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【インタビュー】西澤健太「もっと大きくなって帰ってきます」

「このエンブレムを背負うことに憧れて育ってきたし、後輩たちにもそう思ってもらわなきゃいけないと思っている」。エスパルスアカデミーから大学経由で初めてトップチーム加入を果たした選手として、2019年の加入からピッチ内外でチームに貢献してきた西澤健太選手。今季アウェイ藤枝戦でのゴールをはじめ、ここぞという時にチームを救う活躍を見せてくれたことも、多くの人の心に刻まれています。今回の完全移籍に懸ける想いをお聞きしたインタビューも、エスパルス愛に溢れていました。


取材日:12月29日/取材・文=平柳麻衣


――少し懐かしい話になりますが、大学を経てトップチームに加入した頃のことは覚えていますか。

「デビュー戦はルヴァンカップの(第3節)ガンバ大阪戦でしたね。『やってやろう』と意気込んで加入したものの、最初の頃はなかなか試合に出られず、打ちのめされました。でも、やり続けることの大切さなどを大学で学んできたからこそ、折れずにやり続けて、あのタイミング(監督交代)から試合に出られるようになって。在籍した6シーズンを振り返ると、上手くいっていない時間の方が印象として大きいですけど、できる自信はありました。それはずっと、今もそう。だからこそ出場機会をもらえたら『自分はできる』と思いながらプレーしているし、そこはプロ1年目の頃からブレずにできているかなと思います」


――自信があればあるほど、現実を受け入れるのが難しい時期もあったかと思いますが、それを表に出さないのが西澤選手の強さだと周りの選手からよく聞きました。

「やり続けられた要因の一つは、『やり続けていれば誰かが見てくれている』ということ。あとは、竹内(涼/現岡山)くんにずっと言われていたんですけど、『自分にコントロールできないものに対してパワーを使ったところで、それは自分に返ってこない。だったら自分にできることをやり続けた方がいい』と。それを実践している先輩方がたくさんいたので、もちろん苦しい時もありましたけど、『やっていることに間違いはない』『いつかは絶対、結果として表れる』と思いながら取り組むことができていました」


――エスパルスで試合に出ることの価値を西澤選手はどう感じてきましたか。

「“アカデミー出身で、大学を経由して戻ってきた初めての選手”というところは、自分が意識しなくても周りから言われるし、言われることによって自分の理想像というか、『こうあらなければいけない』と思い描くものはありました。今思えば、それを勝手に考えすぎてしまっていた部分もあったのかな、もっと自分のやりたいようにやっても良かったんじゃないのかな、と思ったりもしますけど、本当に毎日精いっぱいやってきたので、そこに後悔は全くありません。そうしたことで選手やスタッフ、クラブの方などたくさんの方々が認めてくださったし、温かい言葉もいただきましたから」


――西澤選手の存在は、アカデミーに在籍する選手たちにとっても良いお手本の一つだと思います。

「僕自身も実際そうだったんですけど、やっぱり『プロに上がれない』と通告されると、先が見えなくなってしまったり、将来が不安になったり、高校生の時期っていろいろ考えるんですよね。なので、『目指し続けていれば道が見えるんだよ』というところはずっと示し続けたいという思いがあるし、そこへの道を一つ作れたのは、僕にとって一番の財産かなと思っています」


「エスパルスに関わるみんなのことが大好き」

――アイスタという舞台でプレーすることについては、どう感じていましたか。

「正直に言うと、在籍期間の最初の方はスタンドからマイナスな言葉ばかりが聞こえてきていました。ただ、ゴンちゃん(権田修一)も言っていたけど、昨季や今季はそれが大きく減って、ポジティブな声が増えたこと。アイスタはスタンドとの距離が近く、応援がダイレクトに伝わりやすいというメリットがあるので、今の雰囲気はエスパルスというクラブにとってすごく大事なものだと思います。来季J1で戦う中では、どこかで我慢しなければならない時期が来るかもしれないけど、その時は今季のことを思い出してほしい。サポーターの皆さんにはどうしたら選手が気持ちよくプレーできるかを考えてもらって、選手たちは勝って皆さんを喜ばせるために全力を尽くす。そうやってお互いが寄り添いながら戦っていってほしいな、というのが僕の願いです」


