体は比較的ロジカルに積み上がっていきます。常勝クラブの場合、心技体が同時に伸長して成功ベクトルはリニアに上がっていきます。しかし、過去に失敗したり惨憺たる成績でシーズンを終えてしまったチームは、トラウマやフラッシュバックが必ず出ます。それがベクトルをリニアに上げない原因となります。ただ技術と体は整っていますので、ここに何を入れるかによって劇的に上がっていきます。私はそれが外部からの優秀な新しい血と、内部で昨年を知っていて立ち上がる人たちが何人出てくるかにかかっていると思っております。何故ならば技術と体のレベル、やろうとしているサッカーが当初から皆の中で共有されているからです。今、やろうとしていることに対して出来たこと、出来なかったことは何か、どうすればそれが出来るのかを粛々と受け止めながら、仕事に専念することが出来るような環境をトップチームには作っているところです。
分析していきながらアウトプットを出す上で重要なターニングポントは10試合、いわゆるシーズンの1/3というところが、勝ち負けというよりもプロセスの良否を見極めていくための必要な期間だと思っております。貴重なお金を払ってスタジアムにご来場いただいている方々には悔しい思いを何度もさせてしまい、大変申し訳ないと思っておりますが、過去に一度倒れかけたチームであり、心の成長や回復は試合という真剣勝負の場を通じてこそ成就出来ると思っております。「迷い学習した時間の長さの分だけ大成はなる」と信じていただき、その時間的猶予を与えていただくこともクラブへの愛情の一つだとご理解いただき今しばらくの間、見守っていただきますよう宜しくお願い申し上げます。
育成事業に関しては、先日のJリーグ実行委員会でハリルホジッチさん(日本代表監督)がスピーチしておりました。その中で、「もっと前に行く意識を持て。FWはもっと裏へ抜ける勇気を持て。思い切ってラインを上げながら守備をするサッカーをしろ。チームとして115km以上走れる力、いわゆるハイプレス、ショートカウンターのサッカーが世界の中では一番勝率が高い」と言っておりました。私自身が海外在住時に観てきたサッカーもお客さんが中腰になりながら一番試合に没頭できるサッカーはそれでした。同じ考え方を持った代表監督に大変うれしく思いましたが、最後に一つ彼が付け加えたことがあります。「このサッカーをトップチームで始めても遅すぎる。若い年代から擦り込こんでいかなければ日本のサッカーは変わっていかない」と。今、エスパルスは育成年代にとても力を入れております。それは勝敗もさることながら、「逞しい個人」を育成していくということです。球際に強く、1対1で絶対負けない気持ち、前への意識をこの年代から練習や試合を通じて植え付け、育てていくということです。この方針はU-12というサッカー脳が出来上がる最初の年代カテゴリーを今年から立ち上げましたが、そこからトップまで1本の線で繋いでいく、いわゆるエスパルスのDNAにしていく大変重要な方針であり、それを担っている大事な事業だと思っております。
スタジアム興行については、お蔭さまで開幕から2戦連続でチケットを完売させていただきました。開幕の高揚感、2戦目は松本山雅さんから多くの方々にお越しいただいたことなど様々な要素が重なって、前売りだけで計画を達成させていただきました。しかし、周りの人たちからはチームの調子が悪くなったらお客さまは減る、清水はそういう土地だとよく言われます。確かにそうかもしれませんが、チームが強い時にお客さんが来ることはチームのおかげであり、営業力ではないと思っております。チームがなかなか成果を出せない時だからこそスタッフ一人ひとりがお客様にお会いしてチームの状況を話しながら、一人でも多くのお客様に足を運んでいただくお願いができて、来場者を集められることが本当の営業力のあるクラブだと思っております。人は誰しもおいしいイチゴを食べたいものです。しかしイチゴが成育していく姿も見届けていただけないでしょうかと。これはスポンサー営業と並んで大変重要な事業だと捉え、今年は6億1,200万円という昨年よりも大幅にストレッチした予算を組んでおります。
物販収入は、3億5,000万円(過去4位)と昨年から1億円以上の増額の予算を計画しています。
営業を強化していくひとつのバロメータとして対面営業の強化を挙げております。スタジアムの店舗や各事業所の店舗の「待ち売り」ではなくて、「行き売り」のできる商材を多数開発して営業担当に売って来てもらいます。そうした個別営業の売上として3億5,000万円の内、5,000万円を見込んでおります。昨年までなかった新規の取り組みとしては非常に高い数字です。これは特に法人向けのノベルティとかタオルやウチワ、事務用品などの小口商材で、町の商店街の方々や自治会の方々が「大きなスポンサーにはなれないが、少しはチームの強化に繋がるなら買うよ」と言ってもらえる物を作ります。仕事で使う物や生活で使う物を生活商材の一部として、お買い求めいただける物を開発し、販売していきたいと思います。
