このたび、現役引退を発表された鄭大世選手(FC町田ゼルビア)よりエスパルスサポーターの皆様および関係者へメッセージをいただきましたので、ご紹介いたします。
『静岡駅前のホテルの一室で、スーツを着た僕の前で強化部が見守る中、サインをした。”2020年”まで契約という20年代の西暦が想像もできなかった。現在2022年、よわい38歳
キャリア終盤。苦しい時が圧倒的に多く、思い通りに行かないことばかり。嬉しさは今や半減。ダービーの最後のゴールで咆哮したシーンを見返しては、この時は鬼気迫ってたな〜と懐かしむ。周りは『出るだけじゃなく、ベテランとしてチームをまとめてほしい』と言う。でも『スタメンで出たい!まだやれる!』と思ってるここで日和ったらプロとして終わりだと、歯を食いしばってやってた。無情にも、自分と周りが思うパフォーマンスに違いができてきてるのは、薄々気づいてた。右肩下がりで、もう登ることはできない。それに気づいた今が、やめ時だと悟った。
エスパルスでの活躍があったからこそ、行き永らえた。あの大活躍で有頂天の後、出れなくなって、いくらもがいて、アピールしても変わることはなかった。その”挫折”が耳元で囁いてきた。『今までの活躍はお前の実力じゃないぞ』って。その時から、出会った全ての人への感謝の気持ちが溢れ出てきた。大学都リーグ3部の選手が、ワールドカップ、ブンデスリーガに、そしてこの歳までやれた。あの頃歯が立たなかったタメの選手は、もうとっくにいない。良き指導者に出会い、仲間、家族、最高のサポーターと出会った。自分の力なんてほんと些細なものだと、全身で感じてる。全ての縁が紡がれて、過ごせた最高のキャリア。
未熟さがなければ、もっと上にいけてたかも。でもエゴイストだからこそ、ここまでこれたかも。後悔なんて数えきれないし、人としての失敗も死ぬほどした。でも今思う。これが自分のベストだということ。貧乏学生だったあの頃とは違って、今は手元にサッカーがくれた多くのものがある。綺麗事に聞こえてたこのセリフも、成功と挫折を何度も繰り返した今、心の底から、胸を張って言える。
『みんなのおかげ』
こんな感情的で、超繊細で、自己中心的な僕を応援してくれた皆さん。ありがとうございました。
やりきって終われる僕は、幸せです』
【 出身地 】
愛知県
【生年月日】
1984年3月2日
【 選手歴 】
2006年 川崎フロンターレ
2010年 VfLボーフム(ドイツ)
2012年 FCケルン(ドイツ)
2013年 水原三星ブルーウイングス(韓国)
2015年 清水エスパルス
2020年 アルビレックス新潟
2021年 FC町田ゼルビア
【代表歴】
北朝鮮代表
【通算成績】
J1リーグ(181試合/65得点)、J2リーグ(130試合/46得点)、リーグカップ(33試合/8得点)、天皇杯(18試合/9得点)、ACL(30試合/8得点)
ブンデスリーガ(5試合/0得点)、ブンデスリーガ2部(44試合/14得点)、Kリーグ(72試合/23得点)※主要リーグ