――選手とサポーターが寄り添うために、クラブ愛をはっきりと口にする西澤選手は大きく貢献してきてくれましたね。

「これからは西原(源樹)や(小竹)知恩に、そういった部分も期待したいですね。まずは(宮本)航汰や(北川)航也のようにプロの世界でしっかりプレーして、今後、僕のように大卒で戻って来る選手もいるだろうから、その選手たちと一緒になってエスパルスを強くしていってほしい。エスパルスというクラブはそうでないといけないと思います」


――同期の宮本選手、北川選手に伝えたいことはありますか。

「2人とも自分のペースがあって、自分一人で歩いていける選手なので、J1でもエスパルスの中心となってプレーできるんだぞというところをきっと見せてくれると思うし、全く心配はないです。たとえ苦しい時が来ても、あいつらは大丈夫。僕らはまだまだ成長できる余地がある年齢だと思っているから、僕もチームは変わるけど、サッカー選手として活躍するシーズンにしたいです。


……まぁ、寂しいですけどね。正直、まだ移籍するという実感がないんです。もちろん自分で覚悟を持って決断したことだけど……ただ、ここにいた時間が長すぎて、ここじゃない場所での生活をまだ想像できていない。昨日の夜、山原(怜音)が家に来たんですけど、『俺もう無理っすわ』なんて言うから、『俺も無理』って、2人で寂しくなっちゃってね」


――エスパルスで特に印象深い思い出はありますか。

「一つに絞るのはなかなか難しいですね。チームの成績で言えば今季は良かったと言えるのかもしれないけど、正直、そこに自分が関われたという感覚があまりなくて。だから、まだJ2でやりきっていない感覚が自分の中にすごくあるし、このまま一緒にJ1に上がってもみんなと同じ熱量でできるか分からない、といったことも考えたりもしたのも、今回移籍を決めた理由の一つでもあります」


――自分のプレーヤーとしての伸びしろはどんなところに感じていますか。

「今年から左足のトレーニングを始めて、(アウェイ)群馬戦でも左足で今まで決めたことがないような弾道のシュートを決めたりとか、左サイドでの出場はあまりなかったですけど、左足でクロスを上げたり、パスを出したり、といった部分は今までと違う感覚でやれていたので、『俺まだまだ成長できるじゃん』と一年を通して実感できました。そこは自分に矢印を向けてチャレンジし続けたいと思っています」


――今後はどんなキャリアプランを思い描いていますか。

「どこまで上手く実現するか分からないですけど、引退前にエスパルスにまた戻ってきたいと思っています。サッカー選手としても人間としても経験値を増やして、ちゃんと必要とされる状態で戻ってきたい。そのために、このクラブにいるだけでは得られない経験を積みたいし、まずは鳥栖のために戦うこと、鳥栖の目標に向かってやることが大事になると思っています。鳥栖は今、いろいろなものを変えようとしているタイミングで、大変なことも多いだろうけど、チャレンジするという意味では絶好の場だと思うので、全力でぶつかっていきたいです。もし、エスパルスの外に出て通用しなければ、それはただ自分の実力不足だということ。今回の移籍はそこへのチャレンジでもあります」


――移籍発表のリリースでクラブに対して「大好きです」と明記していました。そこに込めた想いを聞かせてください。

「本当にエスパルスには感謝してるし、ずっと側にあり続けたクラブなので、その気持ちに全く嘘はないです。今でも大好きだし、たぶんこの先もずっと変わらない。エスパルスに関わるみんなのことが大好きなのでね。移籍しても僕がアカデミー出身であることは変わらないし、エスパルスでプレーしたという過去は消えないですから、隠す必要もないと思っています。昨日(高木)践に会って、『サッカーのことは全部健太くんから学びました』と言われた時は嬉しかったし、(成岡)輝瑠や(川本)梨誉もよくそう言ってくれたりして、自分が今までやってきたことに価値はあったのかなと思えました。静岡を離れたら、早川農園のイチゴをすぐ食べに行けないのがちょっと残念だけど、もっと大きくなって帰ってきます」


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