サッカー普及事業はスクール生4,000人を目指すという一大目標を立てており、これは大変意味のある目標です。エスパルスのホームタウンの人口は70万人です。スクール生は今現在3,800人ちょっとで、4,000人まであと少しです。昨年の今頃は3,800人を割っていましたので、今年の秋以降に4,000人超えも見えてきました。私が過去在籍していた他のクラブでは人口が400万人いて、スクール生が4,000人少しでした。エスパルスは人口比率から見ると日本一の密度を誇るスクール規模です。そして、お子さまや親御さんがエスパルスアイテムをご着用いただくことによりブランドも浸透していきます。今年中に「日本一」と呼べるスクールがこの地域でトップチームに先んじて達成出来るかもしれません。そこは追及していきたいですし、質も落とさないでやっていきたいと思います。
また、サッカーの主たる事業以外ではスクール事業の他、J-STEP・清水テルサ(運営委託)、フットサルといった事業があります。全部で5億円強の売り上げがあり、大変大きな数字です。
しかし、それよりももっと意味のある数字は人数です。昨年スタジアムに26万の方々にご来場いただきました。一方でスクールやフットサル、J-STEPなどの事業でご利用された方々が昨年28万人もおりました。スタジアムにご来場いただいた人数より多い方々がエスパルスが関係するインフラをご利用され、私共と触れ合っていただいております。70万人の人口の中、スタジアムへのご来場と施設利用の2つを足して延べ54万人の方々が何らかの形でエスパルスと関わっております。これだけ地域との関わり合いを密度濃く持っているクラブはなく、日本一の市民クラブだと思っております。我々の業態はとかくトップチームの成績のみが語られがちですが、ここは大事に訴求していきたいと思います。
組織改正については、営業強化をしていく上でチケット、スポンサー、物販の収益事業をまとめた大営業本部を作ったことは先般リリースでお知らせいたしました。また外回りの営業の後方支援やスポンサー様や株主様とのコラボレーション事業を企画立案する戦略的タスクフォース部門として経営戦略室を新たに設置いたしました。大営業本部は6名から14名に増員し、個人別に月々の訪問件数やスポンサー、チケット、グッズの売上を表にまとめ、毎週の営業会議の中で進捗報告しております。また他の部署についても部門ごとに実績を表にまとめて、全社営業を意識させております。職員は良く理解して取り組んでくれており、少しずつ変わってきていると感じております。これをこのまま1年間ファイティングポーズを取り続けていけば、この高い予算のハードルは何とか達成出来るではないかと思っております。
リーグ戦平均入場者数の計画は16,000人で組みました。昨年度が14,210人ですから約1,800人近くを上乗せいたしました。17試合のリーグ戦延べ入場者数は272,000人、昨年は241,577人ですから約3万人の増加を計画いたしました。
収支計画の考え方として、まずは今年のトップチーム強化をどうしていくかということを第一義に考え作っております。どのようなサッカーをするのか、そしてそれを実現するための資金準備、また、その評価のサイクルをしっかり廻していくということ。予算については他クラブと比較しながら客観的な分析をしていくと13億円弱という強化費が目安となりました。今回の予算計画についてはその強化費をベースにして作っております。したがって昨年度の5,800万円の経常利益から今年度は1億9,600万円の赤字予算となったこの差額全てを強化費の増額に充てたとご理解いただければと思います。
別の言い方をすれば、売上はチケット、スポンサー、物販にしてもかなりストレッチした計画を作り、そして移籍金収入や賞金を入れずに自分たちの努力だけで勝ち取れる数字を置いて、そこに強化費を入れるとこのような数字になるということです。もちろん赤字で良いのかという経営者としての意地もあります。従って、これをいかに少なくしていくかということを大営業本部が一年間フル稼働してやっていき、赤字幅を少なくしていきたいと考えています。
純資産については5億円近い純資産を担保しておりますので、この赤字分を吸収したとしても債務を超過することは全くありません。
今年はトップチームもさることながら、フロントも高いハードルに向かってチャレンジし、全社一丸となって熱を持ってやっていきます。もうエスパルスという船は港を出ました。次の港に着くまでは誰も降りることは出来ませんし、降ろすことも出来ません。
どうかエスパルスへの変わらぬご支援、ご声援を宜しくお願い申し上げます。